2008-08-06
http://www.purple.dti.ne.jp/hint/tw02/hekt.htm

電子キット組立の「ツボ」
by M.ISHIKAWA

もくじ→

   

● 概要

 ここでは,電子工作キットを組立てる時に留意すべき点をご案内します。

   

● 「ハンダ付け」に必要な道具

 「ハンダ付け」とは「溶接」の一種。一般的に「溶接」とは,対象の金属の接合部分を熱などで融かして接合することを言うらしいです。特に,接合する金属のほかに「溶着材」を用いた溶接のことを「ろう付け」と言い,その中でも融点の低い(450°C 以下)ものが「ハンダ」と呼ばれるらしいです。

ハンダ(線)
 そのハンダにも様々な種類がありますが,このサイトでする工作に使うものは,電子部品用の,比較的低い温度で使えるものが適当と思われます。購入前に,ハンダのパッケージに書かれた説明をよく読んだり,電子部品や工具の専門店なら,店員さんに聞いて,電子部品の工作用を購入するといいでしょう。

ハンダゴテ
 20W 前後のもので十分と思います。電子工作で使われる「半導体」部品は熱に弱いものが多いので,元々ワット数の高いコテは向きません。ただ,長くこのような工作に関わるようでしたら,少々高価ですが,ピストル型で,「引き金」を引くとワット数が上がるようになっている(たとえば,20W→90W など)コテがあると,「加熱」が早くて作業が手早く行えます。

コテ置き台
 ハンダゴテは熱くなるので,そのままむやみに置くと「火事」になります。何らかの台があったほうがいいです。短い時間なら,多少は燃えにくい「板材」の上で間に合うこともありますが,「絶対安心」はできません。できれば簡単なものでも専用のコテ台があったほうがいいでしょう。

ニッパ
 余分なリード線や,ビニルコードを切断するのに使用します。先が細く,また,片面が滑らかな(刃に「溝」がない)ものが使い易いです。

あると便利
 他に「あると便利」と思われるものとしては,「ピンセット」,「ワイヤー・ストリッパー※1」,「ラジオペンチ」,「ハンダ吸い取り器(線)※2」,部品を入れる「トレー(皿)」,「カッターナイフ」,「ねじ回し」など。
   ※1
ビニルコードの皮をむく器具。最近「百円均一店」で見かけるのでオドロキ。
   ※2
「ハンダの付け過ぎ」や「部品の付け替え」などの時に,不要なハンダを取り除くもの。機械式ピストンの「吸気」で吸い取るものと,細い銅線を編んだ帯に吸い取らせるものなどがあります。


   

● 組立手順

 キットの組立は,おおまかには以下のような手順で進めます。

  1. 部品の確認(→詳細)
  2. 基板への部品の取付(→詳細)
  3. ケース組込み前にソケットに挿し込んでおくべき IC などの部品の取付け
  4. ケースへの組込み
  5. 3. 以外の IC などの部品の取付け
  6. 「コネクタ」接続部品の取付
  7. 動作確認(→詳細)

◆ 部品の確認

 まずは,部品が揃っているかどうか確認します。部品の一覧表が付属していれば,それにチェックを入れながら確認するといいでしょう。また,前章「あると便利」」で述べた「トレー」などに,部品を別けながら確認すると,より確実です。

◆ 基板への部品の取付

 原理的には,部品を取り付ける場所と極性さえ間違わず,適切にハンダ付けができれば,どのような順番で取付けても完動の可否に影響はないのですが,取付ける順番によって「組立て易さ」に多少差が出ます。組立てにくいと,失敗の要因につながることもありますので,部品は「組立て易い順番」を考えてハンダ付けします。
 筆者が個人的に組立ての時に意識していることは,「背の低い順→外付け(コード取付け)部品」の順です。以下に例をあげます。なお,ここで述べるのはあくまでも「キット」の基板で組立てる場合です。ユニバーサル基板を使う場合は,次項を参照。

  1. もし大き目の IC ソケットなどがある場合は,他の小さいソケットも含めて,同じ「厚み」の IC ソケットをまず全て設置。(→次項「安定させて効率アップ」を参照)
  2. リード線のついた抵抗,ダイオードなど。
  3. 直接設置する IC(状のもの)やそのソケットなど(小型ばかりの場合)。(→次項「安定させて効率アップ」も参照)
  4. リード線のついた粒状コンデンサなど。
  5. リード線のついた電解コンデンサなど。
  6. コネクタなど。その他,部品の「高さ」がマチマチなもの。
  7. 電池やスピーカ,外部から操作するスイッチ,ジャックなど,コードで接続するもの。

◆ 安定させて効率アップ

 似たような高さの部品を,先に「四隅」に近い場所に取付けると,裏返してハンダ付け作業をする時にそれが「脚」の役割をして基板が安定し,組立て易いことがあります。
 前項の 1〜3 で,もし取付ける「IC ソケット」などにあまり厚みがなく,しかも「28 ピン DIP 型」などの大きなソケットの場合は,そちらを抵抗などより先に取付けたほうが安定する場合もあります。また,IC(ソケット)などの「端子が混み合った部品」は,一番最初のほうが取付け易いこともあります。適宜ご判断ください。
 「四隅」に限らず,同じ形状の部品はまとめてハンダ付けすると,効率がいいことが多いです。たとえば「抵抗」なら,以下のような感じです。

