Avator


2009年12月27日(日)「アバター」

AVATAR・2009・米/英・2時間42分

日本語字幕:丸ゴシック体下、戸田奈津子/シネスコ・サイズ(HDCAM、IMAX版は1.78、2D版と3D版は2.35)/ドルビーデジタル、dts(IMDbではドルビーデジタルのみ)

(米PG-13指定)(日本語吹替版、3D上映、IMAX上映もあり)

公式サイト
http://movies.foxjapan.com/avatar/
(音に注意。全国の劇場案内もあり)

ジェイク・サリー(サム・ワーシントン)は脊椎を損傷し海兵隊を退役したが、科学者の兄トミーが暴漢に襲われて死亡したため、兄の仕事を引き継ぐため「アバター・プロジェクト」にスカウトされ、海兵隊とともに惑星パンドラへ派遣される。そこで進められていたのは、地下に埋まっている鉱物を採掘する事業。しかしその上に先住民のナヴィ族の居住地があったことから、ナヴィ族との交流を図るためナヴィ族と人間のDNAから作られた肉体であるアバターに、人間の意識をリンクさせて操る方法が取られていた。ところが最近それがうまくいかなくなり、関係は悪化の傾向にあった。科学者たちは新たなアバターを投入する計画だったが、開発会社と護衛のため派遣された海兵隊は、力による強引な方法を考えていた。ジェイクはトミーが使うはずだったアバターを、DNAが近いという理由から使うことになり、ある部族へ派遣される。そんな時、海兵隊の司令官マイルズ大佐(スティーヴン・ラング)が、ナヴィ族の情報を教えてくれれば、健康な足を与えると申し出る。

76点

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 何という映像美。3D上映で見たが、薄く緑色の付いた3D眼鏡でもキレイだったのだから、たぶん2Dの裸眼で見たらどんなにキレイだったことか。完璧な異世界が、圧倒的なリアリティをもって162分間たっぷり堪能できる。まるで夢を見ているようなというか、その世界へトリップしていたような感じが味わえる。これがすごい。

 地球と似ていない景観、人間の倍ほども背丈のある大きな青い皮膚の異星人、恐竜のような生物、空中を漂うたんぽぽの種子のようなというか、クラゲのような生物、そして宇宙海兵隊のヘリのような兵器、パワーローダー、透過式の立体スクリーンを持ったコンピューター、アバターとリンクする設備……などなど、見たこともないものばかり。

 モーション・キャプチャーを使っているにも関わらず、あまりのCG臭くないところも素晴らしい。ロバート・ゼメキスはジェームズ・キャメロンの爪の垢を煎じて飲んだ方が良い。

 ただ、それでもストーリーはよくあるパターン。この類いの話は何回となく作られてきている。特にハリウッド映画では。文明人が未開の土地に侵入し、現地人と交流して人間本来の生き方に目覚めるというようなパターン。それは相手がインディアンだったり、アマゾンの原住民だったり、地底人だったり、いろいろだが。最近で言えば「ラストサムライ」(The Last Samrai・2003・米)がまさにこのパターン。野蛮人だと思っていた日本人が、実はそうではなかったというお話で、最後はさながら戦争映画のような激しい戦いが描かれる。本作も全くそのパターン。そこに「もののけ姫」(1997・日)のような自然破壊、そして自然からの手痛いしっぺ返しも盛り込んでいる。

 たぶんストーリーと絵を純粋に楽しむには2Dの方が良いと思う。3Dはその効果に気が引かれて集中できない。しかも、どうも黒澤映画のようにパンフォーカスになっていないと効果が出にくい気がする。そして、3D映画に違和感が一番の原因は、ピントの問題だと思う。現実世界では、見たいところに自分でピントを合わせることができるのに、3D映画ではパンフォーカスでないとピンがぼけて写っているものは、どうやってもピントが合わない。もともと映画は作り手が見せたいものにピントを合わせて撮るという演出方法もあるため、相いれないのだ。さらに字幕版ではその3D的位置は常に同じ。そこに視線は必ず行くからより違和感を感じやすい。2Dなら、細部までじっくり見るのは別として、画面全体が一瞬で把握できる。

 たぶん記憶が確かならば、シャッター式の3D映画を最後に見たのは、ジャン=ジャック・アノー監督の「愛と勇気の翼」(Wings of Courage・1995・米/仏)だったと思う。日本は1997年公開で、まだ液晶シャッター式のゴーグルが大きくて重く、わずか40分版の上映でも疲れたことを覚えている。I-MAX版だったので、2Dでも立体感があるのだが、飛行機の翼が画面を横切るなど立体感を強調する演出があちこちにあったのを覚えている。効果的にはあれとたいして変わらない。ただゴーグルが小さく軽くなって、ちょっと明るくなっただけというか。

 I-MAXの3Dは日本では結局うまくいかず、新宿の劇場はなくなってしまった。その後、ジェームズ・キャメロンのI-MAXの3Dドキュメンタリー作品「タイタニックの秘密」(Ghosts og the Abbys・2003・米)もあったのだが、I-MAX劇場で公開されたものの59分版を45分に短縮しての上映。DVD版は90分だったから余計に腹が立った。たぶんゴーグルが大きくてという理由で40分前後をリミットと判断したのだろう。悪い印象しか残っていない。ただ、この時開発された技術が本作で生かされているのだと思う。

