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2007 年2月20日

バトラーの出腹との戦い
ジョン・ディングウォール

スコットランド人のジェラード・バトラーは、フランク・ミラーのグラフィック・ノベルに基づく雄壮な映画『300』で驚嘆すべき体形になったが、主役を演 ずるには太り過ぎだと言われてから後のことだった。

『トゥーム・レイダー』と『オペラ座の怪人』のスターは、2500年前のテルモピュライの戦いで巨大なペルシャ軍に立向かったスパルタ人の300人の精鋭 部隊のリーダー、レオニダス王を演じている。

バトラーは主役に恥じないようにしようと固く決心し、映画会社の予定した訓練期間に来るように言われていた3ヶ月前にトレーニングを始めた。

[当時] 36歳のバトラーは認めている。「この映画に入った時、ぼくは本当に酷い体形だったんだ。イタリアから戻ったばかりで、以前会ったこともない3人の人にデ ブだと言われた。

「役を得たのは映画 [の制作] が始まったばかりの時で、この映画をぼくの人生で最高のものにしようと誓って、いささか無分別になったんだ。

「映画のための訓練は物凄かったけど、ぼくはもうそれ以前に3ヶ月トレーニングしていた。

「ぼくには自分のトレーナーがいて、週に6日、1日2時間ウエイトとカーディ オ [心臓の機能を高めるフィットネス] をやっていた。

「走ったりサーキット・トレーニングをしていたけど、それからそれをマーク・トワィトと始めたんだ。彼は登山家で、他の登山家やケージ・ファイターや秘密 工作なんかをやっている。あいつは実にとんでもないよ。

「ケトル・ベルとかメディシン・ボール、つり輪、壁にとりつけた巨大な伸び縮みするものなどの沢山の素朴な道具を使って沢山サーキット・トレーニングをし たんだ。走ってから止まって保たなくちゃならない。それと、スタントの連中とエアコンのない倉庫でもやったけど、中はオーヴンみたいだった。あれは本当に 汗をかいたね。ぼくは半裸で床はぼくたちの汗でぐっしょりだったよ。

「訓練に入る頃までには、かなりいい感じになっていたけど、訓練はもっとすごかった」

その結果は信じられないような腹筋の体で、バトラーが言うには、共演者や観客に彼が死へ向かって軍を率いて行くことができると信じさせるつもりなら必要な ものだった。

しかしジェラードが認めるように、体を整えるのにかかった労力は実際にその犠牲を払った。

彼は言う。「後でほとんど体中が腱炎になった。前腕には酷い怪我をして、ジムに戻るとまだ痛むんだ。

「回旋腱板 [三角筋の下にある筋肉で、肩の動きをコントロールする] を痛め、骨盤筋を伸ばしてしまった。それから、散々強打したし。ちゃんばらを沢山やると、いつだって頭に強打を喰らったり殴られたりするんだ」

古典を習った人なら、西洋文明の根源そのものが危機に瀕したということで歴史の時間にやったテルモピュライの戦いのことを思いだすだろう。

峠道に陣を張った、300人のスパルタ人による英雄的な最後の抵抗は、紀元前480年にクセルクセス王の侵略してくる8万の巨大なペルシャ軍に数で圧倒さ れていることがわかった。

長い3日間の間、スパルタ人たちは遂には裏をかかれ殺されるまでに、ペルシャ人たちに恐るべき損害を与えた。

だが、彼らの勇敢さと犠牲が全ギリシアをまとめ、民主主義の誕生へと道を開いた彼らの国からペルシャ人を追い出させた。

バトラーがレオニダスを演じる一方で、彼の妻で王妃のゴルゴ役のレナ・ヒーディのような売り出し中のスターや戦士セロンのドミニク・ウエストなどの英国人 俳優が『300』のキャストの一部として入っている。

ミラーのコミック・ブック同様に、30万ポンドの映画における激しい戦闘場面は、ブルースクリーンの前で全部撮影され、カラーではなくモノクロで撮られ た。CG特殊効果で恐るべき怪物、戦場での大虐殺、そしてとてつもない超人的な戦闘場面を描きだしている。

映画をみた批評家たちは、これまでに見た最も残虐な映画の1つだというが、ハリウッドは7年前にリドリー・スコットのオスカー受賞作『グラディエーター』 以来すたれているジャンルを『300』が復活させることを願っている。

ラッセル・クロウ主演のスコットのローマ叙事詩に続いて、ブラッド・ピットとオーランド・ブルーム主演の『トロイ』を批評家は酷評したが、コリン・ファレ ル主演の『アレクサンダー』も大当たりはとれなかった。

バトラーは、見た目だけで役に選ばれ、歴戦の強者を演じるよう言われた英米のひょろひょろした俳優たちと十把一絡げにはされるまいと決心していた。

彼は言う。「ぼくはすぐに取り憑かれたようになるんだ、特に主役を演じる役者だったらね。これまで沢山の役者が、重そうな甲冑を身に着けていながらか細い 腕をしてい るのを見てきた。

「誰とは言わないけど、その中には気取った上流の話し方をしている者もいたから、こう思ったね。『おまえは全くの無力で、しかも軍を指揮していて、騎士か 何かだってのか。それが「キング・アーサー」さ』

「ぼくは部下たちが目を向け、『そうとも、彼の後について行くぞ』と言うような者になりたかった。そして、観客は彼を見てこう思うんだ。『そう、彼らがど うして彼について戦いに行ったのかわかる』するとついには、ぼくがこう感じるんだよ。『もちろん、彼らはついてくるさ』ってね」

「また、それを彼らの目に見たかったんだ、彼らがぼくを尊敬しているって感じたかった。

「あの連中はスタントマンたちだ。ぼくらには驚くべき連中だった。だから、ぼくは実際に彼らの王のように演じることはぜったいにしなかった。ただ彼らの中 に入って行き、仲良くなって、一緒に出陣したんだ。

「それが、彼らが背後を守ってくれていると思うのに役に立つよ」

『300』は3月9日から公開。

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