メモランダム♯07

マクガフィン



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 マクガフィンというのはフランソワ・トリュフォーがアルフレッド・ヒッチコックにインタビューしてまとめた「映画術」(晶文社)という本の中で説明されている。

 ヒッチコックが答えて言う、ラディヤード・キプリングという小説家がいて、彼の書く冒険小説ではいつもスパイが砦の地図を盗むのだと。そしてその地図を盗むのをマクガフィンといったというのである。以後、冒険小説や活劇では重要書類を盗み出すことをマクガフィンと呼ぶようになったらしい。

 おおもとはスコットランドのコントからきているのではないかと、ヒッチコックは言っている。一人が「あの棚の上の荷物は何だ」と聞く。もう一人が答えて「マクガフィンさ」「何だそれは」「ハイランドでライオンを捕まえる道具さ」「ハイランドにはライオンはいないだろ」「じゃ、あれはマクガフィンじゃないな」。つまり、アクガフィンは何でもないもの、だと。

 要するに、映画を語るためにマクガフィンを登場させるが、それが何であるかを描くと映画が複雑になるだけ。よくできた映画なら、描かれている人物の状況に気を取られてマクガフィンが何であるかなど忘れてしまうというのだ。

 「北北西に進路を取れ(North by Northwest・1959・米)」で、最後に追いつめられるスパイたちは、何をスパイしに来ているのか明かされない。ただ国家機密を輸出入しているとだけ明かされる。そんなのスパイなんだから、当たり前だろ!! と、つまり、これがマクガフィン。あの映画で、誰もそれを気にしなかったでしょ?

 ヒッチコックは言う、ヘンに理屈っぽいヤツがその内容や真相を解明しようとするんだと。ドキッ。


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