2005年12月26日(月)「ファイナル・カット」

THE FINAL CUT・2004・加/独・1時間34分(IMDbでは95分)

日本語字幕:手書き書体下、表記なし/シネスコ・サイズ(マスク、Super 35、with Panavision)/ドルビーデジタル、dts

レイトショー公開(米PG-13指定)

72点


http://www.finalcut-movie.jp/index2.html
(全国劇場案内もあり)


近未来、アラン・ハックマン(ロビン・ウィリアムス)は、人間の記憶を記録することが出来るチップ“ゾーイ”を自分の希望で頭脳に埋め込んだ人が亡くなった時、そこから想い出を取りだして編集し「追悼集会」で上映する仕事を請け負う編集マン。あるとき、依頼された故人の記憶を編集していると、かつて自分が幼い頃、一緒に遊んでいて死なせたかもしれない友人にソックリの人物を発見し衝撃を受ける。自分の記憶があいまいで、真相を知るためその友人を探し出そうと“ゾーイ”の製造元であるアイテック社の記録保管庫に進入する。そして、そこで更なる衝撃を受けることになる。

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 面白い。おもしろいが、前後編の前編だけを見た感じ。だから後編はどうなってんの?と質問したくなる。えっ、これで終わっちゃうの?

 登場人物は皆なかなか魅力的なのに、描き方が浅い。なぜこの設定でちょっとしか関わってこないの? 主人公さえ描き方が足りないような気がするのに、その他の人物はほとんど記憶に残らない。消化不良なのではないか。

 世界観というか、記憶チップ“ゾーイ”や記憶の編集者という本当に興味深い設定を作っておきながら、それらの説明も不足している。だから物語の経過が良くわからない。作っている方はわかっているからすぐ次へ進んでしまうが、観客は理解するのに時間がかかる。つまり置いてきぼり状態になるのだ。見終わってから公式サイトなどでストーリーやプロダクション・ノートを読むと、そういうことだったのかとわかるようではいけないと思う。それとも、ボクの理解力が足りな過ぎるのかもしれないが……。

 たぷん低予算映画なのだと思うが、きっと脚本の出来が良かったのだろう。大作映画並の豪華キャスト。主演はロビン・ウィリアムスで、彼のカール・フレンドとなるのがちょっと歳をとって美しさに陰りが見えてきた感のあるミラ・ソルビーノ(別人かと思った)。そして、メル・ギブソン監督の「パッション」(・2004・)でイエス・キリストを演じたジム・カヴィーゼル。どうしてこんなスゴイ人達を出して、いずれも印象に残らない中途半端な役なんだろう。これじゃあ誰がやっても同じ。彼らである必要はない。

 そのせいなのか、ロビン・ウィリアムスもパッとしない。演技がDPEショップの恐ろしい店員を演じた「ストーカー」(One Hour Photo・2002・米)と同じ雰囲気。まあ「ストーカー」も彼の主演作品だから、似て当然なのだが、本作の主人公らしさというのが感じられないのだ。

 その脚本と監督を手がけたのがアメリカ在住のレバノン人のオマール・ナイームという人。1977年生まれというからまだ27歳。本作が劇場長編映画デビュー作になるらしい。フランスで1年に2度、若手映画作家を評価するプロジェクトがあって、それに本作の脚本を提出、映画化が決まったのだとか。

 撮影は日本人のタク・フジモト。「羊たちの沈黙」(The Silence of the Lambs・1991・米)とか傑作スポ根「リプレイスメント」(The Replacements・2000・米)を手がけたベテランだ。わざと画調を替えたHDTVの絵を記憶の映像に使うなど、斬新な絵作りになっている。

 劇中、アラン・ハックマンが記憶の編集は「罪喰い(シン・イーター)」だと思っている、と言うところが興味深い。多くの編集者は人間の隠された罪を見て、長く続けられないのだという。このシン・イーター、2004年1月に公開されたヒース・レジャーの「悪霊喰」(なんというタイトル。原題はSin Eater・2003・米/独)を思い出した。あれと合わせて見ると興味深いかも。西洋人の宗教観と大きく関わっているテーマなのだろう。

 オープニングの文字は煙のように薄れ、変形して消えて行くという凝ったもの。記憶のイメージなのだと思うが、うまい。雰囲気タップリ。デザインは誰だろう。表記が無かったようだが。

 愚かにも、アラン・ハックマンは身の危険を感じて銃など入手してしまうのだが、それがたぶんS&Wのセンチニアル。ろくに使えもしないのに銃なんか持つから悲劇がおきる。ちょっと冷静な主人公に似合わない行動のように思えた。しかも覚悟してその仕事をやっているわけだし、いまさら自衛というのも、なあ。チップのデータを狙っているジム・カヴィーゼルとその相棒が持っているのは、チラッとしか出ないのでわからなかったが、P226かP229のようだった。

 公開4日目のレイト・ショー、銀座の劇場は20分前に開場。この時点で5〜6人。20代後半くらいの女性が2人と、仕事帰りの中高年サラリーマンという構成。最終的には130席に15人くらいの入り。好きなところに座れるので、この撃攘でも下に字幕が出ても見やすかった。

 予告の「エンパイア・オブ・ザ・ウルフ」はビデオのようだったが、なかなかの画質。これなら問題なしでしょう。他のビデオ予告もこれくらいにして欲しいなあ。


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