'P.S.' 撮影:脚本・監督家たちが初日から彼らの映画を形にす
ることができたという御利益を得たにも関わらず、[脚本と監督という]1人2役で映画を作るという状況の結果、いくつかの特別な難問にもぶちあたった。
監督たちが脚本を書くモードから監督モードに入った時、自分たちが書いた物をどう扱うか、あるいはカットして身近なものにするか決めなくてはならないとい
うことに気がついた。さらに、脚本を書きながら、ページの上では簡単だが映画にするのは容易ではないことを生き生きと描写しなくてはならないとなった時、
撮影の間に直面するであろう困難を考慮しなくてはならなかった。
こうしたことを心にとめて、わたしは幸いにも最近リチャード・ラグラヴェネーズと、脚本を書くことや監督することについて話すことができた。彼の評判の脚
本には、『マジソン郡の橋』『モンタナの風に抱かれて』、オスカー候補となった『フィッシャー・キング』といった映画がある。監督した作品の中には、脚本
も手がけた『フリーダム・ライターズ』、『マンハッタンで抱きしめて』がある。わたしたちが話しあった時、ラグラヴェネーズは新作 'P.S. I
Love You' の仕上げを終えたばかりで、脚本はラグラヴェネーズとスティーヴン・ロジャーズで、セシリア・アハーンの小説に基づいている。
'P.S.'
は、ヒラリー・スワンク、ジェラード・バトラー、リサ・クドノウ、ハリー・コニック・ジュニア、ジーナ・ガーション、ジェフリー・ディーン・モーガン、
ジェィムズ・マースターズ、ネリー・マッケイ、キャシー・ベイツが出演している。制作は、ウェンディ・ファイナーマン、ブロデリック・ジョンソン、アンド
ルー・A・コゾヴ、モリー・スミスで、エクゼクティブ・プロデューサーはジョン・H・スターク、リサ・ジュパン、ドナルド・A・スター、ダニエル・J・
B・テイラー、ジェイムズ・ホランドである。アルコン・エンターティンメント・プロダクションがワーナー・ブラザーズを通じて12月21日に大々的に公開
する。
「セシリア・アハーンの本はワーナー・ブラザーズのウェンディ・ファイナーマンのものだった」とラグラヴェネーズは、オスカー最優秀作品賞受賞で大ヒット
を飛ばした『フォーレスト・ガンプ』やヒット・コメディー『プラダを着た悪魔』などの映画のプロデューサーの名を挙げた。「スティーヴン・ロジャーズの脚
本があった。わたしはそれを書き直して、監督するよう引っ張り出された。脚本を読んで、本を読んだ。そもそもわたしはアイルランドが大好きなんだ(映画は
アイルランドとニュー・ヨークに設定されている)。数年前妻とわたしはアイルランドを知って、すっかり大好きになった。1年に何度も行くんだ」
「本はアイルランドが舞台だ。セシリア・アハーンはアイルランド首相の娘だ。彼女は20代の初めにあの本を書いた。本とストーリーに魅かれた。それは愛と
喪失と愛する人を失うというストーリーで、ユーモアたっぷりだ」
映画ではスワンクが夫(バトラー)を亡くす女性を演じるが、夫は何通もの手紙を書いて自分が亡くなった後に、彼女が悲しみを乗り越え自己をまた見いだす手
引きとなるように配達されるように手配する。どの手紙にも、「追伸、愛しているよ」と記されていた。
「それは、19歳で生涯の恋人と結婚した若い女性のストーリーだ」とラグラヴェネーズは、ストーリーについて聞かれると答えた。「2人は結婚して10年
で、彼はどっちかというと心配性で、2人の将来や財政などについて気にしていた。彼が30歳になる直前、最悪のことが起きたーー彼が亡くなるんだ。ストー
リーは、彼が亡くなった後、いかにして新しい生活に彼女を導いていくかというものだ。それと、結婚や友情について、また、
彼女をあがめる男の手助けで成熟していく女性についてのストーリーだ。ジェリーがあるインタヴューでかつて、彼の(キャラクター)は何もかもが、ただこの
