VIVA FILMS (フィリピン)
VIVA Entertainment

SHATTERED

制作について

詩人のアレクサンダー・ポープが「アーバスノットへの手紙」で初めて記した「車輪の上の蝶をたたきつぶしたのは誰か」は、繊細なものを残虐に破壊すること を示す表現である。この格言は、些細なことを成すのに度を超した努力をすることを表すようになった。ここでは、蝶はあらゆるものを手にしているジェラー ド・バトラー演じるニール・ランダルである:容貌、魅力、成功、トップへの出世街道に乗っている。彼はアビー(マリオ・ベッロ)と結婚している。彼女は完 璧な連れ合いで、美しくもあり思いやりもある良き妻であり、2人の一人娘5歳のソフィーの良き母である。

2人一緒の生活はあらゆる幸運をしまい込んでいるのだが、アビーは野心的な男の妻にありがちな静かなる絶望的生活に耐えている。彼女の小さく個人的な失望 はしばしばニールのより大きな成功に隠され、2人が分かちあう幸福を考えると忘れられてしまう。そして、ライアンという男がどこからともなく現れてくるま で、2人はそういう風にやってきた。復讐の天使のように、彼は2人が共に大切にしているもの、幼いソフィーを捕らえ、彼女の安全と引き換えに恐るべき代償 を要求するーーニールとアビーの命を24時間完全に支配するというものだった。冷酷無比な精密さで、ライアンは2人がこれまでめざしてきたすべてのことを あらわにする。明らかに彼は復讐を望んでいるのだが、彼は何者でどうしてこの家族を標的にしたのか? 彼らの試練が終わる頃までには、ほっとしたのもつか の間、自ら招いたナイフの一ひねりで区切りがつく。

Shattered は脚本家で英国のプロデューサー、ウィリアム・モリッセイの手によって生まれたアイディアで、共にCAA*の一員である監督のマイク・バーカー(『完全犯 罪』[1999])と組んだ。CAAがこの企画を、ボー・セント・クレールとの長い間の制作パートナーであるピアース・ブロスナンのプロダクション・カン パニーであるアイリッシュ・ドリームタイムの関心を惹くと、彼らは観衆にあからさまな暴力ではなく心理的な緊張で挑戦することを選んだスリラーとして、ま たブロスナンの長く成功している演技キャリアにおける革新的な転換として、すぐにShattered の潜在力を見て取った。それからそのパッケージは、オスカーを受賞した伝記映画『カポーティ』の陰にいたやり手で、以前ブロスナンやセント・クレールと共 に時代劇『エヴェリン』をやったインフィニティ・フィーチャーズのプロデューサー、ウィリアム・ヴィンスとエグゼクティブ・プロデューサー、デイヴ・ヴァ レオーの許に届いた。続いてプロデューサーたちは、アイコン・エンターティンメント・インターナショナルをパートナーに引き込み、カナダと英国の共同制作 は完成した。「ある役者たちが類型に反して演技するように、我々は類型に反して制作する」とプロデューサーのウィリアム・ヴィンスはShattered を『カポーティ』と較べて述べている。しかし、『カポーティ』こそがインフィニティにどれだけバーを高くできるか教えたのであり、それが彼らがShattered でめざしていることだった。「この映画のはっきりとした魅力は警告を促すスリラーで、説教臭くならずに刺激するように考えられていて、ほとんど説明的にな らずにプロットが減速して先へ進み、展開のたびに弾みをつけるように書かれていることだ。」エグゼクティブ・プロデユーサーのデイヴ・ヴァレオーにとって と同様にヴィンスにとり、ある企画を選ぶことはしばしば脚本についてと同じくらい、それに関わる人々に関することである。
[Creative Artists Agency: 1975年創設のハリウッドのトップ・タレント・エージェンシーの1つ。]

