メモランダム♯07



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連発銃の撃ち方

【フル・オートマチック・シューティング】


 たとえば、実戦の場にあっても、撃つとき以外は引き金から指を離すというのは、1980年代に入るまでは広く知られなかった考え方だ。実弾が入った銃の引き金に指をかけたままにしていると、緊張のあまり、あるいは何かのアクシデントで、意図しないで引き金を引いてしまう危険があるのだ。

 日本では、よくこれを「暴発」と言うが、引き金に指をかけていたら銃弾が出ることもあるのは当たり前。それは単なる銃の取扱上のミスでしかない。事故と言うより、故意に近い重大な過ちだ。「暴発」というのは、引き金に指をかけていないのに、部品の破損や摩耗、あるいは銃の落下(自分の不注意などは問題外だが)などが原因で銃弾を発射してしまうこと。特にアメリカでは、1980年代中ころ以降、いかなる場合でも撃つとき以外は引き金から指を離すというのが常識だ。

 2000年の先頃、アメリカでキューバから亡命した少年を父親の元に返すというので、特殊部隊が親戚の元から少年の救出作戦を展開したときの写真が発表された。それを見ると、少年を発見した瞬間の特殊部隊の隊員は、緊迫した瞬間であるにもかかわらず、ちゃんと手に持ったMP5サブマシンガンの引き金から指を外していた。プロはこうでなくては。

 同様に、フル・オート射撃でも引き金を引きっぱなしにしないというのはもっと早く、1980年代に入ってすぐ言われ出した。フル・オート射撃時の引き金の弾き方は、短く引いて早くもどすのが基本。ターゲットが横に3つ並んでいたとしたら、連発でなぎ払うように横に流し撃ちするのではなくて、数発を1つのターゲットに打ち込んだら引き金を一端もどし、次のターゲットに狙いを付けてから、改めて数発を撃ち込むというやり方をする。フル・オート射撃であっても、3回引き金を弾き直すのだ。

 特に最近は発射弾数をできるだけ少なくする傾向があり、1回の引きで3発しか連続して出ない3バーストというメカを組み込む銃も増えてきた。警察や軍の特殊部隊から2バーストという要求も出ており、実際そういう銃が売られている(もちろん市販はない)。

 こういう銃は、まず1発目をはずさないために、人間の体の一番大きい部分、ボディを狙って撃つ。そして2発目、3発目は反動で銃口が跳ね上がるのを計算に入れて、首から頭部へと撃ち上げる。なぜなら、敵が防弾チョッキを着ていることもあるからで、胴体にしか銃弾を撃ち込んでいないと、思わぬ逆襲をくらうことがあるのだ。

 拳銃でもこれをやることがあって、ダブル・タップと呼ばれる撃ち方がそれ。1発目を胸に。2発目を頭に撃ち込む。しかも、タタンと素早く2連射する。それのマシンガン版というわけ。

 足許から撃ち上げると、まずムダ弾が多い。なんでも節約する時代、これはもうやらない。そして、銃口は反動で真上に上がろうとするから、急にターゲットが動いて左右どちらかに銃を振りたいというときでも、やりにくいのだ。

 また、アメリカ海軍特殊部隊シールズなどの訓練ビデオを見ると、セレクターをフル・オートにしていても、ほぼ正確に3発連射すると引き金をもどしている。まるで機械のように正確に、3連射の感覚が体に染みこんでいるらしい。そのため、3発短連射機能の付いた銃もあるのに、わざわざセミ・オートとフル・オートしかないモデルを使っている。正確にコントロールできるので、そんな機能は必要ないのだ。さすがエリート中のエリートが集まるシールズ。

 たとえば「人狼」の撃ち方はどうか。主力火器であるMG42は分隊支援火器なので、そもそもあのように携帯して近距離で撃ち合うために使う銃ではない。どちらかと言えば、拠点からフル・オートで引き金を引きっぱなしにして、銃弾を雨あられと降り注がせ、敵をその場に釘付けにするためのものだ。あるいは航空機や軽装甲車両、トーチカなどに向けて使うものだ。ただ、映画的な効果は抜群で、凶暴で重々しい感じが良く出ていたと思う。

 リアルと映画は違うというお話。


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