中ザワヒデキ音楽作品集 レコーディング日記 by 制作F

 

 
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9月5日

「三声の五十音インベンション」「三声の五十音カノン」全曲の再収録。前回の収録に、微妙なリズムのズレが発見されたため、再び集まっていただくことになった。足立氏が指揮をとる。
「元気に!」という中ザワさんのかけ声勇ましく、池田さん、鈴木さん、安野さんも1ヶ月ちょっとのブランクをまったく感じさせない。逆にこのブランクが新鮮だったのかも。
全5曲、多くても3テイクでOKが出る。3時間の予定が2時間で終わってしまい、セッションでもしようか、と軽くドラムやピアノで遊んだり。
最後のおやつは中ザワさんのお馴染み「鉢の家」の最中と、池田さんの金沢土産の飴でした。

かくて無事にすべての録音が終了。これから足立氏がマスタリングに入る。発売は10月を予定。

みなさん、お疲れさまでした! 完成を楽しみにしていてください。

   
 

 
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8月2日

ミックス作業のため再びGOK SOUNDヘ。くつろいだ雰囲気のミックスルームで作業は滞り無く進み、この日ばかりは予定通りに終了。

データの落とし込み待つ間、近所の沖縄料理店で軽く祝杯をあげた。といいつつも、「三声」関係の録り直しがこの時点で決定しており、再録音を9月に行うことになっている。やはり一筋縄ではいかない模様。

この日のおやつは中ザワさんご贔屓のグミ各種。

 
 

 
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7月25日

録音も最終回。今日は吉祥寺GOK SOUNDにて、トランペットと十三絃箏、マリンバ等の楽器を主に収録する予定。
数々のジャズ系、オルタナティブ系の録音で知られるGOK SOUND。エンジニアはスタジオ所属の柳田亮二さんにお願いした。音響卓の前でうれしそうな中ザワさんをご覧下さい。

まずは、曽我部清典さんのトランペットによる「126個の上行音型から成る楽曲」等3曲。数カ所に立てたマイク位置の微妙に調整し、プロデューサーの足立氏と曽我部氏、柳田さんとでバランスをつくっていく。

曽我部さんの収録中に、西陽子さんと鈴木悦久さんが到着。鈴木さんには西さんの箏も車で運んでいただいた。合間をみて箏とマリンバを組立てて行く。

西さんの収録は「五部から成る十三絃箏のためのアフター・ハノン」全3曲。スタジオに蚊が舞い込んでしまい、演奏中の西さんの手にとまるハプニングも(かなり我慢して弾いてくださった西さんでしたが、さすがにパチン!)。

鈴木さんのマリンバは「1から256まで」と、足立氏が声で参加する「順序」第1曲、第2曲。マリンバの特定音にスタジオの照明金具が共鳴してしまい、急遽、別の部屋へ移動する。「順序」では声とマリンバを別に録る(後に、左右に完全に2つを振るミックス作業が行われた)。

朝11時から始めて、音を録り終えたのは予定を大きく過ぎて深夜の2時。「それがあたりまえですよー」と最後まで笑顔でおつきあいいただいた柳田さん、ありがとうございました。ミックス作業は日を改めることに。

恒例のおやつは、中ザワさんの青森土産(リンゴ生菓子)と西さんのミスタードーナッツ2本だての豪華版。その他、栄養ドリンク数本に何杯ものコーヒー!

      
   
 
 

 
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7月23日 『中ザワヒデキ音楽作品展』ライブ本番(於:渋谷アップリンク・ファクトリー)

CD録音完了に先立ってライブを開催。立ち見の出る大盛況。
第一部は今回のCDでの録り下ろしメンバーによる演奏。むんむんの熱気のなかで、冷静かつ驚異の演奏が披露されました。五十音を使った声の作品と、楽音を使った楽器の作品を交互に上演、中ザワ音楽作品の諸相が浮かび上がります。
第二部は中ザワ氏本人による「バカCG」アニメーションのデモ上映。緊張のはりつめた第1部とは対照的に、客席から笑いの絶えない愉快な時間となりました。音響で使われた「えんすう」「すうしませう」など、謎の言葉がその後一部で話題を呼ぶことも。
満席のお客様、ありがとうございました。演奏者のみなさん、中ザワさん、監修の足立さん、アップリンクの方々、お疲れさまでした。 録音完了まで、がんばりましょう!

