Marie Claire -UK  2008年10月号

「ぼくが? 浮気な男だって? 非難されるだけのことはある!」

古代剣戟もの 『300』で筋肉を収縮させたかと思えば、『P.S. アイラヴユー』でわたしたちを泣かせるなど、ジェラード・バトラーとはこうだとはっきり定義できない。

デイモン・シソン記、写真 パトリック・フレイザー


ロンドンのソーホーのホテルのスイートへのドア、そこから怒ったスコットランド人の声がどなった。「いやだ! このインタヴューはやらない。帰れって言っ てくれ!」数秒後――ひどく心配になったわたしには、とても長い時間だったが――にんまりとした顔が現れた。「ジョークだよ!」と、ジェラード・バトラー が暖かくわたしの手を握って笑った。

こういったエクセントリックな前置きは、標準的な型にはまったハリウッド的ふるまい方からかけ離れた俳優にはよくあることだ。大抵のスターは、インタ ヴューは形だけですませ、できるだけ人間的な面を見せないようにするのだが、バトラーはわたしが出会った中で最も率直なAリスターだ。

驚異的な大ヒットを飛ばした『300』での粗野な役ほどには磨きあげて筋骨たくましくはないが、それでもバトラーは熊のような大男だ――6フィート2イン チ[188センチ]で、 英雄のように均斉がとれている。これが、彼がフン族のアッチラやベーオウルフのようなたくましい役に惹かれ、男女を問わず観客に人気がある訳を明かしてく れるだろう。

ナオミ・キャンベルやもっと最近ではキャメロン・ディアスなどと噂になったが、彼はロリータというパグ犬とニュー・ヨークで独り住まいをしている。(「わ かってるよ。もっと男っぽい犬を飼っていることを期待してるんだろう。でも、深い所では、ぼくはすごく感傷的なんだよ」と彼は笑った。)

グラスゴー近郊のペイズリーの出身で、バトラーは2歳の時に両親が別れてからは、母に育てられた。10代の後半まで(カナダに住んでいた)父とは連絡がな く、ほどなく父は癌で亡くなり、バトラーによれば、その喪失が彼の感情的に荒れ狂った20代の一因となった。

38歳の今では、バトラーは1997年にアルコールをやめ、その生き生きとした行ないから彼は真面目だと思われているので、このことは非常に分別のある転 換だと人に感銘を与える。彼自身の説明によると、自己破壊的な酒飲みだったのだそうだ。グラスゴー大学を法律専攻で卒業したが、上司は彼が二日酔いで仕事 に来るのにうんざりして、司法修習生としての最初の仕事をクビになった。

そのときようやく、彼は役者になりたいという子供の頃の夢を追う気になり、ついには『トゥームレイダ−2』でアンジェリーナ・ジョリーを上回ることを証明 し、『P.S. アイラヴユー』ではわたしたちの心の琴線に強く触れた。しかし、彼を特徴づける演技はやはり『300』での筋肉で固まったスパルタ王レオニダスであり、そ の腹筋のあまりの見事さに、招かれて『メンズ・ヘルス』誌の表紙を飾った。

今バトラーは、ガイ・リッチーの新作映画RocknRolla でスクリーンに出ようとしている。そこでは彼は、タンディ・ニュートンの相手役でワン・ツーというチャーミングな犯罪者を演じている。RocknRolla はリッチーにとっては、若き英国の才能の精鋭による出演を得て型に戻ることである。また、おそらくスクリーンで目にするもっとも簡潔なセックス・シーン (ほんの一瞬のイメージを重ね合わせてある)を誇っている。どうしてそういうことになったのかをバトラーに尋ねることから、インタヴューを始めた。

GB:ぼくは酷い喉 の感染をおこしていて、タンディにとってはぼくにキスするのは良いことじゃなかっただろうね。そこでガイがこう言った。「よし、こうしよう――そこに入っ て、彼女のファスナーを下ろすんだ!」そしてその日、ぼくはタンディがどれほどプロなのかを自覚したんだ。彼女はこう言った。「OK、いいわ。わたしはオ ルガスムの顔をするわ」彼女は立ち上がると、ただ「あー、あ、あー」ってね。ぼくは「ちくしょう、いいぞ!」ってなもんだよ。実に感銘を受けたね。でもそ れがタンディなんだ――毎回そのことを話して、すごい子だよ。

Q:あなたの病気と言えば、マドンナが看病してくれたとか。

GB:ああ、ある晩 撮影の間に、マドンナが現れてこう言ったんだ。「あなたが病気の人?」
 「そう」
 「良くなりたい?」
 「うん」
 「OK、言う通りにして」
 この時点でぼくは小さな子供みたいにくすくす笑っていて、彼女は「これ、やりたいの、やりたくないの?」って言うから、「ああ、やるよ――だって、あな たはマドンナなんだから!」
 すると彼女は、ぞろっと道具を並べて、言うんだ。「これを2つ飲んで、これを1つ飲んで、なんたらかんたら」

Q:で、良くなりましたか?

