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4月に騎馬オペラ「ジンガロ」を見てきました.
オペラといっても人間が歌を歌うわけではなく,あくまで主役は馬,
音楽と馬場馬術,曲馬が一体となった総合舞台芸術...と言っていいのかどうか,
うまく説明できないんですが,
とにかく馬の動きを見るだけでもびっくり!のパフォーマンスです.
今月ご紹介するのは,この「ジンガロ」を主宰するバルタバスが監督・出演した作品で,
やはり馬(馬術)が主要なテーマとなっています.
映画のあらすじは,19世紀ロマン派を代表する画家テオドール・ジェリコーが
『突撃する近衛猟騎兵士官』という絵をアトリエ・サロンに発表するんですが,
その絵を見た曲馬の名手フランコーニに「君は本当の馬を知らない」と言われてしまいます.
「本当の馬」を知るためにフランコーニが座長を務める馬術劇団を訪れたジェリコーは,
馬とフランコーニに魅せられて数多くの馬の絵を残す...というものなんですが,
映画はそんなストーリーよりも,馬と人間の関係,馬の美しさと残酷さを表現することに主眼を置き,
観念的というか,よくわかんないというか,正直言ってかなりしんどい作品になっています.
ストーリーはよくわからなくても馬術のすばらしさはよくわかります.
「後退駈歩」というのがあるんですが(馬が後ろ向きに駆け足すると思ってください),
この超高等馬術が映画の中に出てきて,馬術に詳しくない方でも
「え,馬ってこんな事できるの?」と驚くことと思います.
この他にも,馬と人間が一体となった動きが随所に見られ,
競走馬でない馬のすばらしさの一端を楽しむことができます.
ジェリコーは「本当の馬」を描くために苦悩するのですが, 馬自体がそのままですでに芸術作品なのですから, それを越える絵画や彫刻はあり得ない... という思いがより強くなった作品でもありました.
(2005年5月)