    
  
 
 

 
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7月11日

「126個の上行音型から成る楽曲」等全3曲のリハーサル。
演奏は曽我部清典さん(トランペット)。中ザワヒデキ氏、足立智美氏の立会。
曽我部さんは2002年の初演の際も演奏されており、4年ぶりの演奏となった。あらためて、テンポの確認と、アーティキュレーションをいくつか試して曲を固めていく。1つの音から始まって一定のパターンで少しずつ変わっていく音形がスリリング。次の音形が予測できるので、そこも聴いていて楽しいところ。粒のきわだったトランペットの音色で、アルゴリズムがビビッドに体感できるなあ、と感心していると、突然曽我部さんがカバンから中ザワさんの著書『西洋画人列伝』をとりだして「これ面白いよね!」、リハーサルからちょいと脱線してビットマップ談義。余裕の1時間でした。今日の中ザワさん差し入れおやつはしっとりバターケーキ。

          
    
 

 曽我部さんのリハーサルから数時間おいて、「1から256まで」「順序」のリハーサル。
演奏は鈴木悦久さん(マリンバ)。「順序」では足立智美氏が声で参加。
「1から256まで」は、MIDIピアノによる録音はあるが、楽器による演奏は今回が世界初演。マリンバ特有の暖かみのある音で演奏されるとまったく違った印象だ。この曲は1から256番までの小節番号を因数分解して音符に当てはめたもので、音が一気に何オクターブもとんだりするため、鈴木さんはかなり激しい動きを要求される。鈴木さんのマリンバは高音のFまである特注品だが、今回の曲のためにさらに#Fの鍵盤を発注してくれたそうだ。感謝。
続く「順序」は、この6月にPreAvaによって委嘱初演されたばかりの新曲(詩:松井茂)。今回は足立氏の声と鈴木氏のマリンバで挑戦する。数字のみで表記されている譜面を見ながら弾いていく鈴木さん。念のためホワイトボードに五線譜にしたものを書いたが、数字だけの方がやりやすい様子だ。「方法マシン魂」と中ザワさんがつぶやく。

 
 
 

 
さらに同日、夜には「三声の五十音カノン」「三声の五十音インベンション」の録音。
演奏は池田拓実さん、鈴木悦久さん、安野太郎さん(声)。合わせリハーサルはすでに済ませており、本日は録音のみ。
三人ともパフォーマンス集団「方法マシン」のメンバーで、作曲家であり、さらに打楽器奏者(これは偶然)でもあるだけあって、かなり難易度の高いカノンもすぐにこなせるのはさすが。今日は録音ということで緊張もあったのか、NGが結構でたが、それでも迫力のある男声合唱(?)が録音された。
(ちなみにウェブやチラシに掲載されている譜面は「カノン」の1曲。この譜面をみて、演奏を想像してみてください)
2時間で5曲を無事収録。近所のファミレスでおつかれさま会をしていると、「中ザワさん作品の演奏は難しい」という発言に、「ボクの曲なんですが、(アルゴリズムに従っているだけなので)ボクのせいじゃないんです」と困ったような、ちょっとニンマリするような顔をする中ザワさん。みなさん、お疲れさまでした。

   
 

 

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7月7日

「二声の五十音インヴェンション」全3曲「二声の五十音カノン」全4曲、「五十音モノフォニー」のリハーサルと録音。
演奏はさかいれいしうさん(声)、足立智美(声)。中ザワヒデキ氏立会。
4時間で録音まで終わらせるという無謀なスケジュールだったが、ぴったりの時間で完了。みなさんさすがです。
五十音のみで構成された譜面を食い入るように見つめる様子が印象的。なにせ「ゑ」「ゐ」まで入った五十音をかなりの速度で、拍に合わせて読みこなすのだ。この緊張感は相当なもの。
録音も担当する足立氏が、さかいさんの「倍音のきれいなムラのない声」に驚いていた。
合間に中ザワさん差し入れの最中をおいしくいただく。

 
  
 
 

 
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7月6日

十三絃箏の西陽子さんとのリハーサル。作曲者の中ザワヒデキ氏と監修の足立智美氏が立ち会った。
まずは雑談がてら、西さんより箏の古典の譜面の書き方、読み方を教えていただく。驚きの連続!
続いて「五部から成る十三絃箏のためのアフター・ハノン」全3曲のリハーサル。
数字のみで構成された楽譜に、西さんが「スクイ」など箏の技法を提案しながら曲を完成させて行くのだが、
そのめくるめく技法の多様さと表現の豊かさに圧倒される。
方法音楽の厳格なアルゴリズムに箏の豊穰な音色が拮抗する、ただごとではないスリリングな時間!