Body of Lies


2008年12月21日(日)「ワールド・オブ・ライズ」

BODY OF LIES・2008・米・2時間08分

日本語字幕:手書き書体下、松浦美奈/シネスコ・サイズ(マスク、by Arriflex、Super 35)/ドルビー・デジタル、dts、SDDS

(米R指定、日PG-12指定)


公式サイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/bodyoflies/
(音に注意。全国の劇場案内もあり)

イラク、サマワ。CIAの敏腕エージェント、ロジャー・フェリス(レオナルド・ディカプリオ)は、現地助手のバッサーム(オスカー・アイザック)からの知らせで、自爆テロをやらされそうで情報を渡す代わりに保護して欲しいと言ってきている男がいるというので、会いに行く。フェリスは情報を本物と判断し、保護することを約束して上司のエド・ホフマン(ラッセル・クロウ)に情報を送るが、ホフマンは保護の必要はないという。もともとテロリストで、簡単に寝返るようなヤツだから、放っておけばむしろ誰がそいつを殺すかわかるというのだ。やがてその男はフェリスの目の前で組織に拘束され、フェリスはその男の口を封じるため射殺する。そしてその情報に基づいて、組織のアジトを襲撃するが……。

76点

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 怖い。とてもボクはこんな世界に住むことはできない。たぶん1日どころか、1時間も持たない。イラク、ヨルダン、テロリストがあちこちにいて、自爆テロが頻発し、秘密警察があって、いつ拘束されるかもわからない国。そしてそこにエージェントを派遣し、ウソで固めて、平気で人を殺すような世界。しかも容易に抜けることを許されない。観客はCIAエージェントのフェリスの体験を自分のことのように体験する。ずっと緊張しっぱなし。その恐怖。夢に見そう。

 最初に文字で「この物語はフィクションであるが、ただし絵空事ではない」というようなことが出る。さらに「誰もが攻撃を受けると、その仕返しを考える」というようなことも出る。ここでも描かれているのは「やられたら、やり返す。終わりのない暴力の連鎖」ということ。そしてそのためにウソが使われる。原題の「ボディ・オブ・ライズ」とはウソの集団とかウソの集まりという意味だろう。

 画に凝るリドリー・スコット監督らしく、いい絵があちこちに。テロ・シーンでは爆風が細い通りを走り抜け、両端から吹き出すなど、非常にリアルで怖い。またヘリからテロリストの車を攻撃するシーンも、ミサイルが弧を描いて飛んでいくさまなど、驚かされるシーンが多い。ゴミ捨て場に主人公が捨てられるシーンなどもぞっとする。ラストの拷問は、観客が拷問されているかのよう。

 こんな荒んだ映画の中に、あえてラブ・ロマンスを取り入れたところが工夫だろう。これがないと全く救いがない映画になるところだし、逆に彼女を守らなければならないという緊張感も生まれている。安直のようだが、うまい。

 フェリスを演じるレオナルド・ディカプリオは、「ブラッド・ダイヤモンド」(Blood Diamond・2006・米)に続き充分に訓練された男という役。銃の撃ち方や身のこなしなど、実に鮮やかで説得力がある。もちろん特訓したのだろう。それにも負けず、女性を誘うシーンなどは抜群にうまい。「タイタニック」(Titanic・1997・米)を彷彿とさせる。非常さと甘さが共存しているようなキャラクター。ベタはまり。使っている拳銃はグロック。サブマシンガンは何と スコーピオン。レンジ・ファインダーも使っていた。アラビア語をスラスラと話していたのにはビックリだし、拷問による特殊メイクはリアルで、白目のところに血がたまっているのがゾッとした。

 さらには、やっぱり無人偵察機や衛星を使った監視システムが、トニー・スコット監督の「エネミー・オブ・アメリカ」(Enemy of the State・1998・米)やTVドラマの「24」並みに進んでいて、スゴイということに驚かされる。アメリカいてイラクやヨルダンでエージェントが活動しているさまが手に取るようにわかる。ある面では安心だが、一方で怖い世界でもある。

