2006年1月7日(土)「輪廻」

2005・TBS/Entertainment FARM/オズ/ジェネオン エンタテインメント/東宝/日活/MBS・1時間36分

ビスタ・サイズ/ドルビーデジタル

(日PG12指定)

http://www.j-horror.com/
(入ったら音に注意。全国の劇場案内もあり)

35年前、群馬県のホテルで発生した11人斬殺事件をモデルにした映画が制作されることになった。監督の松村(椎名桔平)は脚本も手がけ、その完成を待ち、主役を決定するための女優のオーディションが行われた。そこにやってきた女優の杉浦渚(優香)に何かを感じた監督は、彼女を主演に選ぶ。かくして撮影に先立ち、スタッフ、キャスト全員で事件のあった群馬のホテルへ行ってみることになるが……。

70点

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 意外に怖くない。普通には怖いのだが、観客に「呪怨」(2002・日)の監督作品という身構えが出来ているためか、思ったほど怖くは感じられなかった。普通のホラーっていう感じ。

 話の構成はとても良くできている。一見、関連性の感じられない断片的な怪現象が、次第につながってきて全体像が見えてくるというミステリーの王道と、映画撮影という現在進行形の話と、過去に撮影された8mmフィルムの中の出来事をシンクロさせるというきわめて映画的な手法を融合させ、物語をエンディングに向け盛り上げて行って、パッと終わるという手際の良さ。しかも音で脅かすようなことをしていない。ハリウッドだったら間違いなくいろんなところでドカンとか音を付けているだろう。

 ただ、「呪怨」ほどではないが、細部では納得いかないこともあった。体は器に過ぎず、魂が輪廻転生するとしても、犠牲者が犠牲者を怖がらせるというのはどうなんだろう。どうにも理屈に合わない気がする。恨みをいだいた相手に復讐する、怖がらせるというのならわかる。もしくは関わってきた人に怨みのとばっちりがいってしまうとか、魂を救って欲しくて何かコミュニケーションを取ろうとしてくるなら理解できるが、一緒に斬殺されたいわば仲間である魂(転生した人)を怖がらせるというのはどうなんだろう。

 そして、殺人者である大森教授が、自説の「体は器に過ぎず、魂が輪廻転生する」の実験のために、わざわざホテルの部屋を取り、妻と2人の子供から始めて、当日ホテルにいた全員を大型の刃物で斬殺して行くというのも、どうにも納得いかない。しかも劇中で狂気ではなく実験だったと念押ししているのだ。

 狂気だったら理解できるし、自説にのめり込む余り狂気に陥ってしまったのならわかる。しかし、実験だったというのだ。実験なら1人殺せば済むはずで、逃げ惑う人を追いかけてまで、ホテルにいた全員(宿泊客と従業員)を皆殺しにする必然性がない。さらに、実験なら検証の必要があるわけで、自殺してしまっては検証のしようがないではないか。

 監督は最初に触れたように、「呪怨」の清水崇監督。1972年生まれというから、まだ33歳の若さ。脚本も手がけており、素晴らしい才能だと思う。劇場デビュー作はシリーズ第3作目となる「富江re-birth」(2001・日)=レイト・ショー公開。酒井美紀が富枝を演じた。今や大人気の妻夫木聡が富江に関わる3人の若者の1人で出ている。低予算ながら、なかなか怖かった。

 主演の優香はなかなかの熱演。叫ぶシーンが多いのでわかりにくいが、劇中劇の演技として叫んでいる感じと、その撮影中に本当に何かを見て叫ぶ感じに、明らかに恐怖の違いが感じられ、驚いた。演技力だと思うが、それとも観客が監督の演出にのせられた思い込みなのか、見ている方まで怖くなるような叫び。主人公の恐怖が観客に伝染する。うまい。

 霊を演じた子役の少女、佐々木麻緒ちゃんは日本テレビ系で放送された「火垂ねの墓」で節子を演じた天才子役。いつでもすぐに涙が出せるという特技を持っている。だから当然うまい。普段は笑顔がかわいいとても明るい子だが、本作では怖い。

 ただ、彼女に限ったことではないが、霊はみな目の下に隈が出来て、パンダ目のようになっていて、頬がそげ落ちているというメイクは古くさくないだろうか。せっかく音で脅さない演出法を取っているのだから、せいぜい顔色を悪くするくらいで行けばいいのに。普通の人と見間違うくらいの方が怖さが増したのではないだろうか。

 前世の記憶がある不思議ちゃんで、前世で首を絞められて殺されたため、首にアザがあるという女子大生を演じているのは、「ノロイ」(2005・日)で重要な鍵を握っていた松本まりか。前作に引き続き霊に関係ある役で、なんだか本当にそんな感じに見えてきた。

 エンディングはなんだか「サイコ」のようだったが、テレビや予告編で散々流されていたので、予想がついてしまった。もう少し予告編には気を遣って欲しい。肝心なところだと思うんだけどなあ。

 公開初日の初回、新宿の劇場は45分前に着いたら誰も並んでいなかった。たぶん銀座の劇場で舞台あいさつがあるので、みんなそっちに行っているのだろう。本当に映画を楽しみたい人しかこっちには来ないのかも。高1くらいの女の子が3人たむろしていたけど、いつかいなくなった。最近の若い人は並ぶのがダメらしい。

 30分前に開場し、その時点では30代後半くらいの男性と、はっきりオヤジとわかる人が3人。初回に限らず全席自由で、指定席はなし。その後ぼつぼつ人が入ってきて10分前には30人くらいに。その内、女性は5人くらい。1人だけ中高年のオバサン。2人は高校生くらいで、あとの2人は20代くらい。老若比は3対1といった感じ。

 トイレが新しくなっていたが、蛇口は自動ではなかった。残念。最終的に586席に40人ほどの入り。これは、さすがにちょっと寂しかった。

 予告では、やっと「サイレン」の絵付き予告が始まった。あとは「海猿」「北斗の拳」「嫌われ松子の一生」「県庁の星」……って、漫画の原作ばっかじゃん。


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