イタリア冬景色 (1/25 up)


   



ナターレ NATALE


イタリア語で クリスマスは ナタ−レ(Natale)、

メリーク・クリスマスは ボン・ナターレ(Bon Natale)だ。

十一月も末に近づくと 街の中にイルミネーションなどを地区ごとに飾り付けて クリスマスのイメージが高まってくる。

恋人や家族へのプレゼントは何にしようかとか イヴはどこで誰とどのように過ごそうかとひそかに イタリア人達は考え始めるようだ。

ヨーロッパの一般常識としては「クリスマスは家族と共に」だが、近年の離婚の増加にともない 家族構成もだいぶ複雑化しているため、良く考えて準備する必要も生じてくる。 

24日のクリスマス・イヴは 普段あまり人気のない教会もこの日ばかりは人々でいっぱいになる。キリスト教徒が80%以上を占めるイタリアでは 何よりもクリスマスは原点に戻る祭りで、キリストの降誕を地区の所属教会まで家族と共に行き、近隣の人々と共に祝いの祝典(ミサ)を捧げて 互いに連帯感を強め抱擁しあう。

家族や友人との仲たがいや ちょっとした行き違いを クリスマスを機会に「おめでとう」といいながら水に流し、より高い次元を求める人間性を感じあうのもクリスマスならではだ。こんなことが素直に行えるのが ヨーロッパのクリスマスの不思議なところだ。

やはり キリストの愛の教えが奇跡を起こすらしい。

ちなみに クリスマス、大晦日、正月に対する庶民の気持ちは 日本とイタリアでは 

かなり異なる。日本人にとって クリスマスは忘年会的要素が強く今年一年ご苦労様でしたという意味で仲間が集い 一杯飲みながら 会話を楽しんだり 歌ったり踊ったり 楽しく過ごすことが多く キリストのことはとかく忘れがちだ。

大晦日、ヨーロッパでは何より踊りあかす傾向が強くイタリアもこの点に関しては同様。

コムーネと呼ばれる町では 大晦日の晩は特に町の大集会場にバンドを呼び町の中高年者の社交ダンス好きの人々のために宴会場を提供する。また 誰か大きな広間や地下を提供してくれる人の家に 仲間がたくさん集まって一晩中踊りあかしたり、恋人同士がディスコで踊り明かすことも多い。したがって 元日は寝正月、ゆっくりと起きて朝食兼昼食をのんびりと食べる人々が多い。そして、一日ゆっくりと過ごし 翌日2日からまた普通の日が始まる。日本の大晦日のように一年を振り返りながら家族とともに除夜の鐘をしんみりと聞いたり、紅白歌合戦ほど国民的盛り上がりを見せる放送番組はなく、「一年の計は元旦にあり」というおごそかでかしこまったお正月の気分は残念ながら味わえない。

 

             


エピファニア EPIFANIA


1月6日は ベトレヘムの馬小屋で生まれた幼子キリストのもとへ 三人の博士が東方から星に導かれて長い旅をしてお祝いにやってきた日を記念する祝日。

日本語ではあまり知られてない祝い日だが キリスト教会の世界重要な祝日で「公現祭」と和訳されている。

日本ではクリスマス気分は12月25日で終わり、町の飾りも巷の宣伝もすばやく正月用のものへと変身する向きがある。

イタリアでは1月6日のエピファニアまで クリスマスの雰囲気がただよっていて、クリスマスの飾りつけもこの日までそのままにされる。

ちなみに イタリアは中世以来の伝統として今でも各都市は守護聖人をかかげている。 各々の聖人にはそれぞれ祝い日が定められていて、なんと中世時代はこの祝い日がその町の新年だった。たとえば フィレンツェの守護聖人はキリストに洗礼を授けたヨハネ*で 祝い日は5月24日、この日は今でもフィレンツェ市の祝日となっている。

「えっ、一つの国の中でたくさんの新年があったなんて信じられない!」と 日本人だったらたいてい思ってしまうのではなかろうか。しかし、それもそのはず、イタリアは19世紀の後半までは一つの国としてまとまることはなく、各都市が一つの国の単位だったのだから。

*洗者ヨハネはキリストの12弟子の中でも最も若かったヨハネとは別人物




パスクア PASQUA

日本名は「復活祭」、十字架上で亡くなったキリストが 四日目によみがえったとするキリスト教義に基づく祝い日。復活祭はキリスト教世界にとっては クリスマスよりも重要視されることもあるほどで、キリストの神性を物語る数多くの奇跡のエピソードのなかでも頂点を示す。

さて難解なのは 毎年復活祭の祝日が たとえば12月25日がクリスマスというように決まっているのではなく、毎年祝日が変化する点だ。翌年の復活祭はこの日曜日です、とバチカンが公表するのだが、その決め方が一風変わっている。春分の日が起点になっていて 春分の日が過ぎた後、最初の満月をむかえ、そのすぐ後の日曜日がその年の復活祭として定められる。

今年の復活祭は4月16日、教会ではこの日、お清めしてきれいな模様を描いた鶏の卵をキリストの復活の象徴として信者たちに手渡す。信者たちは家に帰って大切に持って帰った卵をうやうやしく 用意したご馳走と一緒に食べる。 

もともと イタリアにはエトルリア人たちによって祝われていたローマ時代以前の古い重要な春の祭典があったことが知られている。寒い冬を越して 春がやってくると心がうきうきして 外気に触れながら春をめでたくなるのは古今東西同じらしい。


                     



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