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音楽の複数次元2009

コーネリアス・カーデュー〜大学と論文
Cornelius Cardew
"The Great Learning" and "Treatise"

企画足立智美
制作・主催ナヤ・コレクティブ
共同主催足立智美
会場協力アサヒビール株式会社
助成芸術文化振興基金助成事業、財団法人アサヒビール芸術文化財団、財団法人朝日新聞文化財団

   
   

 コーネリアス・カーデュー(1936-1981)はイギリスの前衛音楽の旗手として出発しながら、ジョン・ケージの影響から、実験的な作風に変わり、即興演奏グループAMMに参加し、さまざまな音楽家、非音楽家が自由に出入りする実験アンサンブル「スクラッチ・オーケストラ」を1969年に設立、その後マルクス主義、毛沢東主義の立場から前衛音楽、実験音楽を批判、人民のための音楽を書くことを目指しました。イギリスにおける実験音楽の主導者としてその活動は、マイケル・ナイマンやブライアン・イーノをはじめ、後代に大きな影響を与えました。極端ともいえる振れ幅と、成否も含め、その軌跡からは音楽と社会をめぐる最も先鋭的な思考をうかがうことができます。

 このコンサートでは、カーデューの実験音楽期の極限を示しているといえる、2つの巨大な作品、《論文》と《大学》をとりあげます。

 ウィトゲンシュタインの哲学から影響を受けた《論文》(1963-67)は一切の言葉の指示を含まない193ページの図形楽譜による作品です。記号とは何か、楽譜とは何か、演奏とは何か、という音楽における極めて本質的な問題を演奏者に突きつけるだけではなく、コミュニケーションの可能性をめぐる社会的な問いかけもそこには含まれています。

 儒教の書『大学』の最初の7つのパラグラフをベースにした《大学》(1968-1970)は、必ずしも音楽家ではない人たちによる大規模なオーケストラのために書かれています。原文の漢字をさまざまな音楽的、視覚的要素に変換したり、エズラ・パウンドの訳による英文を叫び、唱える合唱を用いた破格の作品です。興味さえあれば誰でも参加できるワークショップ形式による芸術制作の先駆といえるだけでなく、誰でも持っている声という楽器に着目し、そこから異様な音楽を作り上げています。

 とにかく滅多なことでは演奏できないこれらの音楽に一度正面から取り組み、何をそこから得ることができるのか、皆様の立ち会いをお待ちしています。(足立智美)

 
       

プログラム(すべて作曲:コーネリアス・カーデュー)

"The Great Learning"(大学)からパラグラフ4、パラグラフ7
有馬純寿河合拓始、久保田翠(キーボード、声)
足立智美、あっこ、荒井真一池田拓実今井和雄、太田収紀、小笠原真美、がっきぃ、
加藤チャーリー千晴、カン・ユージン、木下毅人、佐藤菜穂子、佐藤佑樹、しばてつ、島田圭子、
鈴木光介、鈴木悦久、砂川佳代子、関根麻郎、竹田賢一、千原ソウヤ、
中村ゆい、中村亮一、中保佐和子、南波冴、日高和子、深澤倫子、藤村匠、MAYA、水林充、
三宅ヤスコ、Mujika Easel、横手亜梨沙、米本篤、渡辺タケシ (声、打楽器)

"Treatise"(論文)
足立智美(声、エレクトロニクス、自作楽器)、池田拓実(コンピュータ)、鈴木悦久(打楽器)、
田中悠美子(三味線、声)

※五十音順
※出演者は変更される可能性があります。

日程:2009年7月5日(日)18:00開演(17:30開場)
会場:アサヒ・アートスクエア (浅草)
予約2500円、当日2800円

予約券の受付は終了いたしました。当日券は17:00より若干枚数を発売いたします。

  足立智美 Adachi Tomomi
http://www.adachitomomi.com

パフォーマー/作曲家。ヴォイス、各種センサー、コンピュータ、自作楽器によるソロ演奏、音響詩、舞台音楽など幅広い領域で活動し、ニコラス・コリンズ、高橋悠治、坂田明、一柳慧、カール・ストーン、伊藤キムらと共演。インスタレーション作家、映像作家としても活動。ポンピドゥーセンター(パリ)、STEIM(アムステルダム)など世界各地で公演。2007年、ジョン・ケージの『ユーロペラ5』の日本初演の演出をてがける。
 