女性を愛することについてなんだと言ったが、実にうまく言ったと思うんだ。そして、亡くなってからさえも、2人の間に続く愛の物語があるんだ。
「2年前わたしは大事な友をなくしたので、(映画のストーリーは)わたしが語るのに使える個人的なストーリーのように感じた。友をなくしたことについて表
現したいことの多くを表わすのに 'P.S. I Love You'
を使うことができた。だから、この2つの間にわたしが本当にやりたいことがあって、それは作るのに6年掛った『フリーダム・ライターズ』の時期、あまりい
ろんなことが起きない低調な時期で、他に何か集中するものを探していた。そしてそれはわたしの好きなラブ・ストーリーだった」
ラグラヴェネーズが監督するために制作陣に入った時、まだ映画の出演者は決まっていなかった。「てんで誰も決まっていなかった。まったく個人的なアイルラ
ンドへの愛と、なくした友についてのストーリーを語りたいという思いからだったんだ。これが(制作陣に入った)2つの動機となる要因だった。『フリーダ
ム・ライターズ』の間、ヒラリー・スワンクと一緒に仕事をして、とても親しくなった。彼女はあの本を読んでいて大好きだった。わたしは『フリーダム・ライ
ターズ』の制作をしていて、 'P.S. I Love You'
の監督をすることは諦めなくてはならなかった。それから、その時期と『フリーダム・ライターズ』の仕上げをしている間に、あれはワーナー・ブラザーズの手
を離れた。プロデューサーのモリー・スミスがワーナー・ブラザーズから持ち出して、アルコン・エンターティンメントに持ち込んだ。彼らはそれを作ることに
して、そのための資金を得た。わたしがまだ『フリーダム・ライターズ』の仕上げをしていた2006年の4月に、わたしたちはこれの資金を得たが、すぐさま
やらなくてはならなかった」
「そこで、わたしはイエスといって、『フリーダム・ライターズ』の仕上げをしている間に、'P.S. I Love You'
の準備をしていた。だからどちらもちょっと重なっているんだよ。ヒラリーとわたしは、そのまま一方からもう一方に移った。去年の9月に始める直前、(あ
の)『300』が発表される数カ月前にわたしはジェラード・バトラーと会い、彼に決めた。そして、そこから頑張った。リサ・クドローとキャシー・ベイツ、
ハリー・コニック・ジュニアを見つけた。素晴らしいキャストで、演技は見事なものだ」
役者たちとどのように仕事をしたのか聞かれて、ラグラヴェネーズはこう答えた。「役者たちとは、脚本の読み合わせで何度も個人的に集まった。リハーサルは
しなかった。時間がなかった。じつにきついスケジュールだったよ。最初の週はアイルランドで、6日間しかなかった。だから、リハーサルの時間はなかったん
だ。でも、映画の中核は結婚とヒラリーとジェリーのラブ・ストーリーだから、セットができる前に、(我が)偉大なるプロダクション・デザイナーのシェパー
ド・フランケル(『セット・アップ』)にわたしの住まいそっくりのまがいのセットを作らせたんだよ。ジェリーとヒラリーとわたしはこの2人の結婚について
の10ページから13ページあるオープニング・シーンの稽古をした。
「その関係を中核に据えたら、映画の他の部分はすんなり収まると思ったんだ。だから、そのシーンをかなり稽古した。動きが多くて、しかも速いんだよ。服を
脱ぎながら同時に言い争っている夫婦についてのもので、2人の結婚の異なった様々な面をすべて明らかにする。他の役者がやって来て、我々はやりながら稽古
した」
ラグラヴェネーズは脚本家として出発したので、監督のやりかたに何か違いがあるか聞いてみた。監督しているものに脚本家の考え方があるのでしょうか?「未
だに脚本家のように監督していると思う」と彼は言った。「今もって、スタイルやシネマ・ランゲージ、どういう風にカメラを使うかに苦労している。わたしに
とっては、(監督)初心者で、それについてもっと学ぶことや、ストーリーを語るためにいかにカメラを使うか、どんな風にシネマティック・ランゲージを使う
