300: セットを訪問!

2007年1月5日
Coming Soon.Net
エドワード・ダグラス

Coming Soon.net/ Superhero Hype! が、フランク・ミラーのグラフィック・ノヴェルに基づくザック・スナイダー監督の『300』のモントリオールにあるセットを訪ねてから、1年以上がたっ た。その間、スナイダーは編集や、ミラーの作品の特徴的な外観や感触を再創造するために使われたコンピュータ処理に忙しかった。当時ミラーの経歴をたどっ ていなかった方々のために、彼は『シン・シティ』のミニ・シリーズの合間に『300』を作った。これは、300人のスパルタ人がテルモピュライの熱き門で ペルシャの数千人もの軍隊を寄せつけなかった神話的な物語に基づく話である。

去る'05年の12月には、わたしたちは何を期待していいのかよくわからなかった。サン・ディエゴのコミ・コンやネット上で予告編なり映画の一部が見られ るまではまだ何ヶ月もかかるだろう。当時、ザック・スナイダーは愉快でいささか残酷シーンの多い『ドーン・オブ・ザ・デッド』のリメイクで主に知られてい たが、特に、その年の初めにミラー自身の『シン・シティ』が成功を収めた直後では、フランク・ミラーの『300』をスクリーンに持ってこようとするのはか なり野心的なことに思えた。

その映画を青写真として、スナイダーはフランク・ミラーの作品の見た目を最高にしかも最も安上がりに取入れる方法は、俳優たち全員をグリーン・スクリーン の前で彼らのシーンを撮影し、それから後にコンピュータを用いて背景を加えることだと決めた。彼は、俳優のジェラード・バトラーを、一見不可能な戦いに部 下たちを率いて行くスパルタ王レオニダスを演じるのに雇い、王妃ゴルゴにレナ・ヒーディを雇った。

わたしたちがセットにいた日ーー60日間のへとへとに疲れそうな撮影の41日目ーーの間に、巨大な複合体を案内してもらい、わたしたちの目の前で撮影され ている映画の素晴らしい一連の戦闘場面の1つを見るだけでなく、制作過程の隅々まで入ることを許された。制作全体がミラーの作品に対して払っていた注意と 尊敬は、訪れたどの部門でも目にすることになった無数のグラフィック・ノヴェルによって明らかだった。

わたしたちのツアーが始まる前、映画がどのように制作されるかいくつかの例を見せられた。ミラーのグラフィック・ノヴェルからの2枚のパネルがそれぞれの ストーリーボードと並んで壁にかかっていた。1枚はグリーン・スクリーンでの場面を撮った写真、それからコンピュータで視覚処理をした後の最終的な場面 だった。

武器室

わたしたちがミラーのスパルタの叙事詩の世界へと最初に脚を止めたのは、小道具室だった。そこは「武器室」と呼んでも良いようなものだ。というのも、グラ フィック・ノヴェルからの戦闘場面を再創造するために使われる剣や楯、槍でほとんど埋め尽くされていたからだ。ツアーのこの部門の案内者は小道具主任のア ニー・カルパンチエで、わたしたちが見ている武器や楯の全部が実際の戦闘で使われる訳ではないと語ってくれた。その多くは装飾的で、非戦闘場面で俳優たち が持ち運ぶのに普通の楯よりも軽く、そしてもちろん、たくさんの宙を飛ぶ矢や槍は後からCGアニメーションを用いて作られる。アニーは時間と費用の節約の ために、ワーナー・ブラザーズの他の2本の歴史的な戦争叙事詩『トロイ』や『アレキサンダー』で使った武器の一部を再利用したことを認めたのだが、それで も2ヶ月がかりで、異なった場面のために125枚以上の楯、250本の槍、75本の剣からなる試作品を作った。楯と武器は全て、映画が進行するにつれて剣 や矢で傷んだのを表わすためにもっと使い古したように見えるようにされる。のちにザックが語ってくれたように、全てはもっとフランク・ミラーのコミックら しく見えるようにするために映画全部に行なう特殊カラー処理のために、スクリーンに現われるのとは異なった風に色を塗らなくてはならなかった。(これにつ いては後説)