  1. 抵抗を設置する該当箇所に挿し込んで
  2. それぞれリード線を少し開いて抜け落ちないようにしておく(IC は数本でよい)
  3. まだハンダ付けせず,形状が同じ全ての抵抗について,先に 1. と 2. を行う
  4. 形状が同じ全ての抵抗を挿し終わったら,裏返して全リード線をハンダ付けする
  5. 余分なリード線をニッパで切断する

このような順に作業します。以降,IC やコンデンサなど,他の形状の部品についても同様の手順で設置します。1〜2個だけの部品は,形状が似ている他の部品(たとえば,「ダイオードと抵抗」など)と一緒に設置するなどします。
 ただ,後から部品の「挿し間違い」に気付くとたいへん悔しいので,挿し込む時に十分注意します。また IC(ソケット)の場合,2. では,対角線上の2本程度を軽く曲げる程度でも可能です。とにかく「抜け落ちない」ことが重要です。

◆ ユニバーサル基板

 一方,「ユニバーサル基板」と呼ばれるもので組立てる場合は,前述の方法がベストとは限りません。ここは「キット」についての説明なので詳しいことは省略しますが,「ユニバーサル基板」では,どこにどの部品を配置するかが決まっていないので,まずは IC などのメインの部品を固定してだいたいの配置を決め,後から抵抗などの周囲の部品を固定していったほうが組立て易いこともあります。

◆ 動作確認

 もちろん,電源を入れて思い通りに動作すればいいわけですが,もし,致命的な損傷を与えるような不具合があった場合は,電源を入れるとその時点で「オシャカ」になってしまう可能性もありますので,できれば「事前確認」をします。
 簡単な確認の仕方としては,電源線(電池スナップなど)にテスタを当てるなどして,「抵抗値」を確認します。通常の電子回路では,数百〜数十キロ程度の抵抗値がありますが,抵抗が極端に低い場合は,どこかで「短絡(ショート)」している可能性があります。なお,電源がコンデンサでバイパスされている回路ですと,テスタを当てた直後は抵抗が低い値が出ますが,当てているうちに上がる現象が起きますので,あまりあわてずにゆっくり測定します。
 ただし,「モータ」で動くおもちゃや「豆電球」が使用されている製品では,それらの抵抗値が元々低いために,内部に組込まれた電子回路が正常な場合でも低い抵抗値になることがあります。どうしても確認の必要がある場合は,電子回路部分だけ分離するなどの必要があります。

   

● ハンダ付けの手順

 これも特に「こうしないとイケナイ」という方法があるわけでもありません。ただ,少々「コツ」が必要です。熱に弱い部品もあるので,素早く行えるようになるまで,何度か繰り返して早めに慣れましょう。慣れないうちは,「抵抗」などの「さほど熱に弱くない部品」から取り付けていくという手もあります。

  1. ハンダ付けの対象となるものを接触させておきます。多くの場合,部品のリード線を穴に挿し込んでおきます。穴のないものの場合は,できるなら「絡めて」おくか,少なくとも接触したままの状態が保てるようにしておきます。
  2. 接続したい対象の両方に接触するようにハンダゴテの先端を当てます。基板に部品を挿し込んだ場合は,基板の銅板とリード線の両方に接触するようにします。
  3. それら3つ(2つの部品とコテ)の隙間をめがけて「ハンダ線」の先端を突っ込みます。熱が伝わって来て熱くなるので,ハンダ線は適当に伸ばして先端から 7〜8cm ほど離れたあたりを持ちます。
  4. ハンダ線が融け始めたら,ある程度の量が融けるまで「コテ先」に向けてハンダ線を続けて押し当てていきます。基板の場合は「富士山型」の山ができる程度,端子の場合は,部品が接触しているあたりにハンダが行き渡って,全体が少し膨らんだ感じになる程度です。
  5. 融けたハンダが適当なカタチになったら,ハンダとコテを同時に離します。コテを先に離すと,ハンダの線が接続部分にくっついたままになってしまうことがあるので注意。そうした意味では,少しだけハンダ線を先に離しても構いませんが,コテを長く接触させておくと,余計な熱を部品に与えて故障の原因になるので,やはり注意が必要です。

◆ 失敗例

 典型的な失敗例として,以下のような状態があります。

 どちらも,ハンダが着かなかった側の「加熱不足」が原因のことが多いようです。たとえば,基板や端子からリード線が浮き上がる「テンプラハンダ」は,基板の銅板側にコテの熱が行き渡っていなかったことが考えられます。ハンダゴテは接続する部品の両方に当たるように注意します。何度注意しても上記のような現象が起き易い場合は,ハンダゴテの電力に対して,ハンダ線の融点(融ける温度)が高過ぎる可能性が考えられます。ハンダ線は低めの温度で融けるものが使い易いです。電子機器製作用をうたった「低温ハンダ」もありますので,購入前にハンダの説明をよく読んだり,販売店の人に聞いて購入するといいでしょう。


● 作者

石川 雅章    TREE-WARE
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