SundayHerald (Scotland)
2007
年10月14日
歴史映画では今やスコットランド人俳優の訛がさかん
歴史大作ではケルト訛に発音傾向
ブライアン・ペンドレイ
来週末英国で公開のハリウッドの最新アクション・アドヴェンチャー The
Last Legion
(『最後の軍団』)でスターの一人であるピーター・ムランによると、スコットランド人の役者が今や大型予算の大ヒット作では引っ張りだことのこと。
スコットランド人はつい最近の『300』やミニ・シリーズの『ローマ』で主役を演じている。しかし、The Last Legion
でその傾向は最高潮に達した。
最新映画でスコットランド人は文化的なローマ人指導者と、ローマを襲って倒す毛むくじゃらのゴート人集団を演じている。
「思うにスコットランド訛は、叙事映画に向いているんだろうね、一種変わったケルト人の感じがするから」と『ブレイブ・ハート』でウイリアム・ウォーレス
の追随者を演じたムランは語っている。
ムランは、オスカーを獲得したメル・ビブソンが大役を演じたことは、スコットランド人と歴史に対するハリウッドの態度を変えたと信じている。「『ブレイ
ブ・ハート』は本当に大作だ。これまでスコットランド人がヒーローとなったことはなかった。いつだって、滑稽な奴か、飲んだくれかなんかだった」
ハリウッドの制作者たちは、古代ヨーロッパに設定された映画で米国訛ということを、常にではないにしても、時折ためらって、伝統的にイングランド人の俳優
に頼って来た。しかし、もうそんなことはない。
[イングランド人の]コリン・ファースがThe
Last Legion
で主演するにしても、スコットランド人が大幅に数で勝る。ムランと『ブレイブ・ハート』で一緒だったベテランのジェイムズ・コスモにケヴィン・マッキッ
ド、ジョン・ハナ、イエイン・グレンが主要な役を演じる。
3,500万ポンドの映画で、5世紀に設定され、事実とフィクションが混じりあい、インスピレーションとして実在の歴史的人物を引っ張りだしている。グレ
ンはローマ人の支配者オレステスを演じ、一方対する側では、ムランがローマを侵略するゴート軍の司令官オドアケルを演じる。
そして、それはコンスタンチノープルからハドリアヌスの長城*ま
での古代世界を横断し、ローマ帝国をアーサー王やマーリン、[アーサー王の剣]エクスカリ
バーの伝説に繋がる広大な歴史物語のほんの序章にすぎない。
「明らかにどんな英語でも正しくない」とムランは言う。「彼らはラテン語か当時あった他の言葉を話していただろう」
「英語を話すからというだけで、それを容認標準発音**で
やらなくていけない理由がわからない。標準発音を聞くのは好きじゃない。最近はそれがまるで違う
種類の特徴を伝えるんだ」
ムランは始める前にマッキッドと訛について話し合い、自分には他にはできないからいつものスコットランド訛でやるとはっきりさせた。
ムラン、マッキッド、コスモが粗野な野蛮人を演じるのに対し、グレンとハナはローマの支配者階級に属す。「イエインとジョンはとても教養のあるスコットラ
ンド人だ。すごいよ」とムランは言う。
キャストにはさらに、ボリウッド***のスーパース
ター、アイシュワリヤー・ラーイ****とベン・キン
グスレイ卿が加わり、卿は半分インド人半分英国人
で、ガンジーでオスカーを獲得した才能で一番良く知られている。
ケルトとは関係のない歴史的役割にスコットランド人やアイルランド人の役者を使う傾向は、3年前に始まった。『トロイ』はコスモを含めて、米国人、スコッ
トランド人、アイルランド人などが混じっているのが呼び物で、『アレクサンダー』ではアイルランド訛がいくらか議論を呼んだ。
ヒットしたミニ・シリーズ『ローマ』によりマッキッドは英国・米国両国での人気という新たなレベルに進み、今年の始めにはジェラード・バトラーが
『300』で
スパルタ王レオニダスで大ヒットを記録した。そして、近い将来さらなる機会がほぼ確実にあることだろう。
『ラスト・キング・オブ・スコットランド』の監督ケヴィン・マクドナルドもまたローズマリー・サトクリフの古典的な児童書『第9軍団の鷲』に基づく有名な
第9軍団についての映画を作っている。
第9軍団はヨークに本拠を置いたが、2世紀に歴史の記録から消えてしまったことは有名である。
第9軍団は懲罰的な使命でスコットランドに進軍し、完敗したと一般に長いこと信じられている。しかし、軍団の真の運命は謎のままで、小説家や映画製作者に
自分なりの結末を作り上げる道を残している。
[訳注]
*ハドリアヌスの長城:ローマがブリテン島を支配してい時代に、北か
ら侵入してくるケルト人に悩まされ、現在のスコットランドとの境あたりに長城を建設す
ることを皇帝ハドリアヌスが命じた。122年に工事を始め、10年の歳月をかけて完成した118キロに及ぶ長城。1987年にユネスコの世界遺産に登録さ
れる。ケヴィン・コスナー主演の映画『ロビン・フッド』で帰国したロビンが歩いている石垣は、現存するこの長城の残骸である。
**容認標準発音:RP(Received
Pronunciation)と略され、英国の標準とされる発音。イングランド南東部の教養ある人々や、オックスフォード、ケンブリッジ、パブリック・ス
クール、上流階級などの人々が話す言葉で、BBCも取り入れている。ちなみに、英語には日本語のような「標準語」はない。
***ボリウッド:インドのムンバイ(旧ボンベイ)を本拠とする大衆
映画産業に与えられた非公式な名。ボンベイのBとハリウッドを合わせて作られた。
****アイシュワリヤー・ラーイ:1973年生まれ。1994年の
ミス・ワールド世界大会で1位になったインド出身の女優。