訓練と拷問との微妙な一線

セットの訪問でそうしばしば含まれないのが、俳優やスタントマンの訓練部隊である。そして、『300』のためには、戦いに関わる誰もがスパルタ戦士に期待 されるタイプの姿形と適応性を持たなくてはならないので、訓練はかなり激しいものでなくてはならなかった。スパルタ人はほとんど服を着ていないので(落ち 着いて、ご婦人方!)体形を本当に隠す術(すべ)はなく、それを念頭に置いてザックはマーク・ドゥワイトを雇った。元登山 家で、俳優たちやスタントマンたち、さらにはクルーの一部を団結した肉体的にふさわしいグループに鍛え上げる任務を負った。

マーク・ドゥワイトは、ジャック・ラランよりはもっとヘンリー・ロリンズのような人格をもつ筋骨逞しい早口の男で、明らかに彼のユニークなフィットネス処 方計画に燃えていた。彼は『300』は彼にとって初めてのハリウッド映画だと語った。というのも、普通は彼の犠牲者たち・・・おっと・・・依頼人たちに重 い物を持ち上げさせたり引かせたり、登ったり、跳んだり、押したりと極限までさせるプログラムで武闘家や檻の中で戦う人たちを訓練しているからだ。きつい プログラムには多くのチームワーク、いくらかの競争、そしてかなりの「苦しみと嘔吐」が含まれる。マークの第1の規則は、誰も怪我をしないこと、自我は外 に置いてくること、だと言われ、それは映画の主演ジェラード・バトラーがしばしばスタントマンたちと一緒に訓練するということだった。

出演者やクルーが自分の芸術のために苦しんでいる間だれているような人ではないので、ザック・スナイダーは自ら訓練処方計画に加わった。後で見るように、 スナイダーは自分で多くのカメラワークを行なうのを好むので、これはおそらく撮影の間役に立っただろう。男たちが受けた気違いじみた試練のいくつかをドゥ ワイトの仲間ジム・ジョーンズのウェブサイトのヴィデオで見られる。信じるかどうかはともかく、ザックさえもこうしたヴィデオの一部で見つかるだろう。

馬、狼、不死部隊、不幸な斥候たち

スナイダーの野心的制作を巡る旅で次に立ち寄ったのは、クリーチャーFX部門で、そこでわたしたちはクリーチャーFXの管理者で『ナルニア物語』でも仕事 をしたマーク・ラパポートと彼のチームの一員のクリス・ブリッジズに引き渡された。映画の視覚効果の多くはコンピュータを用いて作られるが、この部門はグ リーン・スクリーンの前で俳優たちと触れ合う多くの現実的な生き物を作り出さなくてはならない。

普通は、彼らの工房は130人がマークのチームで忙しく働いているが、その日はかなり静かで、フランク・ミラーのコミックに基づく映画に期待するような カッコいい創造物たちだけで一杯だった。すぐさま飛び出してきたのは、槍で突かれたり槍で固定され、口からは穂先が飛び出した生身の肉体のような体で、そ れが巨大な保管棚の天辺を顕著に飾っていた。これらはレオニダスが迫り来るペルシャ軍に見せしめとして用いたペルシャ人の斥候だった。マークは、彫像を工 房の者たちに似せたと話してくれた。

固定された斥候よりもさらに印象的なのは、巨大な火のように燃える目をしたアニマトロニクスの狼で、若い頃のレオニダスが立向かう。操作するには5人がか りで、狼は20種類の異なった顔の表情をすることができ、ラパポートがにんまりしながら述べた「我々がこれまで作った中で最も柔軟な舌」を見せびらかし た。また彼らは獣のような超人兵たちで、レオニダスとその部下に襲いかかるたくさんのペルシャ人の不死部隊を組み立てて、ミラーのグラフィック・ノヴェル に出てさえ来ない不気味な金色の仮面の背後には何があるのかを見させてくれた。クルーはまた13頭の機械仕掛けの馬を組み立て、それは本物の馬を傷つける ことを気にする代わりに槍を使って殺したりひっくり返したりできるが、マークは数頭の馬が撮影中に怪我をしたと言った。

この部門の任務には哀れなせむしのエフィアルテスと、クセルクセスの天幕内でのどんちゃん騒ぎの場面に出てくるサテュロス(半分人間、半分山羊)などの キャラクターの人工的な部位や特殊メイクも含まれる。こういう物のために、マークのチームは次にわたしたちが案内された映画の普通のメイクアップ部門と並 んで仕事をした。

傷跡!