 監督の要請で体重を20kg以上も増やして役作りをしたというエド・ホフマン役のラッセル・クロウは、自分は危険な現場に行かず遠く離れた場所から指令を下すだけの文官の雰囲気充分。この前の同じリドリー・スコット監督の「アメリカン・ギャングスター」(American Gangster・2007・米)ではとてもスマート。印象的だったのは日米合作で豊川悦司と共演した「NO WAY BACK 逃走遊戯」(No Way Back・1995・米/日)。そしてサム・ライミ監督の西部劇「クイック&デッド」(The Quick and the Dead・1995・米)。そして本作と正反対の「プルーフ・オブ・ライフ」(Proof of Life・2000・米)ではプロのPMCオペレーターを演じ、アクションもできることを証明している。射撃ポーズも決まっていた。

 大きな仕掛けの作戦でフェリスと組むガーランドは、サイモン・マクバーニー。残念だったファンタジー「ライラの冒険 黄金の羅針盤」(The Golden Compass・2007・米)や、恐ろしい実話に基づいた人食いアミンの「ラスト・キング・オブ・スコットランド」(The Last King of Scotland・2006・英)に出ていて、傑作コメディの「Mr.ビーン カンヌで大迷惑?!」(Mr.Bean's Holiday・2007・英)では、原案と製作総指揮を担当している。

 フェリスの相棒バーサームは、オスカー・アイザック。グアテマラ出身の役者さんで、これから公開される「チェ28歳の革命」「チェ39歳別れの手紙」に出ているらしい。フェリスを援護するのにM14のスナイパー、M21を使う。フェリスの横でRPGにやられ粉々になると、骨の破片が助手席にいたフェリスに刺さっている

 恐ろしいヨルダン情報庁GIDの長、ハニ・サラーム役は、マーク・ストロング。てっきり現地の人かと思ったら、イギリス出身の舞台でシェイクスピアも演じる固い役者さん。ビックリ。真田広之が出たSF「サンシャイン2057」(Sunshine・2007・米)や、ロバート・デ・ニーロが面白かったファンタジー「スターダスト」(Stardust・2007・英/米)にも出ていたらしい。

 フェリスが惚れる美女アイシャはゴルシフテ・ファラハニという人。イラン出身で、本作がハリウッド映画デビューになるらしい。今後の活躍に期待したい。

 本に登場する銃器は、テロリストはやぱりAKで、ストックが折りたたみだったからAKSか。対する側はG36、M4A1カービンなど。車にはFN MAGなど。

 公開2日目の2回目、銀座の劇場は全席指定。座席を確保しておいて20分前に着いたらちょうど前回が終了したところ。政争が終わって15分前くらいに入場。

 2階席の222席は7割くらい埋まった。これも話題作と言うところか。ただし、これもある程度の覚悟が必要な映画。楽しくて爽快スッキリというアクションとは違う。さすがに中高年が多く、若い人は1/3くらい。男女比も6対4くらいで男性が多かった。恋愛も描かれてはいるが、やっぱり男臭い硬派の映画。

 5分前くらいから案内を上映、チャイムが鳴って案内があり、半暗になってCM予告。気になったものは……ちょっとピンボだったが……まだ絵はないものの松山ケンイチの「カムイ外伝」はどうなっているのだろう、気になる。

 レオナルド・ディカプリオとケイト・ウィンスレットの再びの顔合わせ、上下マスクの「レボリューショナリー・ロード」は新予告に。人生のチャンスは少ない、夢を追えと。

 スクリーンが左右に広がってシネスコに。ゲームCGのようないかにも作った絵が流れると「GOEMON」の文字。なぜローマ字? ゲームのCMかと思った。監督が紀里谷和明ということは、あの「CASSAERN」(2004・日)みたいなことになってしまうんではないだろうか。

 一番気になったのは、ときどき映写室の灯りが付くこと。場内は暗いからちょっとした灯りでも気になる。携帯の画面を点灯させないでくださいと注意するなら、映写室の灯りはもちろんもってのほかだろう。


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