2001年1月6日(土)「私が愛したギャングスター」

ORDINARY DECENT CRIMINAL・1999・独/アイルランド/英/米・1時間35分

日本語字幕翻訳:石田泰子/シネスコ・サイズ(マスク)/ドルビーデジタル


アイルランドのダブリンを根城に、銀行強盗などで荒らし回る武装犯罪集団。そのボス、マイケル・リンチ(ケヴィン・スペイシー)は、いつも人目を避けるようにしてフードなどで顔を隠していたが、ダブリン市警からは厳しくマークされていた。しかし、いつも機転を効かせ、人を傷つけることなく、まんまと強奪に成功し、私生活では2人の妻を持ちそれぞれの子供を愛し、家庭を大切にするマイホーム・パパでもあった。

71点

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 なんという酷いタイトル。原題は「ありふれた礼儀正しい犯罪者」とでもいうような意味だろうか。映画の中で、主人公が自分のことを指してそういうのだ。それを「私が愛した……」とは。まるで女性が主人公で、懐かしき昔を偲んででもいるかのようではないか。あまりにも女性客の多いアート系シアターを意識しすぎの命名。

 実際の内容は、コメディ・タッチのピカレスクもの。アート系というよりはエンターテインメント系だ。予算の関係からだろう、そう大きな事件も、大捕物もなく、こぢんまりと話は展開するので、ヨーロッパ映画それもアイルランドがからんでいるということから「ウェイクアップ! ネッド(Waking Ned・1998・アイルランド)」のようにアート系で売りたかったのか。

 それでも、なかなか面白いのは事実。考えていないようで、考えている奇抜な作戦で、銃を1発も発射することなく、盗みを成功させるあたりが1つの見所だろう。イギリス的アイロニックな警察へのからかいがウエットで、いまひとつ気持ちよく笑えないものの、 過激派のIRAが絡んできたり、銃撃戦もあって、どんでん返しもあって、結構楽しめる。

 最後まで説明がなく、理解しにくいのは、主人公には妻(リンダ・フィオレンティーノ)がいて子供も3人もいながら、義理の妹とも夫婦関係にあって子供がいて、一夫多妻制の二重生活を送っていること。しかも2人の妻はすべてを受け入れていて仲がいい。誰も矛盾を感じていない。そして、2家族を養わなければならないから、彼は犯罪を重ねるわけだ。

 それでもなお、「プランケット&マクレーン(Plunkett & Macleane・1999・英/チェコ)」のような憎めなさがある。つまりそこが紳士泥棒すなわち「ありふれた礼儀正しい犯罪者」なんだろう。

 銃は主人公がガバメントを持ち、部下がソード・オフ・ショットガン、ベレッタM92、グロック、AK74(?)などを持っている。一方警察は、ドイツのG3ライフル、SIGザウエルP225か228、S&Wの5906、H&K MP5、ベネリM3ショットガン、ウージーなどなど。

 主人公はよくバイクに乗っているのだが、それが日本のカワサキのZ系。バイクから遠ざかって久しいのでモデル名までわからなかったが、ちょっと古いモデルだったような印象を受けた。アイルランドでもポピュラーなんだろうか。

 それよりショックだったのは、男性自身がスクリーンに大写しになったこと。しかも鮮明に。死体の身元確認のシーンなのだが、顔が銃撃で潰れてしまっているため、妻たちがソコで確認するわけ。もちろんケヴィン・スペイシーのものでも、別な俳優のものでもなく、おそらくそういうの専門のモデルのものだとは思うが、ちょっとねぇ……なんか内蔵みたいで……死体の設定だし……オェッでした。まさかこれで女性客が多かったわけじゃ……ないよね。

 公開4週めの初回、30分前に着いたら6人ほどの人が。女性4人に男性2人。5分ほどして11人になり、10分で15人へと急増した。ほとんどはハイティーンと20代。

 20分前に開場し、だんだん中年層が増えてきた。これは通常とは逆のパターンだ。最終的にゆったりめの150席は1/3ほど埋まった。10〜20代と30代以上の比はほぼ半々。男女比は最初7:3だったのが、6:4へ。ケヴィン・スペイシーの人気か、やはり若い女性が目立った。


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