 主役のジェイク・サリーを演じたのはサム・ワーシントン。「ターミネーター4」(Terminator Salvation・2009・米ほか)で人造人間のマーカス・ライトを演じていた人。オーストラリア生まれで、日本劇場未公開だがシェイクスピアの「マクベス」をギャング映画に置き換えた「マクベス ザ・ギャングスター」(Macbeth・2006・豪/独)で主役のマクベスを演じていた。なんとこれから公開される「タイタンの戦い」でも主演しているらしい。素晴らしい。ノリにノってる。M60のようなマシンガンを使っていた。

 素顔が出ないが、たぶんモーション・キャブチャーでナヴィ族のある部族の族長の娘ネイティリを演じていたのは、ゾーイ・サルダナ。つい最近「スター・トレック」(Star Trek・2009・米)で異星言語学者のウフーラを演じていた美女。その前には時間逆転ドラマ「バンテージ・ポイント」(Vantage Point・2008・米)で、テレビ・リポーターを演じていた。

 アバター・プロジェクトの主任科学者グレースを演じたのは、ベテラン女優のシガーニー・ウィーヴァー。オリジナル版「エイリアン」(Alien・1979・米/独)の主演女優だ。1949年生まれというから、なんと61歳。そうは見えなかった。「バンテージ・ポイント」でゾーイ・サルダナと共演している。本作は「愛は霧のかなたに」(Gorillas in the Mist: The Story of Dian Fossey・1988・米)の研究者のような位置づけ。

 海兵隊の司令官マイルズ大佐を演じたのはスティーヴン・ラング。悪役が多い人で、シルヴェスター・スタローンの密室アクション「D-Tox」(D-Tox・2002・米/独)にも出ていた。最近は「パブリック・エネミーズ」(Public Enemies・2009・米)で応援捜査漢を演じていた。本作では奇妙なリボルバーを使っている。

 開発会社のこすい男を演じたのは、こんな役をやらせると実にうまいジョヴァンニ・リビジ。「パブリック・エネミーズ」でスティーヴン・ラングと共演しているが、最近では「閉ざされた森」(Basic・2003・米/独)が良かった感じ。

 女性ヘリ・パイロット、トゥルーディを演じたのはミシェル・ロドリゲス。「ガールファイト」(Girlfight・2000・米)のボクサー役でデビューした人で、「S.W.A.T.」(S.W.A.T.・2003・米)でも男に負けないタフな隊員を演じていた。どうも監督のジェームズ・キャメロンは「エイリアン2」(Aliens・1986・米/英)の女性海兵隊員ヴァスケスのように、男っぽい感じの女性が好きなのかもしれない。

 族長エイトゥカンを演じたのは、本当にチェロキー族のウェス・ステューディ。傑作西部劇「ラスト・オブ・モヒカン」(The Last of the Mohicans・1992・米)、SFアクション「ザ・グリード」(Deep Rising・1998・米)、日本劇場未公開だがおもしろかった西部劇「セラフィム・フォールズ」(Seraphim Falls・2006・米)などに出ている。

 ネイティリの許嫁ツーテイを演じたのはラズ・アロンゾ。「セントアンナの奇跡」(Miracle at St. Anna・2008・米/伊)で若い伍長を演じていた人。「ワイルド・スピードMAX」(Fast & Furious・2009・米)でミシェル・ロドリゲスと共演している。

 製作・監督・脚本はジェームズ・キャメロン。劇場長編映画としては「タイタニック」(Titanic・1997・米)以来13年ぶりの新作ということになる。3Dとしては12分のアトラクション用に作られた「T2 3D: Battle Across Time」(1996・米)から関わり、「タイタニックの秘密」を経て3作目になる。すでに次作「Battle Angel」(2011)の製作に入っている。

 公開5日目の3D上映字幕版初回、新宿の劇場は全席指定で、前日に700円の差額を払ってどうにか空いている席を確保し。30分前くらいに着いてコーヒーを飲みながら待っていると10分前くらいに開場。劇場入口で3D眼鏡を渡されて場内へ。

 男女比は半々くらいで、年齢層は若い人から中高年まで幅広く、最終的には287席ほぼすべてが埋まった。

 上映数分前に3D眼鏡の説明があり、ほぼ暗くなってCM・予告。気になったのは……スクリーンが左右に広がってシネスコになり、「パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々」のちょっと長い新予告。ようやくストーリーがわかるものになった。「This is a pen」というセリフが笑わせてくれる。

 ティム・バートンの「アリス・イン・ワンダーランド」は3Dでの予告。ファンタジーなので飛び出しやすい意図的な絵が多く、良く効果が出ていた。特にチェシャ猫の顔は客席の方まで飛び出してくる。日本語吹替版での予告。

 劇場予告ではないが、なんと木村拓哉主演で実写版「宇宙戦艦ヤマト」の「SPACE BATTLESHIPヤマト」が作られるらしい。艦長に山崎努、森雪に黒木メイサ、監督は「ALWAYS 三丁目の夕日」(2005・日)の山崎貴なので期待できそう。一部で映像が流れている。


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