わたしたちはメイクアップ部門に長居してかなりの時間を費やした。そこでは、特殊メイクのための参考に使われる多くのキャラクター・デザインやスケッチを 見ることができた。その大部分は衣装デザイナーのマイケル・ウィルキンソンによるものだが、わたしたちのツアーはメイク主任のショーン・スミスとメイク アップ部門の長であるスコット・ホィーラーによってなされ、彼のチームは20人のメイクアップ・アーチストから成っていた。

スケッチにはせむしのエフィアルテスを初めて目にしたものが含まれ、それは英国人の俳優アンドリュー・ティアナンを気の毒な人物に変えるのに5時間以上か かる驚くべきメイクアップの仕事だった。わたしたちは、それがなされる過程の写真を何枚か見せてもらい、また腕に巨大な牙を持つペルシャの処刑人のスケッ チや、最近 [ドラマの]『ロスト』の配役に加わったブラジルのロドリゴ・サントロが演じるペルシャ王クセルクセスが身 に着ける金鎖の衣装のデザインを感嘆して見つめたが、彼の衣装はクセルクセスをもっと神の如く見せるために肌をきらめかせるような際立った方法を作り出す ために、全身のメイクアップを必要とするだろう。わたしたちはまた、巨大な「超不死者」のスケッチを見ることができた。ミラーのグラフィック・ノヴェルに はないが、ザックが(選りによって)彼の入れ墨アーティストと一緒に映画のために特別にデザインしたものである。巨人は7フィート2インチのプロのレス ラーが演じるが、彼は『トロイ』の最初でブラッド・ピットが殺した巨人兵のネイサン・ジョーンズにちょっと似ていた。

これはどれも皆とても素晴らしかったが、見て一番魅惑するものは、メイクアップ部門の特別「傷部屋」で、そこは文字通り何百もの様々なタイプの傷があり、 型をとった膠で作られ、壁にぶら下がっていて、どれも特別な番号をつけられ、それぞれの俳優に割り当てられて、特別な「番号傷」制で、ある日から次の日へ と一貫性を維持するようになっている。その多くが『パイレーツ・オブ・カリビアン』や『マトリックス』の映画で仕事をしたスタントマンたちは、彼らを様々 なスパルタ人やペルシャ人の戦士に変えるためになされた傷やメイクアップをして、1日に2〜3時間どこででも過ごすことができると聞いた。

ファッションショー企画:スパルタ 版

幸いなことに、セット探訪には1人か2人の女性もいた。というのも、彼女たちはおそらくわたしたちのツアーのファッション部分にもっと興味があるだろうか らだ。衣装デザイナーのマイケル・ウィルキンソンに案内され、王妃ゴルゴ、巫女、その他のキャラクターの衣装を思いつかせたイメージで一杯の本を何冊も見 せてくれた。彫刻の写真や美術館の展示、美術書から取られたものもあった。ウィルキンソンのチームは、制作のために600から700の衣装を作るハメにな るだろう。クセルクセスの金鎖の衣装は最も手が込み、33の偽のボデイ・ピアスを含む。マイケルは、巫女の踊りがどんなものになるか見るのが楽しみだと 語った。というのも、彼女の優雅な動きを作り出すために特殊な水槽の中で撮影することになっていて、彼女のために水の中でまるで絹のようになびく特殊なポ リエステルで衣装をデザインしたからだ。

世界を設計する

映画のプロダクション・デザイナー、ジム・ビッセルは後ろ姿がカルト的古典のロケッターに似ている男で、わたしたちに彼のオフィスをわかりやすく案内して くれた。そこは、セットの模型や青写真で一杯だった。その多くはザック自身が描いたスケッチに基づき、それから3D模型としてコンピュータ内で具現化され るということだ。