2人ともウィリアム・モリッセイが彼の脚本に大変な情熱を注いだこと、彼のエネルギーがとても高かったのでそれが伝染したことを認めている。「これは身の 引き締まるスリラーで、力強いものだ。これみたいなものはこれまでやられたことがない」とエグゼクティブ・プロデューサーのデイヴ・ヴァレオーは述べる。 「最初に読んで結末を知ると、もう一度あらゆる手がかりを求めて読み直すんだ。その策略と計算は完璧で、ビル・モリッセイはストーリーを洗練するのに驚く べき仕事をして、サスペンスを徐々に盛り上げている。特にこの映画は、見た人が後でたくさんの会話の火花を散らすことになると思う。根本的な問題は現在の もので、誰もが直面する問題だが、それにあからさまに対応しようとする人はほとんどいない。ひねりや展開に優れた男マイク・バーカーを監督に、このキャス トを組み合わせたら、Shattered は強力なパンチを繰り出す。」ピアース・ブロスナンとボー・セント・クレールは手を組んで、1996年にロサンジェルスに本拠を置く制作会社アイリッ シュ・ドリームタイムを創り、Shattered が共同で製作した6本目になる。「ビル・モリッセイが脚本を持って来て、マイク・バーカーが監督としてくっついて来て、われわれは彼らととてもうまく行っ た」とセント・クレールは述べる。「本当にストーリー満載のヒッチコック風にしっかりとしたロックンロール・スリラーだ。ライアンのキャラクターは実に謎 めいていて面白味がなく、ピアースがこれまで取り組んだものとは似つかない。それがこれを生み出した第一歩だった。」セント・クレールにとっては、その キャラクターの対照的な点がブロスナンの経歴に与える「ボンド効果」とのバランスを取るのに役に立つ。「ピアースが(ライアンとして)この人たちの人生を 乗っ取り、彼らの子供の安全を危険にさらして人質とするとき、彼は最高だね」とセント・クレールは続けた。「ピアース、マリア、ジェラードと3人のしっか りとした役者が一緒に車に閉じ込められているというアイディアは説得力があるものだ。彼らの演技が緊張の均衡を作り出していて、そこでは間違った動きは破 壊的な影響を与えるだろう。ライアンが2人の軟弱な人たちを脅えさせているのではてんで効果がない。スリラーでは、観客はかつがれたいのだ。彼らは見た目 の下を見て、プロットの先を行こうとする。『かつぐ』スリラーは、それぞれのキャラクターが結果の予測できない持ちこたえられない状況に置かれた力から生 ずる」

ウィリアム・モリッセイとマイク・ バーカーの創造的チーム

「観客が予測していなかったものを与えたいんだ」と脚本家のウィリアム・モリッセイは説明する。そして本当に、彼は意図せずにみごとに調整された綱渡りの 緊張に満ちた話を生み出した。話の展開を煽るキャラクターはライアンで、真っ向勝負を楽しむのでいつも臆病者の試合に勝っているらしい敵対者である。「う わべは良い、しっかりしたスリラーの要素をすべて持ったものを作り出したかった」とモリッセイは説明する。「だが、終わりまでにはそれ以上のものがはるか にあることを明らかにするんだ。だからストーリーがクライマックスに達すると、別のもっと力強いレベルに達するんだ」

モリッセイにとり、観客がそのような恐ろしい状況に置かれたらどうするだろうかと絶えず考えるような状況を作り出すことが鍵である。「ニールとアビーは彼 らの娘の命をその手に握っている誘拐者と24時間過ごす。彼がやれということは何でもやらなくてはならない。子供のためなら何でもするということはたやす い、なぜならそういう立場にいることはまずないだろうからね。だけど、そうなったとしたら? 実際にどこまでやれる?」

監督のマイク・バーカーはモリッセイとこの企画で広範囲に仕事をし、そのパートーナーシップは成功している。というのも、バーカーの考え方では、プロット が脚本家から生まれるなら、演技とペースは監督から生まれるからだ。サスペンスは2つの要素、会話と視覚効果のバランスであり、それはヒッチコックへの同 意であって、観客が「次はどうなる?」と思わせるように混じり合っている。「いくつも関心をそらすものを入れて、観客が謎解きの過程に参加し続けるように しなくてはならなかったが、脚本家のビルはとても抜け目がなく、それをみんなちゃんとやってのけた、さもないといかさまだからね。そして、観客はそれには 我慢ならないだろう」

