Ong Bak 2


2010年1月9日(土)「マッハ!弐」

ONG BAK 2・2008・タイ・1時間38分(IMDbで欧州版は110分)

日本語字幕:細丸ゴシック体下、風間綾平/シネスコ・サイズ(マスク、Super 35)/ドルビー・デジタルEX

(米R指定、日PG12指定)

公式サイト
http://www.klockworx.com/movies/movie_82.html
(全国の劇場リストもあり)

15世紀、タイではアユタナによる統一が進んでいた。現王朝の東国4将の1人も襲撃され、その息子ティン(トニー・ジャー)だけがからくも逃げ延びるが、奴隷市場でワニの井戸に投げ込まれてしまう。あわやという時、山賊の「ガルーダの翼峰」一味がそこを襲撃、ボスのチューナン(ソーラポン・チャートリー)に救われ、息子としてさまざまな武術を教わりながら育てられる。すべての技を究め、一人前の山賊として認められると、ティンは父母の敵を撃つため旅に出る。

71点

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 ハリウッド映画のようなクォリティの音質と、格調高い絵作り。これは日本を越えている気がする。そして、またまた超人的なアクションの数々。98分間、ほとんどアクションのみといっても良いほど。そのおかげでさっぱり心に残らない。そこが残念。オリジナルは欧州版のように110分有るのではないかという気がする。

 またまた、例によってチラシには「1.CGを使いません」「2.ワイヤーを使いません」「3.スタントマンを使いません」「4.早回しを使いません」「5.今回はムエタイ以外も使います」の宣言がされているが、今回もかなり怪しい。なにしろエンド・ロールにCGスタッフ、アニメーターの名前がたくさん出る。弓の矢や飛び散る血糊はたぶんほとんどCG。ひょっとすると象の群れもCGじゃないだろうか。そして、主演のトニー・ジャーはスタントマンを使っていないだろうが、彼以外のやられ役はほとんどスタントマンのはず。うまいやられ役がいて初めて良いアクションが成り立つ。パンチとかは当たっているし! 早回しはしていないが、スローは多用されている。

 ちょっと「ラストサムライ」(The Last Samurai・2003・米)のようなところもあるし、「スター・ウォーズ/帝国の逆襲」(The Empire Strikes Back・1980・米)のようなところあって、「13金」のホッケー・マスクのようなものも使われている。実際、武士も当時タイに行っていたようだが、日本市場を意識したのか、チャンバラがあるし、忍者も登場する。映画好きということなんだろうか。

 脚本は大味で尻切れトンボ。しかも1本調子。こんな終り方? カラスみたいな刺客はどうなったのか。そもそもセンパとかいう盲目の老人の予言では天下を取るようなことを言っていたではないか。ただアクションがすごいだけでは印象に残らない。見ている時だけスゴイと思うけど。いいストーリーがあって、技の凄さが生きてくるのではないだろうか。「チョコレート・ファイター」(Chocolate・2008・タイ)を参考にした方が良い。

 ほとんど必要ないシーンで、前作でトニー・ジャーを騙すせこいチンピラを演じていたタイの有名なコメディアン、ペットターイ・ウォンカムラオが出てきて鈴のブレスレットを盗まれる。うむむ。他の使い方がいくらでもあったのでは。

 主演のトニー・ジャーは、今回、監督・原案・武術指導も兼任。それでアクションのみになってしまったのかもしれない。ピクサーの最初の劇場3D-CG作品「トイ・ストーリー」(Toy Story・1995・米)が、最初技術に偏向して作ってしまい当時のCEOだったスティーヴ・ジョブスから作り直しを命じられたという話に似ている気がする。アクションと絵作りは良いんだけどなあ……。

 共同監督はトニー・ジャーの師匠パンナー・リットグライ。「チョコレート・ファイター」のアクション監督で、トニー・ジャーの出世作「マッハ!」(Ong-Bak・2003・タイ)でもアクション監督をやっていた。ただペットターイ・ウォンカムラオ主演の監督作「ダブルマックス」(The Bodyguard・2004・タイ)と、「七人のマッハ!!!!!!!」(Born to Fight・2004・タイ)はどちらも感心しない出来。

 山賊のボス、チューナンはソーラポン・チャートリー。実在のおかまボクサーの半生を描いた「ビューティフル・ボーイ」(Beautiful Boxer・2003・タイ)に出ていたらしいが見ていない。

 幼なじみのダンスを踊る美女ピムはプリモラータ・デジュドム。詳細は不明。最後にちょっと出るカラスみたいな刺客を演じたのはダン・チューポン。「ロケットマン!」(Dynamite Warrior・2006・タイ)で主役のロケットマンを演じていた人。マスクで顔があまりわからないようになっていた。夜叉のように顔をした大男の名前はわからなかったが、とても印象に残った。

 公開初日の初回、新宿の劇場は全席自由で、45分前に着いたら10人くらいの行列。ほとんどは20〜30代くらいの男性で、女性は0。35分前くらいになって開場し、その時点で16〜17人。女性は2〜3人。

 この劇場は前席が邪魔になる古い劇場で、上映が始まるまで前の席にどんな人が座るかドキドキのサスペンス状態。混むと最悪。最終的に224席に6〜6.5割りほどの入り。助かった。年齢層は、お父さんに連れられた小学生から中高年まで。メインは20〜30代くらい男性。

 ロビーで「おはようございます」の声が飛び交っていたが、関係者か。そういえばアンケート用紙を配っていた。驚いたことに、場内は暖房が効いておらず、寒気だけだったようでロビーよりも寒かった。多くの人が場内でもコートを着たまま鑑賞。どうなっているんだろう。歌舞伎町ではこんな劇場が多かったが、衰退の原因はこのへんにもあるだろう。

 アナウンスの後、暗くなってスクリーンがシネスコからビスタになり、始まった予告編で気になったのは……なぜか今頃、上下マスクでシャマランの「エアベンダー」の古い予告。ずいぶん間があいた気がするが、そろそろ新バージョンを流しても良いのでは。公開はアメリカで夏とのこと。

 「シャーロック・ホームズ」は内容がわかる新しいバージョン。もうこれはほとんどアクション映画といっても良い感じ。ガイ・リッチーが監督なので、かなり暴力的。いままでのイメージとは違うシャーロック・ホームズが見られそう。これでちゃんとミステリーになっていたら面白いだろう。楽しみ。

 上下マスクの「パラノーマル・アクティビティ」は135万円で製作された映画が、95億円を超える興収を上げたと話題のホラー。観客のリアクションを使った予告だが、「もうヤダー」とか大げさに叫んでいて、思わず「だったら見るな」と言いたくなってしまった。


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