Black Belt


2007年10月14日(日)「黒帯 KURO-OBI」

2006・クロックワークス/クロスメディア/バンダイビジュアル/カフェグルーヴ/原宿サン・アド/ヘキサゴン・ピクチャーズ/スカパー・ウェルシンク/ウェッジホールディングス・1時間35分


ビスタ・サイズ/ドルビーSR



公式サイト
http://kuro-obi.cinemacafe.net/
(音に注意。全国の劇場案内もあり)


昭和7年(1932年)、日本の軍部は中国東北部へ進出し満州国を建国した。ますます軍部が力を強める中、国内においても同様だった。突如、第七憲兵隊は戦争に備え役に立たない地域の空手道場を接収、支配下に置くと宣言する。柴原道場では師範の柴原(夏木陽介)が亡くなり、義龍(八木明人)と大観(中 達也)どちらかに黒帯が託されることになるが、憲兵と闘いになり、結果、隊長を死に追いやった義龍は農家へ逃れ、大観は憲兵隊で教えることになる。


70点

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 全体としての話は面白い。格闘技ブームの今、とても旬だし、「空手に先手無し」の教義も意外で興味深かった。空手での闘いもなかなか見事。ただ、どうにも 古くさい感じ。時代設定も古いし、物語の構成も古いし、セリフの言い回しも古く、撮り方も古い感じ。なんだか昔の映画を見ているような錯覚に陥る。

 絵は色が濃く、コントラストもはっきりしていてメリハリがあり、力強い。ちゃんと光が当たっているようだ。それなのに……。もともと時代設定が古いのだから、あえてもっと芝居がかっていない、今風の構成演出でMTV的に見せてくれた方が良かったのでは。設定や、大筋の話の展開はおもしろいのに……。たとえば三池崇監督とか、堤幸彦監督とか、脚本だったら宮藤官九郎とか、「ピンポン」(2002・日)の曽根文彦とか。

 黒澤明監督の「姿三四郎」(1943・日)のように、完全に作り込まれた物語世界なら、観客もその世界観にのめり込んで見られるので、かえって作り物の世界が心地良い。中途半端がいけないのでは。

 だいたいこの物語はどこの地方の話なのだろう。標準語だから東京か。でも山深く、ちょっと山に入った所は農村地帯らしいし……。主人公が怪我をして谷に落ちると、近くの農家の少年に助けられ、そこには年ごろの少女がいて、一家は借金に追われている……こんな設定が今どきあるだろうか。

 借金がある割に家は大きく、見た目は豪農。とても貧農には見えない。娘を借金のカタに取られるなら、まずその大きな家を売れ。掘っ立て小屋に住んでいるならまだしも……

 特に少年が良くない。こんな子供はいないだろう。セリフも大人に対してタメ口で、命令口調。昭和初期の少年なら大人に対してこんな言葉遣いはしないだろう、っていうか、いつの時代でもこんなしゃべり方の子供はTVか映画の中にしかいない。

 しかも憲兵は軍隊内の警察であるはずなのに、捜査を一般司法警察に依頼するというのもなんだか納得が行かない。警察が見つけてから、逮捕にだけ行くとは。借金のカタに集めてきた少女たちを座敷牢にようなところに閉じこめ、まずは憲兵隊長(お代官)さまに献上するなど、まるで時代劇。……悲しい……。

 脚本は飯田譲治。1959年生まれで、「NIGHTHEAD」の原作・脚本・監督を務めた人。TV版の原作に近いめちゃくちゃ怖い高橋克典版「リング」(1995)の脚本を書いたのに、なぜ。TV版と映画版で内容をクロスオーバーさせるユニークな「アナザーヘブン」(2000・日)の監督・脚本をやっているのに、なぜ。大作SFアドベンチャーの妻夫木聡主演「ドラゴンヘッド」(2003・日)を監督していながら、なぜ。決してありふれた作品を作る人ではないと思うのだが。

 監督は長崎俊一。1956年生まれというから、そんなに古い映画人ではないし、「ぴあ」の自主映画出身というから、映画界でたたき上げたわけでもない。なのに、なぜこんなに型にはめたように古いのか。「ロックよ、静かに流れよ」(1988・日)とか「ナースコール」(1993・日)などをの話題作を撮っている人。ボクが見たのは栗山千明がキレイで怖かった「死国」(1999・日)だけだが……。

 撮影は金子正人。1964年生まれで、日本でのほか、ハリウッドでの撮影監督アシスタントの経験もあるという。それで、こんなに絵が力強いのだろう。今後にも期待したい。

 企画・武術監督は西 冬彦。1965年生まれで、空手歴は20年を超えるという。本作では大観と闘う東郷孝臣を演じている。スローモーションなども使いながら、蹴りや突きは本当に当たっているように見え、すごい迫力。かつてのブルース・リーの「燃えよドラゴン」(Enter the Dragon・1973・香/米)などを彷彿とさせる。

 主役の義龍は、八木明人。二枚目なので俳優かと思ったら、国際明武舘剛柔流空手道連盟、舘長で錬士六段だという。沖縄剛柔流の直系らしい。1977年生まれで、ロックバンドのヴォーカルもやっているらしい。芝居はシロウトっぽくなかった。

 ライバルとなる大観は、中 達也。社団法人日本空手協会総本部師範だという。1964年生まれ。やはり役者ではないが、悪くはなかった。

 とんでもない悪玉の憲兵の親分は大和田伸也。実に憎たらしい絵に書いたような悪役。さすがにうまい。その部下が、これまたイラ付くキャラのコント赤信号の小宮孝泰。うまい。このイヤらしさ。

 公開2日目の2回目、銀座の劇場は25分前くらいに着いたら、ロビーには15人くらいの人。意外に小学生くらいの子供が多い。まもなく案内があって2列で並ぶ。15分前に入れ替えになって場内へ。中央にぴあ席が7席。まだぴあ席がある劇場があるとは驚き。中央通路付近だが、この劇場はだいたいどこにすわっても全席の人の頭が邪魔になる。とくに中央寄りに座ると逃げようがないので辛いのだが……。

 最終的に177席に7〜7.5割ほどの入り。これ以上混むとこの劇場は辛い。ギリギリ。下は小学生くらいから、上は白髪の老人まで。割と幅広い。子供は5〜6人いただろうか。びっくり。男女比は6対4で男性の方が多いが、ぴあ席はほぼ女性。格闘技ブームのお陰か。

 暗くなって始まった予告では、ドイツアカデミー賞を受賞したという「4分間のピアニスト」は、ちょっと苦手な作品。予告編だけでお腹がいっぱいの感じ。主人公の若い女性にはイラつくが、先生役のおばあさんはなんだかとても魅力的。ちょっと興味が湧いた。

 相変わらず、携帯をいじっているヤツはいるし、いつまでもしゃべっているヤツはいるし、マナーが悪い。上映前の注意はほとんど誰も聞いていない。携帯は灯が迷惑だとハッキリ言った方が良いと思うが、誰も聞いてないからなあ……。


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