Edmonton Journal
2007 年12月23日(日)

やっかいで、情熱的でーーそして本当の愛

ジェイミー・ポートマン、キャンウエスト・ニューズ・サーヴィス

カリフォルニア州ビヴァリーヒルズ発ーー『P.S. アイ・ラヴ・ユー』の始まり方は、おそらくハリウッドの記録に前例のないものだろう。

魅力的な若い夫婦が喧嘩している所からだ。

目は怒りに燃え、体は敵意が束になってうずまいているヒラリー・スワンクは、ジェラード・バトラーに激しい言葉を投げつけている所だ。彼は、その晩早くに ものすごく彼女の機嫌を損ね、彼女が二人の関係を問わずにはいられなくした。

肩肘張らないバトラーは、穏やかに守勢に立ち、実際彼女の怒りの爆発にいくらか戸惑い、傷つけられた自尊心と従順なアイルランド人の魅力とが入り交じって 応じている。

喧嘩の派手さにも関わらず、二人が互いに愛し合っていることは間違いないーーそれが、スワンクとバトラーと脚本と監督のリチャード・ラグラヴェネーズがこ の夫婦のバトル・ロイヤルを撮影した時に伝えたかったメッセージなのだ。しかし、その場面を例のないものとしているのは、それが映画のタイトルが出る前に 起きて、しかも15分近くも続くことである。

その目的は、典型的な結婚と本当の愛とはどういうものかを伝えることだ、とラグラヴェネーズは言う。「やっかいで、情熱と争いで一杯の愛、また親しさと許 しと喜びと愛だ」

また、始まってすぐに2人のスターの間に画面上で説得力のあるつながりを確立しなくてはならないという、切羽詰まった必要があった。なぜなら、初めのタイ トルの後、スワンクは夫を亡くし、頼れるのは素晴らしい結婚の記憶だけになってしまうからだ。

「最初のシーンは12ページあったのーーそれは、映画の10パーセントなのよ」とスワンクは言う。彼女はラグラヴェネーズの大ファンで、彼が以前書いたも のの中には『フリーダム・ライターズ』『モンタナの風に吹かれて』『マディソン郡の橋』がある。

「彼は最高の脚本家の一人だと思うし、今度は偉大な監督でもあると証明しているわ」と彼女は付け加えた。しかし、彼女がラグラヴェネーズを特別だと思うの は、本当に役者のためのシーンを書いていると彼が信じていることなのだ。

スワンクは脚本の1ページでそれぞれの役者が数行の会話しか求めない脚本を見慣れている。しかし、これは違う。休みの時でさえ、スワンクは自分の台詞を覚 えることに没頭していた。

「ロマンティック映画のペースで、その中にコメディもあって・・・台詞をちゃんとすっかりわかっている必要があるから、わたしのオフタイムは完全にこの長 い場面とそれを覚えることに捧げたのよ」

38歳のバトラーは、その経験すべてを魅力的だと思ったーーそしてまずキャリアだ。実際、彼の最近のヒット『300』冒頭の一連の戦闘場面よりもきつかっ たと示唆している。

「その場面は本当に混じり合っているんだ。1つには、ぼくたちはすごく相性が良かったし、たくさんのことがすぐに収まる所に収まった。そして、ぼくたちが お互いになんて張り合っているんだろうと驚いたんだ」とバトラーは思い返す。「でも、その一方で、これは現代の映画の中でも最長の冒頭場面の1つにになら ざるをえないね」

バトラーは、映画の平均的な場面が2分間の時代に、彼とスワンクはこの場面の長さを正当化するために一生懸命やらなくてはならなかったと言うーー「その長 さを飽きずに持たせるために、演技と動きと感情とムードとテンポで進めるようにした。そして、それをやって、しかも自然に保ち、あの火花と相性を保つん だ・・・きつかったね」

スワンクとバトラーはカメラが回りだす前に、ラグラヴェネーズと3日間のリハーサルをした。また、そのシーンに使われるアパートメントのセットで長い時間 を過ごした。「わたしたちはいつどこへ行くか概略を決めて、本当に素早くできるようにしてセットで時間を無駄にしないようにしたの」スワンクは言う。「時 間を節約するためよ、だって時は金なりですもん。だから、その場面をちゃんとできるようにして週末やオフタイムに入ったの、あの映画に不可欠な部分ですも の」

この長々しい冒頭場面がそれほど不可欠なのは、ストーリーが次の決定的な場面に移る前に、この夫婦の関係の濃密さを示さなくてはならないからである。次の 場面では、スワンクは今度は、予期せぬ脳腫瘍で夫を亡くした寡婦となっている。しかし、映画が進むにつれ、元気づけるバトラーの霊がまだ現れて、スワンク が死別を乗り越える手助けをする。彼は死の前に彼女に宛てた一連の手紙を書いてこれを成し遂げるーー手紙は彼女の30歳の誕生日に始まり、これはという時 に届き、彼女が死別を乗り越えて彼のいない新しい人生を受け入れる手助けをすることを目指している。

『P.S. アイ・ラヴ・ユー』はアイルランドの作家セシリア・アハーンのベスト・セラー小説を基にし、ハリー・ハンコックJr、キャシー・ベイツ、リサ・クドロウ、 ジーナ・ガーションが出演する。しかし、この企画に関わった人は誰もがわかっているが、この映画の究極の成功は2人の主役にかかっている。というのも、ス ワンクがストーリーの名義上の重責を担わなくてはならないが、彼女のアイルランド人の魅力的な夫がなおも短いフラッシュバック場面で登場するからである。

スワンクはバトラーが共演者となったことをラッキーだと思っている。

「彼素晴らしいでしょ? 素晴らしくて素敵な人で、わたしたちは本当に意気投合したの。彼を友達だと思っているのよ」

バトラーは演劇界に入ったのが遅いので、彼の役に稀な新鮮さをもたらしていると彼女は言う。

「彼はどういう風にすべきかということについての前々からの考えがないから、本当に楽しいの。彼はその点で子供みたいなものよ。彼にはたくさん驚くべき所 があるのよーーそして、それが本質的には演技するということなの」

彼女はその映画を見る観客がバトラーの演技を大好きになるだろうとわかっている。

「もしジェリーを大好きにならないなら、この映画で彼を大好きにならないなら、わたしのキャラクターとの旅には出られないでしょう。だから、映画冒頭の 15分で彼に強烈に恋することが、彼について本当にたくさんのことを語るの」

バトラーはと言うと、あの初期のリハーサルの間に、相性が合うということを知った。

「ぼくたちが本当に取り組まなくてはならなかったことだとは思わないんだ・・ぼくたちは互いにすごく刺激し合ったーー彼女はとても驚くべき女優だよ・・・ 彼女はぼくを得ようと躍起にならなかった。ぼくは彼女を得ようと躍起にならなかった。ぼくたちはただ楽しんで、お互いがとても気に入ったものを作っていた んだ」

スワンクは、バトラーの存在が『P.S. アイ・ラヴ・ユー』を作る上でストレスのない経験となったというーー彼女が下着だけにならなくてはならない場面でも。

「あのね、脚本を読んでいるとき、そういうことでは止まらないの。ただ流れに乗っていくだけ。でももちろん、その前の日はこんな感じよ、『明日はパンティ とブラだけ? まあ、撮影所ではへんてこりんな日でしょうね!』」

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