日本語字幕:丸ゴ書体下、太田直子/シネスコ・サイズ(IMDbではMoviecam、1.85)/ドルビーデジタル、dts、SDDS
(米R指定、日PG-12指定)
少し前、悪魔の仕業なのか、それとも何かの細菌のせいなのか、死体が甦り生きた人間を餌として追い求め食らいつくようになった。そして今日、生き残った人間達は三方を河に囲まれた地域にフェンスをはって閉じこもっていた。裕福な者たちはフィドラーズ・グリーンと呼ばれる高層ビルで快適に暮らし、そうでない者たちはビルの回りのスラムのようなところで、かろうじて食いつないでいるような状態だった。ライリー(サイモン・ベイカー)は食べて行くため街を支配するカウフマン(デニス・ホッパー)の傭兵となり、完全武装して囲いの外へ食料や薬品などを取りに行く役目を引き受けていた。そそんなとき、ゾンビに知能はないと思われていたが、考えようとする者が現れる……。 |
似たタイトルの「ハウス・オブ・ザ・デッド」(House of the Dead・2204・加/米/独)があまりに酷かったことから、期待していなかった人も多いと思うが、さすがにゾンビ映画の本家、ジョード・A・ロメロ監督・脚本作品だけあって、なかなか面白い。 本作では、枝葉末節を省略して、とにかくゾンビから逃げる話だけに絞り込んでいる。それが良かったようだ。だからなぜゾンビが誕生したかとか、話のあとゾンビがどうなったかとかには一切触れられていない。その分、人間側がどうやってゾンビを逃れて暮らしているかとか、どうして底から逃げ出すことになったかを細かく描いている。そして、小さなエピソードから始めて、徐々に物語全体が見えてくるように工夫が凝らされている。それが、うまいのだ。観客は逃げる話に集中できる。先の展開も読めない。 つまり「スター・ウォーズ」のエピソード3(Star Wars・1977・米)のように、壮大な物語の一部を斬り出したような構成になっているのだ。それでいて、ちゃんとその中に起承転結を入れて見せたと。考えてみると、この話の構造も西部劇のようだ。流れ者のような男が事件を解決していく。 生きている死体=リビング・デッドは、世界的に有名で、多くの映画で採り上げられたから、いまさら説明は必要ないのだ。 そこで、人間のたちこもる砦のようなものを作り、金持ち達のために食料や医薬品などを調達してくる決死隊を用意した。金持ちが住んでいるのは“フィドラーズ・グリーン”(ペテン師の緑)というビル。決死隊はデッド・リコニング(死の報い)号と名付けられた大型トレーラーを改造した特殊装甲車を装備している。そして、M16A2、AUG、G36C(アーシア・アルジェントに渡すとき1秒で14発撃てると言っていたが、実際には12.5発)、ミニガン、ウージー、MP5などで武装している。 脳を破壊すれば殺すことができるので、元々死体だから良心の呵責なく頭を撃ち抜いていくわけだ。特殊効果もなかなかハデ。頭がもげて飛んだりしている。 配役もなかなか魅力的。特に悪役に力が入れられているようだ。一番有名なのは街のボス、カウフマンを演じるデニス・ホッパー。冷徹でセコイ悪役は抜群。こんなやつならゾンビに食われてもしょうがないと思わせる(もっとスゴイ死に方だか)。そして、その手先となるのが、ジョン・レグイザモ。「3人のエンジェル」(To Wong Foo Thanks for Everything, Julie Newmar・1995・米)のドラッノグ・クィーンから、「ボディ・カウント/ヤバい奴ら」(Body Count・1996・米)のチンピラ、「エグゼクティブ・デシジョン」(Exective Decision・1996・米)の特殊部隊員、「スポーン」(Spawn・1997・米)のモンスターまで、いろんな役を演じられる人。 一方、まともな方では……西部劇的主人公ライリーを演じるのは、ついこの前「ザ・リング2」(The Ring Two・2005・米)で、あまり役に立たない男を演じていたサイモン・ベイカー。火星探検物語「レッド・プラネット」(Red Planet・2000・米)の方が良かったか。ちょっと悪い優男のような感じで、なかなかグッド。 ヒロイン、スラックを演じるのは、イタリア・ホラー映画の名監督ダレオ・アルジェントの娘、アーシア・アルジェント。「トリプルX」(XXX・2002・米)の役とちょっと被っているかもしれないが、なかなかグッド。 相棒チャーリーは、ロバート・ジョイという人で、シャーリーズ・セロンが死んじゃう恋人を演じた「スゥート・ノベンバー」(Sweet November・2001・米)に出ていたらしい。しかし特殊メイクのせいもあるのだろうが、ほとんど見た記憶がない。ただ、M1カービンを持っているのが珍しい。とても非力な銃で、ゾンビの頭をぶっ飛ばすのはかなり至近距離でないと難しい。拳銃弾に毛が生えた程度なんだから。 公開2日目の初回、新私塾の劇場は50分前についたら誰もいなかった。40分前になってやっと10人。若い女性1人、20代くらいの男性が6人、中高年が3人。35分前に30人くらいになり、女性は2〜3人に。中高年は2割ほど。ほとんどは20代という感じ。老人が2〜3人。 20分前に開場し、場内へ。新宿の劇場は70mm対応館で、しかもスタジアム形式でほとんど前席のひとが邪魔にならない良い劇場。これは嬉しい。指定席なしの420席に5.5割ほどの入り。これはまあまあか。 外人さんが1人、若いカップルが2〜3組、小学生の父子連れもいた。 予告編は新しい映像入りの「キング・コング」。これはかなり期待できそう。ただ、中央やや左下寄りのピントが甘かったのが、なんとも……。 |