第4回 <番外編>新型インフルエンザについて(2009.9.4.)





新型インフルエンザが流行(はや)り出しています。
みなさんおよびみなさんのご家族はお元気でしょうか?
もし罹患された場合には、無理をせずくれぐれもご自愛ください。

また感染防止を怠らないようご注意のほどお願い申し上げます。

こんなことを申し述べるのも、感染の拡大にともない企業における対策が一様に強化されつつあるからです。もうただごとではない段階です。
幸い、今回の新型インフルエンザは「弱毒性」ということで、感染率・感染力は高いもののかつてのスペイン風邪のような甚大な被害を引き起こすことはなさそうです。しかし乳幼児・老人・妊婦・特定の慢性疾患を持つ方の死亡率が高いということで、油断は絶対にできません。
「自分は罹らない」と思うことがもっとも危険で、もちろん「罹らない努力を最大限行う」ことを前提に、「恐らく罹るだろう。そうなったときに家族や友人を巻き込まないためにどうしたら良いか」を真剣に考えていただきたく存じます。

わたしの会社でも数十ページに渡る詳細な対策マニュアルが広報され、感染予防と感染時の対応について、会社組織レベルでの対応が義務づけられました。もちろん家族も対象です。
残念ながら詳細は「社外秘」のため述べられませんが、最低限、下記の厚生労働省の広報資料レベルのことを「社会人の義務」として遵守する必要があると思います。

厚生労働省ホームページの「新型インフルエンザ」関連広報
(http://www-bm.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/inful_what.html)

わたしも今回、いろいろと勉強させていただいたので復習も含めて下記に示します。

今回の「新型インフルエンザ」はご存じのとおり、ブタインフルエンザが変異して人間と人間の間でも感染するようになったものです。H1N1型だそうです。

本来、トリインフルエンザもブタインフルエンザも稀に人間に感染しますが、その感染した人間から別の人間に感染することはありませんでした。
東南アジアで問題になっている強毒性のトリインフルエンザは死亡率60%台という恐ろしいものですが、この「人−人感染」を起こさないので拡大しないわけです。これはH5N1型です。

トリインフルエンザ(H5N1型) → 強毒性だが「人−人感染」なし
新型インフルエンザ(H1N1型) → 弱毒性で「人−人感染」あり

なぜこんなことが起きるのか...。

免疫とインフルエンザ・ウィルスの話は門外漢なので詳細は解らないのですが、どうも風邪のウィルスとかインフルエンザ・ウィルスは特性として突然変異を起こしやすい、
あるいは意図的に突然変異を起こしているようです。
(専門家の方がいたら是非一度レクチャをお願いします!)

周知のごとく、動物には免疫機能があって、一度その病気(ウィルス)に感染すると、生体防御機能がその情報をパターン認識して次回、同じ状況が発生したときにそのウィルスが増殖する前に攻撃して粉砕する、つまり「罹らない」ようになる、と思っています。だから麻疹(はしか)や水疱瘡は1度しか罹らない、と。

ところが風邪やインフルエンザのウィルスは突然変異することでこのパターン認識をすり抜けてしまう。生体防御機能が働かないので何度も罹る、ということ。

特にウィルスは細菌と違って、生きた細胞に侵入するまでは生物というよりは非生物(石ころみたいなものらしい)の状態なので致命的になるらしいです。
余談ですが、ウィルスは細胞内に侵入して活動するため、これを外部から攻撃すると細胞自体も破壊してしまう...だから、風邪やインフルエンザは対処療法で熱を下げたり腫れを引かせたりするしかないそうです。直接、薬が効くわけではない、と。だから本当の意味でウィルスを撃破する風邪薬だとかインフルエンザ薬が発明されたらノーベル賞確実...と子供の頃に教わりました。今も変わってないのでしょうね。

ではワクチンとは何か、といえばその該当する「ウィルスを弱らせて無害化」した物を作る。それを体内に注入して「生体防御機能にウィルスの情報をパターン認識させる」ことで、本物のウィルス侵入時に生体が攻撃・粉砕することを手助けするものです。決して直すものではないし、生体に依存するものです。

ですからワクチンを作る、ということは「弱った該当ウィルスを作る」ことで、別の型のウィルスでは意味がない。今回の場合にはH1N1型でないといけない。
だからすぐには作れない、という悪循環なわけです。

