メモランダム♯01

機内上映ビデオ


1999年6月にノースウェスト航空に乗ったら、エコノミー・クラスの機内では「グッドナイト・ムーン(Stepmom)」と「ジョー・ブラックをよろしく(Meet Joe Black)」の2本が上映された。どちらもビデオで、シネスコ・サイズのトリミング版(ほぼオリジナルの半分しか見えない)。しかも機内を暗くしても、ろくによく見えない。色ズレもあるし、ピントも甘い。画面が小さいから、字幕の文字は大きいのに、そのせいでよく読みとれない(まっ、どっちにしても中国語の字幕だったので、問題はなかったが)。それでも上映がないよりは、退屈を紛らわすことができるからずっといい。それに音声はオリジナルの英語か、日本語の吹き替えが選べたし。
「グッドナイト・ムーン」は初めてみたのでわからなかったが、「ジョー・ブラックをよろしく」は明らかにカットされていた。そのため、ブラピとクレア・フォラーニの単純なラブ・ストーリーになってしまっていた。
アンソニー・ホプキンスの社長の跡を狙うあくどい奴らとのビジネスの駆け引きもなければ、「ロマンスと言うよりはファンタジーで、シリアスと言うよりはコメディタッチ」という味も希薄になっていた。おかしいなあと思っていたら、ラストのスタッフ・クレジットを見て納得がいった。「セント・オブ・ウーマン(Scent of Woman)」同様、この機内上映版も監督がアラン・スミシーになっていたのだ。マーチン・ブレスト監督は一見軽い作品を作るけれど、すべては緻密な計算に基づいていて、そのどれかが欠けても作品は成立しないという、強い信念を持っているのだと思う。作風がコメディであろうと、れっきとしたアートで、彼はアーティスト。結構ガンコなのでしょう。


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