日本語字幕:丸ゴ書体下、根本理恵/シネスコ・サイズ(ARRI)/ドルビーデジタルEX
(韓15指定)
韓国の南極探検隊6名は、到達不能点を目指してすでに10日目、クリスマス・イブをテントの中で迎えた。行程は目的地まであと1,700km残っていた。そして22日目、彼らの前に奇妙な杭が現れ、そこを掘り起こしてみると、1922年にイギリスの探検隊によって書かれた1冊の「南極日誌」が出てきた。彼らもメンバーは6人。徐々に隊員が減り、最後には後ろ姿の男だけになっている。そして、韓国の探検隊に異常が起こり始める。 |
怖い。「南極物語」的イメージとは全く違って、かなりホラーチック。ただし、中途半端な感じもする。というのは、怖がらせる手法として超常現象のようなものを使いながら、結局は人間の心の働き、精神的なものというありふれたところに着地してしまうからではないだろうか。つまり超常現象は各人の精神が異常になって見せた幻だということ。それを映像化したのは素晴らしいと思うけれど、ここまでやって、思わせぶりな1922年のイギリス探検隊の全滅(その呪い?)まで持ち出しておきながら、これはもったいない。何もスプラッターとかモンスターものにする必要はないと思うけど……。何か工夫があっても良かったのではないだろうか。 実際にはニュージーランドで撮影しているらしいが、極寒の地という感じが良く出ている。デジタル処理もうまく使い、どこまでも果てしなく雪原が広がっている感じが怖いのだ。逃れ場所がない。しかも歩いていると突然、足下が崩れてクレパスが口を開け、そこに落ちてしまうかもしれない。その恐怖。何も起きなくても、この辺からして怖いのだ。1年の半分は日が沈まない白夜の昼で、残りの半分は日が昇らない真っ暗な夜という異常世界。 到達不能点というのは、極点ではなく、南極のどの海岸線からも最も遠い距離にある地点だそうで、1958年にロシア隊がたった一度だけ到達したことがある他は、だれも到達していないという。地球上で最も寒く、−80°に達するらしい。もちろんウィルスさえも生きていくことができないから、風邪さえひかないのだとか。 似た話としては日本映画の「世にも奇妙な物語 映画の特別編」(2000)のエピソードのひとつ「雪山」がある。南極ではなく、発端も飛行機の墜落だが、ラストに仲間同士で殺し合ってしまうところはそっくり。 監督は、1972年生まれというから33歳の若さのイム・ピルソン。ボクは作品を見たことはないが、公式サイトによれば内に秘めた心理の視覚化が評価されているらしい。日本では「少年期」という作品が第1回東京国際短編映画祭で上映されたとあった。今後注目か。 チェ・ドヒョン隊長を演じたのは、日本でも良く知られているソン・ガンホ。日本でリメイクされた「クワイエット・ファミリー」(Quiet Family・1998・韓)での演技が光っており、「シュリ」(Swiri・10999・韓)の刑事役も「JSA」(JSA・2000・韓)の兵士役も素晴らしかった。当然本作でもいい演技を見せている。精神異常を来したあたりの演技は迫真といってもいいだろう。 ラストまで比較的まともなミンジェを演じたのは、ユ・ジテ。「オールド・ボーイ」(Oldboy・2003・韓)で主人公を閉じこめた男を演じた人。「ナチュラル・シティ」(Natural City・2003・韓)では主役を演じていた。 ベース・キャンプの連絡係で、紅一点はカン・ヘジョン。「オールド・ボーイ」で見せた色っぽさはこの作品ではまったく感じられないし、別人のようだが、単なる連絡係にしては印象に残った。そこがカン・ヘジョンの実力なのかも。 公開8日目の初回、銀座の劇場は60分前に着いたら12人くらいの行列。しかも若い男性が半数以上。おかしいなあと思っていると、50分前になって案内があり「本日の舞台あいさつ付きレイト・ショーの「幽霊マンション」は10時45分から発売します」と整理券を配り出したら、一気に5人に減った。ボク以外全員おばさん。やっぱり。話を聞くともなしに聞いていると、どんな映画が知らないで並んでいる人もいるようだ。友人のオバサンに誘われてきたらしい。ここがブームのすごいところだ。 40分前に20人くらいになって、男女比は3対7といった感じで男性も増え出した。ただしすべて中高年。30分前になってやや若い女性も増え40人くらいに。ここで開場。当日券と引き換えないと入れない。 場内は指定席なしの全席自由。銀座のこの劇場はスタジアム形式の座席なのでスクリーンが見やすいが、飲み物などは自動販売機のみ。結構スタバとか持ち込んでいる人がいた。ボクもそうすれば良かった。 最終的には257席の6割くらいが埋まった。カーテンはなく、スクリーンはむき出し。 予告で「マザー・テレサ」をやっていたが、何と主演があのオリビア・ハッセイ。すっかりおばあさんみたいになってしまって……54歳だけど……たぶん特殊メイクもあるんだろう。懐かしいというより、ちょっと痛ましかった。引退したんじゃなかったんだ。 |