DVD Review 第106号
2007年8月

ジェラード・バトラー
スパルタ人の王が、フランク・ミラーの「病んで歪んだ」心が
インスピレーションの元だといかにしてわかったかを説明

ジョセフ・マッケイブ

どのようにこのような映画での演技を発展させるのですか? 歴史的事実に基づいてい ますが、それはフランク・ミラーの等身大以上のグラフィック・ノベルというフィルターを通った事実ですが・・・。

「ぼくにとっては、それはいつだって内側から生じて来るんだ。人は物語を語るが、内側から生じてくる・・・。人はなにか肉体的な決定もしなくてはならない し、ぼくはそうすることが大好きだ。ぼくの考え方や個性の多くは訓練から生じてくる、特に内部から生じるたくさんの炎はね。文字通り必死でがんばり、ぶっ 倒れるまで訓練することで生まれてくるだろう。それは自分の中の獣(けだもの)を外に出す、特に度を越すとね。ぼくはやり過ぎているとわかっていたし、怪 我もしたしこう考えた。『この映画が終わったらこの身はどうなるのかわからない』って。でも同時に『構わないさ、これが「300」なんだ』とも思った。

「それから時々まるで死闘みたいに感じ、その瞬間何もかも投げ出すんだ。しかも訓練の度にそうして、それがぼくには1日6時間だった。それにつぎ込む献身 や犠牲、汗の量が増えるだけそのキャラクターに入り込むんだ。あの王となり、そこに立ち、ああいった決定を行ない、国民や部下、妻、子供たちをもつ権利、 そして基本的には部下たちを死へと率いていく権利を得たと感じ始める。

「人はたくさんの様々な側面からなっている。ぼくはいつもそのことを考えているから、多分自分のしたことの90パーセントは見落としているだろうね。実 際、ぼくはそれで自分を追い込んでいるよ!

グラフィック・ノベルのレオニダス王の描写からどれくらい得ましたか?

「本からはたっぷり得たよ。フランクはあんなすごい世界を作り出したんだ。絵の中のキャラクターのスタイルを・・・理解した。ぼくは神髄を抜き出し、物語 の感じを直感するのが得意だと思う。おまけに、それにとても注意を払った。『我々がいるのはどんな世界だろう? どんな風に感じるだろう? 彼らの見た目 はどんなだろう? どんな風に立つのだろう?』実際、ぼくはしばしば彼らの肉体性を、絵からだけでも調べた。

「レオニダス王は陰気で思い悩む男らしさの権化だ」
ジェラード・バトラー


「王が描写され、描かれ、表現されている方法は、それまで本当にお目にかかったこともないようなろくでなしだという印象を与える。彼には柔和さはあまりな い。ぼくにとっては、彼は陰気で思い悩む男らしさの権化だ。時々、それを演じろと言われると『ちょっと待てよ。これはなかなか大変だぞ、本当にうまくやれ るかな?』って思うんだよ。もちろん、ミラー氏のような病んでひねくれて超現実的な精神を相手にしているんだってことはわかっている、おまけに天才だし ね。だから、インスピレーションなんだよ。ぼくにとっては、しょっちゅう『フランクは何を考えているんだ?』ってことだった。実際ぼくはフランクがぼくた ちの『300』をどう思うかだけでなく、彼の王についてもどう思っているかを知って、興奮したよ」

他の大作映画での経験が、この映画の驚くほど広範なグリーンスクリーンでの演技に下 準備となりましたか?

「それには2つの見方がある。イエスとノーだ。イエス、というのは、ぼくは本当に役者として何でもする覚悟があると感じているからね。ぼくが演じた役はと てつもなく幅広いから、とても柔軟性をもっているということに集中しなくてはならないんだ。ハリケーンの真っ直中でアイスランド海の氷河の上で演技した り、怪人の衣装を着けてパインウッドの舞台で喋る代わりに歌ったり、モントリオールで皮のふんどし一丁でブルースクリーンの前に立っていたりっていうこと になるんだよ!

「こういうタイプの演技にはとてもたくさん学ぶことがある。好きなタイプの演技かって? ノーだね。この映画はなんたって大好きさ。ぼくたちはだれでもみ な1人1人がとても優れた、しかもすごく独特なものを作っているということがわかっていたから、だれもが1,000パーセントの努力をしていた。だけど、 ブルースクリーンの前で演技をするという点からすると、時々ちょっと精神の一貫性が途切れた。なにしろ、しばしば5つの異なった観点をこなさなくてはなら ず、そのどれもが実際には存在しないんだから」

みんなと一緒だったということが、その「一貫性が途切れた」感じを克服するのに役立 ちましたか?

「ただ血を流すため、演技のため、とんぼ返りをして頭から落ちたり肋骨にひびを入れるために出ているあんなにも多くの才能ある筋骨逞しいいかれた連中 (笑)のいる部屋ではエネルギーを感じられるよ。それに、もしあれが屋外だったら、そのエネルギーの多くは消えてしまったかもしれないと思うんだ。でも、 文字通り部屋に閉じこめられていた。とても大きな部屋だけど、閉じこめられていた。ただそれを感じることができ、中に入ってそれを使えるんだ。時折求めら れる超新星級のエネルギーみたいなものだよ。だから・・・そうさ!」

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