Los
Angels Times
俳優たち:ジェラード・バトラー『マシーン・ガン・プリーチャー』
実 在の人物サム・チルダースを演じることにむせび泣いた
ニコール・スパーリング、ロサンジェル
ス・タイムズ
ジェラード・バトラーが泣いている。
燦々とした午後で、『300』のレオニダス王として一番良く
知られている俳優が、ハーレイを降りたばかりで、黒のTシャツにアーミー・グリー
ンのパンツを身につけ、最近贅肉をそぎ落とした体にしっかりとヘルメットを抱えてロス・フェリスのレストランにぷらぷらと入って来た。彼
はウエイターたちを魅了し、カフェ・ラッテと一緒にサラダを注文して、相手が一人だけ食べなくてもすむようにし、愛想良くいろいろな逸
話を話した。しかし、スーダンに行って孤児院を始めた実在の銃を振り回す牧師サム・チルダースを演じに南アフリカを再訪した時の話になっ
たとたん、彼の感情は抑えきれなくなった。
「こんなことが撮影中よくあったんだ
よ。すっかり圧倒されちゃってね」と彼は涙を流しながら言った。「あらゆる感情を感じたんだ。しばらくこの映画については話していなかっ
たんだけど、この間話をしたら、泣き出してしまった。5分くらい泣いていたよ」
今回バトラーはたっぷり2分間は泣いて
いた。
「どうやってこれを切り抜けたら良いか
わからないんだ」と彼は目を拭いながら笑い、いよいよ9月23日に公開になる情熱
的なプロジェクト『マシーン・ガン・プリーチャー』のプロモーショ ンに乗り出す疲れる全国的なメディア・ツアーのことを思っていた。
マーク・フォースター(『007/慰めの報酬』)が監督した
『プリーチャー』では、田園地帯のペンシルヴァニア生まれで、神を見いだしてから麻薬漬けで犯罪だらけの生活を変えた乱暴で怒りっぽいチ
ルダースを体現するにあたって、バトラーは自分自身のはちゃめちゃさを振り返って見ざるをえなかった。チルダースは生まれ変わったこと
で、アフリカに渡る前に故郷で牧師になった。アフリカで彼は、ウガンダ、スーダン、コンゴ中で暴力的なキャンペーンを続ける神の抵抗軍の
手で孤児になった何百人もの子供に出会った。その残虐さのため、チルダースは1998年
にスーダンに孤児院を設立し、現在そこには200人以上の子供たちが暮らし、1,000人以上に食事を与えている。
「サムにはたくさんの感情を感じたん
だ。暴力、気違いじみた所、抑制がきかなくて自分の人生をどう生きたら良いのか
わからない、ぼくはそれを全部経験した」と、弁護士としての最初の職業が不幸せでアルコールや麻薬に走ったあと俳優として生まれ変わったバトラーは言う。
「ぼくは人を刺して回ったり人を撃ったりしただろうか? ちがう。ぼくはアフリカに孤児院を建てることになっただろう
か? ちがう。でも、全てに片をつけて人生でものすごい転換をした」
2009年
7月から2010年3月まで「経歴を台無しにしたかもしれなかった」(『男と女の不都
合な真実』
『完全なる報復』を含む)5作の映画に主演したバトラーにとり、チルダースの役への関わり合いはカメラが回り始める1年前から始まってい
た。41歳のスコットランド人は、時々フォースターと脚本家のジェイソン・ケラー
と会って、各場面を再構成する忍耐のいる会合をしていた。これは明らかに彼に深甚な影響を与えただけではなく、「俳優としての厳粛さと重
み」を与えてくれる、と言う。
これはまたケラーにとっても映画スター
とこんなにも密接に仕事をしたまたとない経験だった。
「サムのような信じられない話
を持つ精力的な、今生きている人物の役を演じるというのはジェリーにとって大変な責任だったと思う」とケラーは言う。「会合の間、そ
れに撮影中でも、彼がどんどんと[役 に]入り込んで行くのを目にした。[彼 にとっては]とてつもない重荷だったよ」