JCVD


2008年1月3日(土)「その男ヴァン・ダム」

JCVD・2008・ベルギー/ルクセンブルク/仏・1時間36分

日本語字幕:手書き書体下、松浦美奈/シネスコ・サイズ(マスク、panavisioncam)/ドルビー・デジタル

(米R指定、仏U指定)

公式サイト
http://vandamme.asmik-ace.co.jp/
(音に注意。全国の劇場案内もあり)

ジャン=クロード・ヴァン・ダム(ジャン=クロード・ヴァン・ダム)は48歳となり、長回しのアクション・シーンを1カットで取るのはきつくなってきた。大作からお呼びはかからず、低予算の主演もスティーヴン・セガールに取られる始末。親権をめぐる裁判でも、娘はママと暮らしたいと証言、勝ち目がなかった。しかもベルギーにもどったヴァン・ダムに電話があり、弁護士費用を明日の昼までに振り込まないと降りると弁護士が言い出す。ヴァン・ダムはしかたなく最寄りの郵便局から振り込もうとするが、まさにその郵便局は強盗に入られたところだった。たまたま駐車違反の取締に来た警察官がバリケードを動かしているヴァン・ダムを目撃し、犯人をヴァン・ダムだと通報する。警官の他、特殊介入部隊まで出動し、マスコミも多数が駆けつけ、大事件に発展してしまう。

73点

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 自虐ネタ満載のコメディかと思ったら、そんなことはなく、ギャグもあるが、ほとんどは真剣なありそうな巻き込まれ事件。世界的なスターとなった有名人だって、こんな風に事件に巻き込まれることはあるだろうというシリアスもの。ただ、設定が実在の人物で、しかもそれを本人が演じているというのが、スゴイ。

 だから、強盗犯は凶悪で恐ろしい。メンバーの一人はヴァン・ダムを知っているが、リーダーの男は映画スターなどクソくらえで、自分の命さえどうとも思っていないようなアブナイやつ。かなり怖い。人質たちもマジだし、真剣に命乞いしている。そこがいい。

 ただ、実在の人物がベースだけに、ヴァン・ダムが述懐するスターへの道、スターとしての苦労、転落、現状……は訴えてくるものがある。真実なんではないだろうか。涙も演技というより本物なのではないかという気がした。おちゃらけだったらこんなに伝わる物はなかっただろう。だからなのか、あえて色彩を抑えて、セピア調にしている。

 ハリウッド式のスター扱いで、世界中を旅し高級ホテルに泊まって、それが当たり前になり、もっと刺激を求めてヤクに手を出す。自分はどうにかそれから脱出できたと。自分より優れた人はたくさんいるが、スターになりたいという気持ちが一番強かっただけなんだと。

 しかし娘は学校で笑われると訴えるし、仕事はあってもブルガリアの撮影工場に送り込まれるだけと嘆く。そして共演者の口からジョン・ウー監督への悪口も言わせている。ヴァン・ダムがハリウッドに招いたのに(「ハード・ターゲット」(Hard Target・1993・米))、売れたら「ブロークン・アロー」(Broken Arrow・1996・米)ではジョン・トラボルタに行ってしまったと。彼がいなかったらジョン・ウーは香港でハトを撮っていたと。今「レッドクリフPart I」(Red Cliff: Part I・2008・米/中ほか)が大ヒット中だが。

 脚本はフレデリック・ベヌディスと、マブルク・エル・メクリ、クリストフ・ターピンの3人。みなフランス映画に関わっていた人だ。フレデリック・ベヌディスは2003年にフランスのTVでヴァン・ダムのドキュメンタリー作品を撮っている。マブルク・エル・メクリは本作の監督でもある。本作が初のベルギー作品と言うことになるらしい。

 本作の主演と製作総指揮も務めるジャン=クロード・ヴァン・ダムは、本作の舞台となるベルギー、ブリュッセルのスカルベック区出身。11歳から空手を始めて、1980年にヨーロッパ空手選手権のミドル級でチャンピオンになり、ハリウッドへ渡って空手を教えながら小さな役で映画出演を続け、日本劇場未公開の「ブラッド・スポーツ」(Bloodsport・1987・米)で主演デビューを果たした。

 まともだが、どかこちょっと抜けた感じのブルージュ警視を演じたのはフランソワ・ダミアン。ベルギーのTVでは人気者らしい。どこかで見たことがあるなあと思ったら、「TAXi 4」(T4XI・2007・仏)で警察署を襲う間抜けな強盗を演じていたんだとか。ショルダー・ホルスターを吊っていたが、銃はわからなかった。

 犯人の中で最も凶悪なロン毛の男は、ジネディーヌ・スアリムという人。本作ではアル・パチーノ「狼たちの午後」(Dog Day Afternoon・1975・米)のジョン・カザールのイメージで演じたらしい。「猫が行方不明」(Chacun Cherche Son Chat・1996・仏)や「スパニッシュ・アパートメント」(L' Auberge Espagnole・2002・仏/西)などに出ているらしい。チーフス・スペシャルのようなシルバーのスナブノーズ・リボルバーを持っていた。

 ベレッタM84を持っているガードマンの服を着た犯人はカリム・ベルカドラ。マブルク・エル・メクリと以前仕事をしている。メジャーな作品だと「クリムゾン・リバー」(Les Rivieres Pourpres・2000・仏)に出ていた。

 UZIを持った犯人は、たぶんジャン=フランシス・ウォルフ。アル・パチーノの「ヴェニスの商人」(The Merchant of Venice・2004・米/伊ほか)や、なかなか面白かった三銃士もの「ヤング・ブラッド」(The Musketeer・2001・米)、超モノクロ3D-CGアニメ「ルネッサンス」(Renaissance・2006・仏/英ほか)の声の出演などがある。

 特殊介入部隊はMP5、ボルト・アクションのスナイパー・ライフルを装備。ビデオ・ショップの店員が使っていたのは、キヤノンのデジカメ。

 公開8日目の初回、45分前くらいに着いて座席を確保。なんと2F席はなしなんだとか。見やすいのに……。1Fはかなり見上げる形になり、しかも2Fから映写しているのでスクリーンのゆがみが目立つ。

 25分前くらいにもどったら、すでに開場済み。中高年男性が5人ほどと、カップルが1組。スクリーンはシネスコで開いていて、場内の照明がそれほど明るくないのにまぶしい。廊下の信じられないような色づかいや、古くさい感じのトイレなどどうにもヘンなデザイン。

 ブザーが鳴って半暗になった時点で15〜16人の入り。だったら2F席だけにしてくれた方が嬉しかった。

 半暗になって、ビスタになって始まった予告で気になったのは……なんだかウンザリするような雰囲気のものとか自主映画のようなものが多く……

 オープニングはゴーモン社のロゴを空手で割って、AKなどでの撃ち合いに突入するという面白いもの。しかもロング・カットでジャン=クロード・ヴァン・ダムが息切れするまでの全アクションを1カットで撮っている。導入からツカミもOK。


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