スリラーの意義は正確なタイミングにあり、バーカーはそうあるはずのように生活を設定するためにShattered を落ち着いた家庭的な様子で始め、「映画が高揚するにつれ、ショットはよりきつく、とげとげしく、暗く、小型化し、もっと絶望的になってくる。難しかった のは、関連する領域がすべて繋がり合っていることと、ダブル・ミーニングがすべて現実的であるようにすることだった」そうするために、バーカーは撮影監督 のアシュレイ・ロウと密接に仕事をした。「カメラは映画の冒頭では動かずに、役者たちがフレームの中を動き回る」とロウは言う。「プロットが進むにつれ て、カメラもスピードを増し、最初はドリー*で、次いでポータブルで撮った。ペースはますます熱狂的なものになり、カットの数も増え、これが混乱した感じ を増す。ストーリーの解決までには、固定したワイド・アングルのショットに戻る」
[*移動式の台に載せたカメラ]

ワイド・アングルのレンズは、キャラクターが背景の状況を失わずに前景を占めることができる。「こうして、その場にいるように感じる、ほとんどキャラク ターの頭の中にいて、その人物と一緒に動き回っているみたいなんだ」とロウは説明する。映画撮影で微妙な部分である照明は最小限に保たれ、主にガラスや反 射する表面、水、鏡、クロムに頼った。「この詩的な景観は、ニールが本当に自分の反射像を見るなら、実際ある通りに見るだろうということだ」

蝶と車輪

主役を演じることに加えて、ピアース・ブロスナンは Shattered のプロデューサーの一人でもある。ストーリーの原動力について彼はこう述べている。「これは、3人の絶望的な人たち、3人の情熱的な人たち、3人の人生に 傷つけられた人たちなのだ。初めライアンについて知っていることは、彼が異常だということだーーおそらく、テロリストで、間違いなく脅迫的だが、確かに大 変に苦しんでいる。このストーリーには広範なパワー・プレーがあり、ライアンとは何者かということは、すぐにライアンが何を望んでいるのかということより も二次的なことになるーーそれは、彼の息子が思いがけず現れるまでだ。これが瞬間的にライアンを人間的にするが、どうして彼がランダルの人生を破壊してい るのかということを説明はしない」

ブロスナンはアクション/アドヴェンチャー・ジャンルを立派にこなして来たが、これは彼にとって初めての本物のスリラーである。「わたしは確かに、経歴の 中でいかなる影響力も妨げられない地点にいる。映画の中で最も類型的な伝説化した人物の1人、ボンドを演じることから無事に離れ、ここからどこへ行こうか と思うことは浮き浮きするね。急激な方向転換をするに等しい役をいつも捜していたから、Shattered はふさわしいんだ。演劇界でどのように始めたか、良い役者の真髄とは何かを思い出さなくてはならない。」舞台俳優としての初期の訓練に触れながらブロスナ ンは、脚本はたくさんの場面の中で何ページもの対話があり、ある感情が別の主役に反映される1幕ものの芝居のように進展すると指摘する。しかし、ストー リーの感情的な中味はあてにならない。「この作品は、わたしがこれまでやった中で最も気持ちのよくないものだった。とてつもなく重大な問題を抱え、自分の 復讐の幻想を行動に移しているキャラクターを相手にしているんだ。この数年調子を出しているマリアとこれをやる。彼女は常にこのストーリーに情熱的だ。そ して、ジェリーはわたしのキャラクターのすばらしい副本だ。いいねえ、キャストにアイルランド人とスコットランド人がいるんだよ。気に入った。彼はその役 にとても説得力がある。彼らが参加したとなると、戦略がある。しっかりとした映画ができた」

誰に聞いても、マリア・ベッロはアビー・ランダルの役に最も自然な選択だ。デイヴ・ヴァレオーとウィリアム・ヴィンスにとり、彼女の優れた能力を確立した のは『ヒストリー・オヴ・ヴァイオレンス』とThe Cooler における役だった。

