2004年12月26日(日)「荒野の七人」

THE MAGNIFICENT SEVEN・1960・米・2時間08分

日本語字幕:手書き書体、下/シネスコサイズ(レンズ、in Panavision)/モノラル

(米PG-13指定)

公式サイトなし

メキシコの小さな農村イズカトランは、毎年収穫が終わるころ野盗に農作物を奪われていた。思い余った村人たちは、全財産をかき集め、アメリカとの国境の町まで行って戦うための銃を買いに行くことにする。しかし町で出会った腕利きのガン・マン、クリス(ユル・ブリンナー)は銃を買うよりガン・マンを雇ったほうが安いという。そしてクリスに依頼して仲間集めが始まる。

85点

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 やっぱり時代を超えて残っている名作は素晴らしい。今見てもほとんど見劣りしない。多少作り過ぎのシーンもあるが、それすらもカッコいいというのが名作のゆえんだろう。そして、あのテーマ・ソングはたぶん中年以上の人なら誰でも知っている名曲。実際、今回も劇場で多くの人が口ずさんでいた。うーん、すごいなあ、エルマー・バーンスタイン。聞いているだけで気分が高揚して、わくわくしてくるような素晴らしい曲だ。

 そして素晴らしいガン・ファイト。特にスティーブ・マックィーンがいい。細かな仕草、説得力のある撃ち方、身のこなし。どれも本当にうまい。スティーブ・マックィーンらしい。魅力が炸裂している。冒頭のエピソードで御者台に座ってショットガンにショット・シェルを詰める時、耳元で振って確認するような仕草をして見せたり、とにかく芸が細かい(ユル・ブリンナーからはあまりアドリブを入れるなと注意されたらしいが)。両手で構えてコルトSAAを撃つポーズなど、7人中一番決まっている。。

 7人ほぼ全員が、臨戦態勢になるとガン・ベルトのハンマー・ソング(乗馬中などにホルスターから銃が落ちないように止めている革のヒモ)をさりげなくはずす。一部、ちょっと編集がまずくてユル・ブリンナーが2度ハンマー・ソングをはずすところがあるが。ただ、非常に細かいところで、言われないと小さなテレビ・モニターだと気付かないかもしれない。しかし、さすがに300人クラスのスクリーンだと良くわかる。

 7人の個性が良く出ていて、そこもすばらしいわけだが、それは衣装からも読み取れる。とくに中心人物であるユル・ブリンナーは、それまで主人公は黒を着ないという暗黙のルールのようなものを覆していたそうだし、ちょっと幅広の高価そうなレザー・カービングが施されたバスカデロ・タイプのガン・ベルトを締めている。レザー・カービングはなかったと思うが、シャレ男役のロバート・ボーンも黒のファスト・ドロー・タイプ。一方、スティープ・マックィーンだけはオールド・タイプをベースとしてループ・ホルスターで、クリント・イーストウッドも愛用したアンディ・アンダーソンがデザインしたガン・ベルトを締めている。ナイフ名人のジェームズ・コバーンはアンダー・スローなので、ガンベルトもホルスター部分をかなり低くしたガン・ベルトを着用。こんなディテールがたまらないのだ。

 やはりこの頃のアクション映画は弾着が少ない。特に人体への派手な弾着はほとんどない。弾が当たって血しぶきが飛び散るというような表現はしていない。ただ胸などを押さえて倒れるだけ。しかし、次のカットでは小さな赤いしみがあり、徐々にそれが大きくなるという表現をしている。おそらく、派手さはないもののこれがリアルなのだと思う。

 銃声もリアルを考慮して乾いたものが使われたそうで、この音は後にほかの映画でも使われていき、最近ではクエンティン・タランティーノの「キル・ビル」でも使われたとプログラムにあった。ただ、一部、その後マカロニ・ウエスタンで多用されるズキューンという電子音も使われていたようだが。

 監督であるジョン・スタージェスの優秀さはとりあえず置いておき、脚本のリアルさでいうと、農民達にブロンソンがライフル銃の撃ち方を教える時に、「引き金は引くんじゃない。絞るんだ(スクィーズ)」と言っているだけですごいと思った。

 公開2日目の初回、45分前に付いたら新宿の劇場はまだ開いておらず、誰も並んでいなかった。30分前になってようやく5〜6人。予想どおりオヤジのみ。「荒野の七人」にシビレた世代はたぶん40代以上だろう。

 20分前になってようやく開場。寒い日だったから、早く開ければ温かいドリンクなどもっと売れたと思うが、自販機しかない劇場なのでどうでも良かったのかもしれない。

 10分前、35〜40人ほどに。映画好きらしい大学生から、オリジナルを劇場で観たであろう老人までいたが、若者は数人ほど。男女比は8対2で、女性は1/4ほど。当然オバサンがほとんど。最終的には300席の3.5割ほどが埋まった。3回目のリバイバル公開としては良いほうではないだろうか。

 ただ、気になったのはニュー・プリントとは言いながらも、それほど画質は良くなかったということ。DVD用にポジを起こしたとしても音は別らしく上映はモノラル。DVDはdtsの5.1チャンネルなのに。これではどう考えてもDVDの方がクォリティが高いではないか。


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