そろそろ限界なので、国立感染症研究所のホームページから一部抜粋させていただきましょう。ちょっと長い引用になりますが。
(http://www.nih.go.jp/niid/topics/influenza01.html)

そもそもインフルエンザ全般の話として「風邪と混同するなかれ」から始まるようです。
「インフルエンザは他のかぜ(普通感冒)にくらべて極めて危険な病気なのです。特に、65歳以上の高齢者、乳幼児、妊婦、さらに年齢を問わず呼吸器系や循環器系に慢性疾患を持つ患者、糖尿病などの慢性代謝性疾患、慢性腎不全など腎機能異常の患者、免疫低下状態の患者などでは、インフルエンザに罹患すると、入院を必要とする肺炎・気管支炎などの重篤な合併症がもたらされ、更には死亡する危険性が数倍から数百倍にも増加します。
 これらの人々はインフルエンザにおけるハイリスク(高危険)群とよばれます。」

また、ワクチン自体の製造方法がありました。

「現在のインフルエンザワクチンは、ワクチン製造用のインフルエンザウイルスを発育鶏卵に接種して増殖させ、漿尿液から精製・濃縮したウイルスをエーテルで部分分解し、更にホルマリンで不活化したものです。ウイルス粒子そのものを不活化した全粒子ワクチンと区別するために、HAワクチンと呼ばれています。」

やはり懸念したようなことが。ワクチンは万能ではない。

「ワクチン接種後に長期間にわたって強い感染防御免疫が誘導されるポリオワクチンや麻疹ワクチンとは異なり、インフルエンザワクチンは、ウイルスの感染やインフルエンザの発症を完全には防ぐことは出来ません。ここに現在のインフルエンザワクチンの限界があります。」
「しかし、後で述べるように、インフルエンザワクチンには、ハイリスク群がインフルエンザに罹患した場合に、肺炎等の重篤な合併症の出現や、入院、死亡などの危険性を軽減する効果が世界的にも広く認められています。世界保健機構(WHO)をはじめ世界各国がハイリスク群に対してワクチン接種を積極的に薦めている理由もここにあります。」

ここまでの情報を整理するとやはり「罹らないように予防する」が最優先で、「罹ったら二次感染を防ぐ」、そして「医療機関の指示に則り治療に専念する」ことでしょうね。

2009/09/04付けの日本経済新聞に下記の記事が載っています。

新型インフルエンザの流行シナリオ。

過去のインフルエンザ流行でウイルス感染者が実際に発症した割合である罹患(りかん)率を参考に、厚生労働省が8月末に推計した。罹患率が20%の場合、患者数は約2550万人で、うち約38万人が入院し重症者は約3万8000人に達する。通常の季節性と同じペースなら、9月下旬から10月上旬にピークを迎える見通しだ。


がんばって乗り切りましょう!

【閑話休題】

トリインフルエンザ(H5N1型) → 強毒性だが「人−人感染」なし

H5N1型が突然変異したらどうなるのでしょうか?
世界の医療機関が恐れているのがこれです。
「人−人感染」する強毒性インフルエンザはもういつ発生するか判らない状況だそうです。時間の問題という話も聞きます。

古い小説で恐縮ですが、小松左京著「復活の日」を思い出しました。
氏の代表作「日本沈没」に先立って確か1964年(昭39)に発表されたもので、80年代に角川映画(映画はヒドイ出来でで観る価値ないですが)にもなりましたから小耳に挟んだことのある方もいると思います。

ストーリーの概要はこうです。

東西冷戦のさなか、東側の某国で致死率100%に近い強毒性のインフルエンザ・ウィルスが生物化学兵器として作られます。
そのウィルスを搭載していた航空機がアルプス上空で消息を絶つ。
やがてヨーロッパ各国で爆発的にインフルエンザが流行し始める。このインフルエンザは発症から死亡にいたるまでの期間が極めて短く、たちまち数万人規模の死者が各国で出始める。
欧米医療機関は慌ててワクチンの開発に着手しますが、ここで信じられない事態が起きていることに気づきます。
この強毒性インフルエンザは、同時に家禽にも感染し、恐ろしい勢いでニワトリを殺し始めていました。ワクチンは鶏卵がないと生産できない!
対策がまったく間に合わないまま、強毒性インフルエンザは人の移動と物流に乗って世界中に蔓延(パンデミック)し、南極に残された一部の人々を除いてついに人類は滅亡にいたる...。

これが小説だけの話であることを切に祈ります。
                                                           −以上−