「彼女は最高の出来だ」とヴィンスは宣言する。ブロスナンとセント・クレールは、彼女が絶好調だと断言する。マイク・バーカーにとり、彼女は真の意味での 役者で、ちゃんと仕事をする役者だ。ベッロ自身には、アビーは様々なレベルで彼女に語りかけてくるキャラクターである。「どうしてある役をやるのか、ちゃ んと話せないけど、1年半前にこの脚本を読んだら、とても面白かったの。すぐにエージェントに電話して、やりたいと言ったわ。わたしのキャラクターである アビーは、夫のニールが彼女のために作った箱に収まりきらないの。彼女が写真をやることを諦めて、5歳の子供を育てることに献身しているけれど、何かが上 手く行っていない。彼女は鼓動する小道具にすぎず、それが彼女の中にある怒りを生み出しているの」

* * *

「わたしはその怒りと馴染むことができるし、自分の中の獣を解放するのは楽しいわ」とベッロは言う。「いくつかの点で、この映画は単純なスリラーで、他の 点では、心理的に深いの。わたしたちの誰の中にも存在する空虚さがあって、生涯かけてそれを埋めるはずだと言われたもので埋めることに精を出し、もし埋め られなければもっと一生懸命になるの。だけど、この何もない空虚さのままなのよ。」アビーの動機が伏線である。「彼女を深く演じているけれど、ありがたい ことに、何でもかんでも持ち出してくる2人の才能ある俳優と仕事をしているの。2人とも自分たちのキャラクターに自分というものを持っているから、そこか ら反応することでわたしは深みと私たちがやっているすべてのことに意味を見いだせるの」

ベッロはブロスナンと仕事をする機会にうっとりしている。「彼はとても深みのある人よ。彼から役者としても人間としても鼓舞されているわ。彼は自分が成長 し、変化し、ふさわしくなり、経験することを認めている。撮り終わったら、ものすごく彼のことを懐かしく思うでしょうね」

脚本はバトラーとベッロを夫と妻にしているが、現実には2人はすぐに友人になった。「ジェリーが大好きよ。わたしたちは、これでとても良いパートナーだっ たの。本当にお互いものすごく自分を出さなくてはならなかった。わたしは彼ほど自分を出す人と仕事をしたことがないわ。彼はどの瞬間にも十分自分を出すの よ」

* * *

ニール・ランダル役の配役はまるで予測がつかなかった。『Dear フランキー』での役が、スコットランド人のジェラード・バトラーに決める決め手になった。エグゼクティブ・プロデューサーのデイヴ・ヴァレオーは、バト ラーの美貌がそのキャラクターの尊大さをふさわしく思えるものにしているので、その役に大変魅力ある気質をもたらしていることに気がついた。同時に、バト ラーは感化しやすい魅力を持っていて、それが彼のキャラクターに共感しやすくし、そこにニール・ランダルの運任せの矛盾があるのだ。

「ジェリーがとても気に入っている」とバーカーは言う。「彼は110%だよ。ものすごくハンサムな男で、わたしたちはそれに反するようにやることで、それ を有効に使った」

バトラーは鎖帷子(『300』*)から抜け出して21世紀に入ったことをとても嬉しく思い、ずっと「普通のアメリカ人」を演じたくてむずむずしていた。 「最近ぼくは力と権力を持ったキャラクターたちを演じて来たので、これは見た所完璧だよ。ライアンはニールを完全に支配しているだけでなく、彼を骨抜きに する。これはぼくを本当に情緒的にも心理的にも引き裂いた。誘拐の全過程がニールを完膚無く打ち負かし、完成され自信のある魅力的な男で始まり、24時間 のうちに肉体的にも精神的にもぼろぼろになる。脚本でこういうものは見たことがないよ。そのすべての絶対的な恐怖、挫折、狂気がぼくを動かし続けた」
[*これは『ベーオウルフとグレンデル』の間違いでしょう]

バトラーを動かし続けたのは共演者でもある。「ピアースは仲間だよ」と彼は誇らしげに宣言する。「彼と一緒に仕事しているのは本当に名誉だ。彼に会った瞬 間から、彼がこのとてつもないエネルギーを持っていることを実感した。彼は善良できちんとしていて道徳的な人だけど、手に負えなくて、それが大好きなん だ。一緒にシーンをやるときはいつもぼくたちはケルト人仲間だから、狂乱状態だった。ぼくたちは一緒だと2人の大きな子供みたいだった。そして、マリアは 本当にぼくの遊びをおしまいにした。彼女は並外れたとてつもない女優で、素晴らしい人間で、ぼくたちは同じ魂を持っていると思う。同じ情熱や愛、狂気、恐 怖を分かち合い、それをぼくたちの仕事につぎ込み、それのどういうところが美しいのかを本当に理解している」