 
有馬純寿 Arima Sumihisa
http://www.40nen.jp/arima/

1965年生まれ。エレクトロニクスやコンピュータを用いた音響表現を中心に、現代音楽、ノイズ・ミュージック、即興演奏などジャンルを横断する活動を展開。また室内アンサンブルのメンバーやソリストとして、これまでに多くの電子音響を伴う現代音楽作品の演奏を手がけ高い評価を得ている。会田誠、小沢剛らとの「昭和40年会」をはじめ美術家とのコラボレーションも多く、国内外の展覧会にも多数参加している。本シリーズの「音楽と集団、クリスチャン・ウォルフ」には打楽器で参加。現在、帝塚山学院大学人間科学部准教授。
 
  池田拓実 Ikeda Takumi
http://www.myspace.com/dedicto

オーディオプログラミング言語を用いた音楽制作、ライブを主として活動している。コンテンポラリーダンス作品のための作曲/演奏、パフォーマーとして「方法マシン」参加を経て、現在はソロおよびセッションでの演奏の他、器楽曲の作曲、川端龍太・久保田晃弘・梶井利彦との音響/即興バンド「ToneBlues」など。最近のソロ演奏では自作のグラフィカルユーザインターフェイスを用いた幾何学的音響構成、演奏操作の可視化を模索。
  河合拓始 Kawai Takuji
http://www.sepia.dti.ne.jp/kawai/

ピアニスト/即興演奏家/作曲家。ソロによる自作や現代音楽、即興音楽の演奏を中心に、アンサンブルでの即興演奏、ダンスや朗読など他ジャンルとの共同作業も長年にわたり多数行なっている。CDに「ピアノプラトー」「偶対と水」など。委嘱作曲作品として室内オーケストラ曲、パイプオルガン曲など。2008年秋、欧州演奏旅行。最近ではみずから言葉や身体を併用するパフォーマンスも行なっている。1991年東京芸術大学大学院音楽学専攻修了。
 
  久保田翠 Kubota Midori

1979年札幌市生まれ。桐朋学園大学音楽学部付属こどものための音楽教室にてピアノ.ソルフェージュ等学ぶ。東京芸術大学音楽学部作曲科を経て東京大学大学院総合文化研究科修士課程に進学、修士論文『近藤譲の音楽における「一音」の布置  〜器楽アンサンブル作品を中心に〜』を執筆。現在は同大学院博士課程に在籍中。 これまでに南聡、尾高惇忠、安良岡章夫、近藤譲らの各氏に作曲を師事。日本現代音楽協会、北海道作曲家協会会員。作・編曲、ピアノ・オルガン演奏、演奏会企画など広く活動を行っている。
  鈴木悦久 Suzuki Yoshihisa
http://www.iamas.ac.jp/~yoshs02/

1975年横浜市生まれ。 打楽器奏者、サウンドパフォーマー。フィードバックノイズによるパフォーマンスや、ルール・ベースを主とする自作曲の発表、音と遊びのワークショップを行うなど、活動は多岐に渡る。Team SZK 代表。 ARS Electronica 2006 デジタルミュージック部門Honorary Mention 受賞(Mimiz)。第3回AACパフォーマンス道場優秀賞受賞。
  田中悠美子 Tanaka Yumiko
http://www.japanimprov.com/ytanaka/ytanakaj/

文楽の人間国宝、故・野澤錦糸に義太夫三味線を、女流義太夫の人間国宝、竹本駒之助に義太夫節の語りを師事。国内外における現代音楽作品の演奏、即興演奏、シアター作品におけるパフォーマンス、ダンスとのコラボレーションなど、実験的な表現活動を通して、三味線や日本の声の可能性を検証中。東京芸術大学音楽研究科修士課程修了。1990年度芸術選奨文部大臣新人賞受賞。1999年日本音楽コンクール委員会特別賞受賞。2004年ソロCD‘tayutauta’リリース。2006年ACCのフェローシップによりNYにてリサーチ活動。08年度文化庁新進芸術家海外留学特別派遣によりNYにて研修。
     
 
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