GB:いや、全然効 かなかった。(笑い)

Q:ペイズリー育ちですが、粗暴だって評判のある所ですよね。

GB:あそこははっ きりと労働者階級の地域で、いかれた連中がたくさん住んでいる。たぶんぼくのパーソナリティの90%は、ぼくが育った所で育ったことから来ていて、そこで は世慣れて、ちょいとばかり喧嘩ができて、しかも調停役でもなくてはならないんだ。

Q:文字通り喧嘩をしなくてはならなかった?

GB:ああ、そうだ よ。

Q:だれかに「グラスゴー・キス」(頭突き)をくらわせたことは?

GB:ああ、一度あ るよ。ぼくが司法修習生のとき、法学会の会長だったんだ。で、この酔っぱらった奴がぼくたちの催しの1つに押し掛けて来た。仮装大会だったんだ――ぼくは ヴァイキングで、ヘルメットからは角が突き出ていて、毛皮のブーツにケープを着けていた。ぼくの友人たちはみんなこいつをぶちのめしたんで、ぼくが彼らを 引き離した。すると彼らの一人が「こいつは女を叩いたんだ」と言った。ぼくはそいつを外へ連れ出して、そのときそいつはぼくの喉をつかんだんで、奴にこれ までで最高のグラスゴー・キスをくらわしてやったよ。奴は「殺してやる!」ってぎゃあぎゃあ言った。ぼくは怒りまくって、こう言ったんだよ。「いいか、 だったらおれの顔をよく覚えておけ!」ってね。奴とその友人がショットガンを持って運転して回って、「どんな奴だった?」って言うと、彼が「毛皮のブーツ に角があって・・・」って言っている様を空想するよ。

Q:あなたの役の一つの衣装みたいですね。

GB:そうだね、た ぶん『300』をみて「この野郎だ!」って言ったかもね。

Q:『300』以来、皆があなたを違った風に扱いますか?

GB:その通り。 違ったリーグに飛び込んだ気分だよ。恩恵を必要とする側から与える側にね。でもある点で、あんまり自由じゃない。ぼくはいつも、注目を浴びないという能 力、やりたいことをする能力を愛してきた。そういう変化はいきなりだね。

Q:20代でお酒をやめましたね。どうしてです?

GB:ぼくはまるっ きり手に負えなかった。壁に頭突きをかましたり、壁をぶんなぐったり。ぼくはジキル博士とハイド氏みたいなもんだった。でもまた、ミスター・エンターテイ ニングでもあったんだ。みんながよく言ったよ。「君って楽しいね!」
でも、明らかに自殺願望があった。あるとき朝の4時にパリで目が覚めたら、パーティをやっていた所から5マイル[約8キロ]の所だった。頭や顔、腕には深い切り傷があり、服 は血だらけだった。未だに、何があったのかわからない。

Q:あなたのお父さんの死がその問題の一因だと思いますか?

GB:そうだ。でも ね、世の中の大部分は、ぼくが経験したことを経験しているんだ。ぼくはどんなことでも、ぼくを精神的に混乱させるような段階にあったんだ。言い訳を探して いたんだね。

Q:あなたの人生のもっと最近の出来事を見てみると、あなたとキャメロン・ディアス とのことはどうなんですか?

GB:キャメロン・ ディアスは友だちの一人で、彼女は本当に特別な人だ。素晴らしいよ。でも、何も起きてはいないよ。ただ、ある晩たくさんの人たちとディナーをとっていた。 それから、別の晩には、全く偶然に出会ったんだ。それから別の晩には、ぼくたちは隣り合ったテーブルで、別々の誕生パーティをしていた。するといきなりマ スコミが、ぼくたちが付き合っているって言ってさ。こういうことがどういう風に広まるかにびっくりしたね。

Q:独身ですか?

GB:ニュー・ヨー クの女の子と付き合っている。それをなんて呼んで良いのかわからないな。ぼくはこうだとはっきりさせるのが難しい男なんだよ。

Q:あなたはものすごい浮気者だという評判ですが。

GB:(大笑いし て)群れているだけで、みんなそう思うんだよ。時々人がぼくを浮気者だと呼ぶと、こう思うんだよ。「どっちにしても、君には興味ないよ」ってね。でも、ま たある時には、浮気者だって非難されるだけのことはある。誰かとお喋りしながら、「これはうまくいくぞ」って思っている時がある。すると、突然彼女の夫が 現れるんだよ。

Q:独身でいることを楽しんでいますか?

GB:だんだん独身 を楽しめなくなって来ている。でも、それだけのことで身を固める気はないよ。ぼくはちょっとどっちつかずなんだ。いろんな異性と付き合うことにあんまりわ くわくしないんだけど、まだ身を固める準備はできていない。ぼくは確かに、もっと休暇の時間を取り始めたいと感じているんだ――そして、そういう風にして いなかったなら、ここにはいなかっただろうね――でも、今はもっと冒険をしたいんだ、それがどういうことになるとしてもね。


RocknRolla は今月公開になる。

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