映画の背景の大部分はコンピュータの中で作られるにしても、尚、俳優たちが歩いて横切る風景に大ざっぱに似せたものを建てたり、必要があれば修正したり再 利用したりできる再利用可能な岩の彫刻を無数に作ったりしなくてはならなかった。制作のために建てられた最大の実物のセットは、実際の「熱き門」で、これ はスタジオの一番大きな防音スタジオにも収まりきらなかったので、外部に作られた。その他の物は何もかも防音スタジオで、野外の感じを出すために送風機を 使って行われた。ジムのチームは、戦う兵士たちの足の下では本物のように見えるが、跳ね出しても誰にも怪我をさせないような一種のゴムの泥を作りさえし た。わたしたちが後でグリーン・スクリーンの1つを訪れる時、他には何もないセットの中に泥やまがいの岩がどのように組み込まれているのかを見ることにな る。こうしたセットをどうやってコンピュータ処理に組み込むかについてあれこれと考えられたが、ジムは他の歴史的叙事詩が成し遂げようとしているリアリズ ムを求めるよりも、映画をフランク・ミラーのスタイリッシュなアートワークにもっと似せるようにしようという計画なのだと再度述べた。

ジムとヴィジュアルFX主任のクリス・ワッツはわたしたちに「ザ・クラッシュ(粉砕)」とか呼ばれるものの直接の見本をくれた。これは、映画全体にグラ フィック・ノヴェルにあるリン・ヴァーレイの特徴的な色合いの外見を与えるために用いられる色の濾過過程である。文字通りパレットからとったある色を粉砕 して、グラフィック・ノヴェルに見られる色のみを残すものである。

仕事に戻る前に、ビッセルはわたしたちをクセルクセスの天幕が組み立てられている防音スタジオの1つに連れて行ってくれた。ペルシャ王の贅沢をもとめる通 常の慣習に従って、天幕の巨大な内部は、背後には純金の階段があり何本もの金でできた柱に支えられる。この階段をクセルクセスは劇的効果を上げるために降 りてくることができる。その近くで、戦いの始まる前にクセルクセスをレオニダス王との最初の会見に運んで行く驚くべき金の玉座の一部を目にすることができ た。わたしたちは、この仕上がった場面を映画からの特別披露の場面で見るだろうが、それは壮麗な玉座に乗ったクセルクセスの入場を見せてくれ、その玉座は クセルクセスが降りる時に背中を階段として使われる奴隷たちが担いでいる。

戦争は地獄なり

わたしたちがセットを訪れた日、ザックはバトラーと、半分はスパルタ人、後の半分が不死部隊の50人近いスタントマンたちが戦っている総力戦の場面を撮っ ていた。その最も激しい部分にザック自身がいて、重いカメラを肩に担ぎ、ある兵が他の兵に宙に投げられるのを大写しにしていた。コンピュータを使って再現 したなら、もっとたくさんの戦士が戦っていると聞いた。その方が何百人もの兵にメイクアップや衣装の時間をかけるよりも安上がりだからである。

どちらにしても、撮影されているところをよく見る普通の対話場面とはちがって、素敵な気分転換だった。もっとも、何もかもグリーン・スクリーンの前で起き ているので、最終的にどのように見えるようになるのかを想像するのはなかなか大変だった。セットはとても緑だったが、たくさんの本物そっくりの岩が至る所 にあって、背景には死体がとてつもなく積み上げられているのが見えた。わたしたちの訪問で最も素晴らしいもので、大きな石とペルシア人の死体でできた巨大 な壁で、ミラーのグラフィック・ノヴェルからのその場面そっくりに見えた。

おそらくザックは、戦闘がどのようになるかについてちゃんとした考えをもっているのだろう、というのも、映画が緑に照らされる前から、彼はスタントマンた ちを集めて2分間の戦闘場面の見どころを撮影して、その映画がどのような物になるかという概念をワーナー・ブラザーズと出資者たちに与えたからだ。わたし たちは手早く作られた見どころ場面を見せてもらった。それは、「300」のDVDに入ると良いのだが、せめてWBのロゴが兵士の楯に変わるかっこいい方法 だけでも入って欲しい。また、後に様々な予告編に使われることになるいくつかの仕上がった場面も見せてもらった。(それでも最高の場面は、スパルタ人がペ ルシャ人の兵を崖の端から押し落とす所を見せているものだ。)

その日の途中で、わたしたちはスナイダーや、ザックの妻デビーを含む映画の製作者たち、俳優のジェラード・バトラーや、わたしたちがそこにいた日に初めて 自らセットを訪ねてきた『300』の創造者フランク・ミラーと話をする機会があった。願わくば、3月9日の『300』の公開までの次の2ヶ月間にこれらの インタヴューの最良の部分を投稿するようにしたい。

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