ブロスナン、ベッロ、バトラーのお互いの称賛は、それぞれお互いのニックネームであるPB、MB、GBよりも深いものになった。2ヶ月間狭い地域にいたこ とと、感情的闘争が盛りだくさんの脚本でこの3人の役者はへとへとになり、お互いに創造的な支えをやたらと頼るようになった。「大変だったのは、このス トーリーの絶え間ない不安を生き延びていくことだけど、毎日の終わりには、完全にやりがいのあるものだったわ」と、共演者やクルーに手作りのスープやカス レ*をセットに持って来て栄養をつけてくれたベッロは言う。
[*白インゲンと豚・羊・ガチョウの肉などで作る南仏起源のシ チュー]

「わたしたちは8週間お互いを打ちのめし、お互いにとても信頼しあったから、激怒することを認めたの。わたしたちはみんなこれで瘤や打ち身を作ったわーー 肋骨を折りさえした。他の映画では達したことのない感情的な深みにいったわ。そして、ピアースとジェリーがいなかったらそれはできなかったわ」

視覚的な緊張を作り出す心理学

スリラーのプロダクション・デザインは、映画の感情的なペースを一拍毎に追っていかなくてはならないという意識下の難しい仕事である。「これのは素晴らし い試作品だった」とプロダクション・デザイナーのロブ・グレイは言う。「マイク・ベーカー、撮影技師のアシュレイ・ロウとわたしはこれでどこへ向かいたい のか、どう見えるようにしたいのか、どう動かしたいのかについて3人ともとてもよく理解していた。」グレイが初めてベーカーと会ったとき、草案、すなわち グレイが準備していたイメージのスライド・ショウを見せ合い、それはベーカーが集めていたスタイル・ブックとかなり重なっていた。特に、写真家のフィリッ プ・ロルカ・ディコルシアのイメージで、彼は日常生活からの念入りに演出された場面を撮影して名を成した。最も著しいのは、彼の作品が街のざわめきの中で の孤独と内省感を投影していることで、まさにこの映画にそれが加わっているだった。

「とても多くの場面に車の中に閉じ込められた役者たちが絡んでいるので、デザインの多くは彼らの周りの外部の世界で、この人たちに起きている悪夢には気が つかない世界だ」とグレイは説明する。その対照が激しい不安の核心である。救いがそんなにもすぐそばにあるのに、たった1枚の車の窓に隔てられていること が、どうしようもない無力感を生み出す。「これは中が丸見えの金魚鉢で、すべてのデザインが外を見たり覗き込んだりすることができる窓を強調している。わ たしにとってこれは、自分が見え透いているということをちゃんと理解していないニールにとっての隠喩でもある」

もっと微妙なレベルで機能して、金魚鉢のモチーフは、夜の撮影のために濡らされた通りにまで、それぞれのセットに反射する表面が組み込まれて強調され、繰 り返し出てくる。ストーリーの一部は、鏡の一枚を通して語られ、それから鏡を外して裏返しのフレームの中に入っていく。別の場合には、カメラは4層のガラ スを通して見ている。ストーリーは、荘厳な建築と彫刻で知られる都市シカゴに設定されている。街のランドマークの建物は、ライアンが現れる前のニール・ラ ンダルの現実のうっとりするような世界に役立つように組み込まれている。「それはとても強い男性的な街だ」とグレイは述べている。突出したコーン・コブ・ ビルディング、ミレニアム・パーク、リグレイ・ビルディング、そして古典的なミース・ヴァン・デル・ローエ*・ビルディングやニールのオフィスのために作 られたセットでさえも、すべてがダイナミックな成功を表している。
[*ドイツ生まれの米国の建築家。壁面がガラスの超高層建築で知られ る]


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