舞
台と映画で『ベーオウルフ』華々しい活躍
2006年8月9日
マリア・ピュエンテ
USA
Today
大学で英文学専攻でない限り、長年『ベーオウルフ』を読んだことがないだろうーー仮に読んだことがあるとしてだが。だから、1,000年もの古さの叙事詩
がいきなり大衆娯楽で大活躍しているのがますます奇妙なのだ。
オペラ1作と、大予算でアンソニー・ホプキンスとアンジェリーナ・ジョリーが [声優で]
出ているのを含めて映画3作が、デーン人の偉大なる英雄ベーオウルフとデーン人を喰う怪物グレンデルに加えて、これもかなりのデーン人を喰う(ジョリーが
演じる)グレンデルの厄介な母親とのどぎつい物語が現在もしくはこれからの出し物となる。
ああ、それにドラゴンもいた。
だが、どうしてベーオウルフなんだ、どうして今なんだ? 3,182行の詩は浜辺で気楽に読むようなものではない。だが、普通は英文学概論の授業で最初に
学ぶものだ。これは最初の英語ーー実際は古英語で、これがついには現代の英語になったーーの文学作品だからだ。
ベーオウルフは、故郷のイェーアトランド(スゥエーデン)からグレンデルという名の人を喰う怪物を殺しにデンマークへ航海する戦士である。それから、グレ
ンデルの母親が復讐にやって来ると、彼女も殺す。しかし、ずっと後に、ベーオウルフは宝を抱え込んだドラゴンに殺される。
「これはスカンジナヴィアの影響を受けたアングロ・サクソン語で、デンマークに舞台をとっているが、ほぼ確実に現在の英国で書かれた。というのも、(当
時)そこ以外に他ではどこも古英語を話していないからだ」とマサチューセッツ州ノートンのフィートン大学の英語教授でベーオウルフと中世文学の学者マイケ
ル・ドラウトは述べている。
「写本は1000年頃のものだが、詩自体はそれより200年古い」
「難しい」でははこれの描写は始まらない。「教えている連中だって好きではなかった」とドラウトは言う。
しかし、J. R.R.
トールキンがそれを変えた、と彼は言う。古英語の学者であったトールキンは、ベーオウルフはその文学的価値で読まれるべきだと論じた。より良い翻訳が「埃
をかぶった退屈だが偉大な物語としてではなく、それが本当にあるがままの姿で教える」ことを可能にした、とドラウトは言う。
トールキン絡みが、ベーオウルフがいきなり流行ったことと関係あるかもしれない。『指輪物語』の作者はベーオウルフ的なアングロ・サクソンの神話でこの本
を満たしたーー『ロード・オブ・ザ・リング』の映画もそうだった。この映画は世界中で30億ドル近くの収益を上げた。
実際、叙事詩的映画はもうかるというのは、米国では必ずしもそうではない。ホメロスの『イーリアス』に基づき、ブラッド・ピットが主演した(1億7千5百
万ドルの)大予算の時代劇『トロイ』は、2004年にさんざんこき下ろされ、国内では1億3千3百万ドルしか稼げなかった。しかし、世界中では5億ドル近
くの収益を上げた。
ベーオウルフが大衆娯楽に登場したのはこれが初めてではない。1998年に(ジョセフ・ファインズが英雄として)アニメのテレビ映画があったし、1999
年にはSFスタイルの映画があったが、どちらも大して影響は与えなかった。もっと最近ベーオウルフに注目する後押しが2000年にあった。アイルランドの
ノーベル賞詩人シーマス・ヒーニーが新しい翻訳を生み出し、これは好意的に迎えられ、また良く売れもした。
まだまだこれから、さらにベーオウルフが現われる。
*『ベーオウルフとグレンデル』:6月に [米国]
公開されたこのカナダの芸術的映画は、アイスランドで作られ、スコットランドの俳優ジェラード・バトラーがベーオウルフとして主演し、カナダ系のヴァイキ
ングの子孫ストゥーラ・ガナーソンが監督した。
*『グレンデル』:ザ・グレート・ビッグ・バッドの超越。6月に初演されたオペラは1971年のジョン・ガードナーの本『グレンデル』に基づく。これは怪
物の視点から物語を語ったものである。メゾ・ソプラノのデニス・グレイヴスがドラゴンとして主演するオペラは、『ライオン・キング』の女王ジュリー・タイ
モアが脚本と演出をし、彼女の連れ合いのエリオット・ゴールデンタールが作曲した。
*『ベーオウルフ:イェーアトの王子』: 2007年の予定で、ノルウェイや南アフリカで撮影する。これは、無名の配役でエミー賞をとった映画監督スコッ
ト・ウェグナーが指揮を執る。彼は物語を書き直し、ベーオウルフをイェーアト族と結婚したアフリカ探検家の息子として、2つの文化の間に囚われた者として
いる。
*『ベーオウルフ』:これも2007年の予定で、この叙事詩のロバート・ゼメリック版は、彼の『ポーラー・エクスプレス』で用いたパフォーマンス・キャプ
チャー技術を用いる。ジョリーと(グレンデルに苦しめられるデンマーク王として)ホプキンスに加え、配役にはベーオウルフにレイ・ウィンストン、グレンデ
ルにクリスピン・グローヴァーが入っている。