Funny Games U.S.A.


2008年12月21日(日)「ファニーゲームU.S.A.」

FUNNY GAMES U.S.A.・2007・米/仏/英/豪/独/伊・1時間51分

日本語字幕:細ゴシック体下、稲田嵯裕理/ビスタ・サイズ/ドルビー・デジタル(IMDbではドルビー・デジタル、dts、SDDS)

(米R指定、日PG-12指定)


公式サイト
http://www.funnygame-usa.com/
(全国の劇場案内もあり)

避暑地の別荘地に息子を連れた一家3人がヨットを牽引してやってくる。妻のアン(ナオミ・ワッツ)は到着するとすぐに夕食の準備を始め、息子のジョージ(デヴォン・ギアハート)と夫のジョージ(ティム・ロス)はヨットの準備を始めた。そこへ隣家のつかいという若い男ピーター(ブラディ・コーベット)が現れ、卵を4個貸して欲しいという。そして、もう1人の青年ポール(マイケル・ピット)が現れると、どんどん家に入ってくる。アンが追い出そうともめていると夫のジョージと息子が戻り、それを待っていたかのように突然、家族を拘束すると、今から12時間後にあなたたち3人が生きているかどうか賭けをしないかと言い出す。

73点

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 なんとショッキングな映画。しかも救いがない。あまりにリアルで、すっかり打ちのめされる。この苛つく感じと恐怖。やるせなさ。正直、お金を出してこんな気分は味わいたくない。ただ映画は良く出来ている。

 わずかな救いは、悪者たちがときどきカメラ目線で観客に語りかけ、映画としては禁断の手段を使うことで、映画全体を現実の話ではなく、巧妙にリアルに再現したビデオ・ゲームではないかと思わせること。殺戮ゲームばかりやっていると、こんな人間を生み出してしまうとでもいうのだろうか。そうでもないと、あまりに酷い話で、ついていけない。

 ティム・ロスもナオミ・ワッツも体を張って、鼻水まで流して名演技だが、何よりサイコな若者2人がスゴイ。基本は礼儀正しく、淡々とした感じが、何より怖い。見るからに人相が悪くて強面の悪人より、一見普通の優しそうな人が静かなトーンで悪になるのは怖いかもしれない。

 リーダーらしいポールを演じたのは、マイケル・ピット。サンドラ・ブロックのクライム・サスペンス「完全犯罪クラブ」(Murder by Numbers・2002・米)で、本作と同じような犯罪を犯すオタク高校生を演じていた若者。まさに本作にはピッタリだったわけだ。「完全犯罪クラブ」でも怖かったもんなあ。たぶん、思わせぶり監督のM・ナイト・シャマラン映画「ヴィレッジ」(The Village・2004・米)で腕白少年を演じていたのも彼だったのではないだろうか。役所広司や中谷美紀が出たキーラ・ナイトレイの「シルク」(Silk・2007・加/仏ほか)の主演もしているが、見ていない。

 その相棒で、ちょっと知恵遅れっぽい青年ピーターを演じたのはブラディ・コーベット。TV出演が多いようだが、実写版「サンダーバード」(Thuderbirds・2004・米)で、主演の末っ子アランを演じていた少年。髪型なんかで印象がまるで違う。さすが役者。「24 Twenty Four」シリーズのシーズン5(2006)にも出ていたらしい。

 アンを演じたナオミ・ワッツは、本作では製作総指揮を買って出ている。オリジナル作品と監督に並々ならないものを感じたということなのだろう。もちろん渾身の熱演。下着姿でがんばっている。

 夫のジョージ役はティム・ロス。ナオミ・ワッツが指名したという話もある。さすがに「レザボアドッグス」(Reservoir Dogs・1991・米)の名優。ただ、あまり犯人に抵抗しないのなら、印象が薄いので、ティム・ロスでなくても良かったのではという気はする。どちらかというと悪役向きか。

 監督はオリジナル・ドイツ版「ファニーゲーム」(Funny Games・1997・墺)の監督と脚本を手がけたドイツ生まれのミヒャエル・ハネケ。オリジナル版は夫下オルグ、妻アン、若者がペーターとパウルで、本作ではほとんどそのまま英語読みしている。日本公開された作品には、カンヌでグランプリを獲得した「ピアニスト」(La Pianiste・2001・仏/墺)があるが、見ていない。カンヌは芸術性に重点が置かれるため、難解だったりするので見ていない。本作も不条理で不快で、理解しにくい。エンディングもどうなんだろう。

 冒頭、静かなクラシックが車内に流れて、家族で曲当てクイズの後、タイトルとともにいきなりヘビメタ風の曲に代わりあたかも物語の内容を象徴しているかのようなオープニング。非常に不快に感じる。ちょっとわざとらしい気がするが……。

 別荘に置いてあるのは、さすがに上流家庭ということでか、水平二連のハンマー外装式ショットガン。簡単に取られてしまうところが情けない。そして血しぶきがスゴイ。劇中TVで流れていた映画はハワード・ホークスの「赤ちゃん教育」(Bringingup Baby・1938・米)というコメディ。

 ラスト・カット、ポールの顔のアップになるが、黒目が異常に大きかったような気がするが、デジタルでいじっているのだろうか。怖くて印象に残る。夢に出そう。ふたたびタイトルと同じ暴力的な曲とともに出るせいだからだろうか。

 公開2日目の初回、渋谷の劇場は前席座席指定なので、前日に予約しておいて(これが面倒くさいし、電車代もかかる)、20分前くらいに着いたらまだ開いていなかった。しかたなく並んで待っていると、10分前にようやく開場。この時点で10人くらいの列。

 地下の劇場で入り口のところに灰皿が置いてあるので、並んで待っていると煙くてしようがない。

 最終的に220席に30人くらいの入り。悪い出来じゃないけれど、この不快で救いのない感じは、あまり年末年始には見たくないということなのでは。覚悟のある人はいいと思うけど。若い人が多く、中高年は1/3くらい。女性は数人だった。

 設計が良くないようで、半暗になってもスクリーンに光が当たり見にくい。その中での予告上映。「悪夢探偵2」はなぜ作れたのだろう。「1」はあんなだったのに。ただ「2」は予告では面白そう。

 香港映画の「天使の眼、野獣の街」は、ヘンテコなビジュアルのチラシで意味不明だったが、予告を見たら面白そう。かなりのハード・アクション。ただ劇場が……。

 スクリーンが左右に広がってシネスコになり、暗くなってネコ語風の言葉で注意があって上映開始。


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