ファ ンの王者:誰もが『300』でジェラード・バトラーに釘付け

Newsweek International
2007年2月19日号
ジーナン・ブラウネル

ジェラード・バトラーは日本では大変人気があり、彼が2005年に東京に来た時には恍惚としたファンが空港に彼を出迎えた。この人たちは、トム・クルーズ をわざわざ出迎えた人たちよりもきゃあきゃあ言っているーー少なくとも思い悩むスコットランド人の色男に捧げられたウエブ・サイトの1つGB.Netを運 営するタマラ・ホールステッドによれば。ホールステッドは、彼女のサイトには平均して1日3万人が訪れ、2001年に始めてから約700万ヒットを受けた という。こうしたファンの中には、毎年大会に集まって、37歳の俳優について彼女たちの好きなことをあれこれと取りざたする人たちもいる。彼のぴくぴくす る筋肉だけでなく、控えめな魅力、うっとりさせる眼とセクシーな顎。この夏400人のファンがバトラーの故郷グラスゴーに集まる。彼女たちは幸運な人たち だ。この催しは24時間以内に売り切れ、300人の望みをかけている人たちがウエイティング・リストに載っている。しかし、主流を成す映画ファンで彼のこ とを聞いたことがある人はほとんどいない。

それも変わろうとしている。今週彼の最新の映画『300』ーーフランク・ミラーのグラフィック・ノベルに基づくテルモピュライの戦いを描いた歴史的叙事 詩ーーがベルリン映画祭で今か今かと待ち受けているところにお目見えする。スパルタ人の王レオニダスを演じるバトラーは、300人を率いてクセルクセスの ペルシャの大軍に立向かう。映画を製作したワーナー・ブラザーズは、大当たりを期待しているーー一部には、インターネットで盛んに噂が飛び交っていること による。「ジェリーが映画を支えている」と映画監督のザック・スナイダーは言う。「人々が知らない俳優を使ったんじゃないか、この話では誰を追ったら良い のかわからないんじゃないか、という懸念があった。けれど、ジェリーはあんなにも強力なカリスマ性と存在感があるから、戦いに連れていってもらいたいと 思ってしまうよ」そして、『300』はバトラーが見せ場を演じているのが見られる唯一のものではない。ピアース・ブロスナンと共演したスリラー 'Butterfly on a Wheel' もベルリンで今週上映される。ヒラリー・スワンクとのラブ・ストーリー 'P.S. I Love You' は今年の後半に世に出る。

バトラーは間違いなく皆と同じく、自分が注目をあびるようになった変化に驚いている。主にグラスゴーで育ち、優秀な学生で、筋金入りのセルティック・フッ ト ボール・チームのファンで、ハリウッドのスターの地位ではなく正義の秤を夢見ていた。グラスゴー大学法学会会長を務め、優等で卒業した。彼の専門は欧州共 同体法であった。しかし、弁護士としての資格に1週間足りずにエジンバラの事務所での修習期間にクビになった。「クビになったその日は、人生で最悪の日 だった」とバトラーは言う。「とてもいい人たちだったんだけど、こう言ったんだ。『さあ、話し合おうじゃないか。これは君には向いていない。君の夢は他に ある。去って、自分を立て直すんだな』って」そこで、翌日彼はロンドンに出て、舞台監督のアシスタントの仕事を得た。ほどなく、バトラー自身が舞台を踏ん でいた。

小さなテレビの役が、『クイーン・ヴィクトリア/至上の恋』やマイケル・クライトンの『タイムライン』といった映画での役に繋がった。バトラーは以前にも 主役を演じたことはあったが、主役の女性(『トゥームレイダー』のアンジェリーナ・ジョリー)の陰になったり、文字通り顔を覆ったり(『オペラ座の怪人』 のタイトル・ロールを演じた)で、より多くの観客の心に留まることはなかった。注目の的にならずにいることは彼には合っていた。「ぼくはまだ誰にも気がつ かれずにニュー・ヨークのカフェでのんびりしていられるといいんだ」と彼は言う。しかし、『300』でそれもじきに不可能になるだろう。バトラーは、驚く ほどに人を惹きつけずにはおかない肉体的なエネルギーで、相当にスクリーンからはち切れそうになる。

彼の魅力ある態度とは別にファンを惹きつけているらしいのは、彼のファンに対する献身である。ジェラード・バトラー・ドット・ネットのメンバーが癌チャリ ティー(彼の父は癌で亡くなった)のために6,000ドルを集めた時、この俳優は彼らの献金額と同じだけを出した。彼はファンに電話をしたり手紙を送った りすることで知られている。ホールステッドは彼を友人とみなし、その逆も成り立っている。「わたしは『ファントム・プレミア』で彼の招待客の1人でした」 と彼女は言う。彼の注意を求めるファンの数は増えるばかりだ。来年バトラーがやりたいと思っている1つの企画はスコットランド人の詩人ロバート・バーンズ の伝記映画である。「これはぼくが強く望んでいるもので、資金を得るのに苦労しているけれども、どうしても作りたいんだ」と彼は言う。『300』のプレミ アの後、レオニダス王はこれまでにもましてわが道を行くだろう。


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