かを学ぶこと楽しみにしている。目下の所、わたしの映画では、脚本がまだ支配的な力を持っていると思うよ」
制作を振り返ってみて、ラグラヴェネーズはこう述べた。「スケジュールは大変な難題だった。わたしは、自分の書き直したものをまた書き直していた。さらに
また書き直して、前にはなかったアイルランドで起きる場面をくわえた。みんながそれを気に入ったが、スケジュールがもう決まっていて、予算も決まっていた
ので、内容たっぷりになった脚本をきついスケジュールの中に押し込まなくてはならなかった。それで毎日長びいて、本当に大変だったが、だれもが一緒に仕事
するのに素晴らしい人たちで、アルコンは素晴らしいパートナーシップを発揮した。とても協力的だったよ。わたしたちはみんな本当に親しくなった。みんなが
一致協力したら、実に素晴らしい経験になるということなんだよ」
撮影は45日間で終わった。「(撮影中)いくつかの事件があった。セットで起きたヒラリーの事故があった。5日ほど撮影をやめなくてはならなかった。ジェ
リー・バトラーがサスペンダーでストリップをするんで、彼の出番を全部撮影した。それから次の日、カメラの向きを変えて、その最初の撮影で彼がヒラリーの
ためにそれをやって、カメラはヒラリーに向いていた。サスペンダーのクリップがテーブルの下にひっかかったーーテレビ・トレイ・テーブルみたいなのだっ
たーーそして、ジェリーは背を向けていたからそのことを知らず、ヒラリーは見えなかった。彼女は、彼がひっかかっているんだと思って笑っていたんだが、
あっという間にサスペンダーがはじけて、ジェリーを飛び越えてヒラリーの頭を直撃した。
「彼女にはびっくりするね。わたしたちはみんな真っ青になった。彼女はわたしたちの気分を引き立て、『大丈夫。心配しないで』って言ったんだ。彼女の所に
すっ飛んでいって、それが治るまで数日取らなくてはならなかった。でも、彼女は冷静さを失わなかった。完全に協力的だったんだ。そのことでわたしのことを
気に懸けてくれた。けれども、あれはあっという間に起きた突拍子もないことで、誰もどうにもできなかった」
天候がラグラヴェネーズが相手にしなくてはならなかったもう一つの難題だった。「アイルランドで撮影するのは本当に大変だよ、1日の内に四季があるんだか
らね」と彼は説明した。「朝は霧がかかって灰色で、それから青空になって、それから雨が降り、そして太陽が移動したりするんだ。だから、アイルランドの田
舎道にいる時は、撮影の辻褄を合わせるのが本当に大変だよ。あそこに2週間いた(そして、散々そんな目に遭った)けど、大好きだ。素敵な国だ。あそこに行
くのが大好きさ」
アイルランドでの撮影が終わると、撮影はニュー・ヨークに移った。「すばらしいよ。見事な天気だった。ウイリアムズバークのローワー・イースト・サイドと
ブルックリンにある街にいた。素晴らしい時間を過ごした。ヘルズ・ゲイト・スタジオにいたんだ。(スタジオになる前は)古いコーヒー工場か何かだったんだ
と思う。ニュー・ヨークからトライボロ橋にあるクイーンズに来ると、右手にあるよ。川の流れが急な所のひとつで、ヘルズ・ゲイトと呼んでいる川の地点にあ
る」
'P.S.'
の仕上げ(ポストプロダクション)は特に重要だと彼は指摘した。「ストーリーはユーモアとドラマが混じり合っていて、そのバランスを見つけることが1つの
難題なんだ。だから、決めては、素晴らしい役者を得ることで、そして手に入れたよ。みんなすごい演技をしてくれる最高の、見事な役者のアンサンブルを手に
入れたんだ」
ラグラヴェネーズは物凄い量は撮らなかった。「またもスケジュールのせいで、たくさんのテイクはなかったんだ。かなり速く進んだ。でも、役者たちは脚本を
愛し、自分たちのキャラクターを愛し、本当に理解した。アンサンブルの中にはいろんな相性があって、(互いに)とてもうまく働いたので、わたしは運が良
かった」