Unstoppable


2010年1月8日(土)「アンストッパブル」

UNSTOPPABLE・2010・米・1時間39分(IMDbでは98分)

日本語字幕:手書き風書体下、林 完治/シネスコ・サイズ(Clairmont、マスク、Super 35)/ドルビー・デジタル、dts、SDDS

(米PG-13指定)

公式サイト
http://movies.foxjapan.com/unstoppable/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

ペンシルバニア州ブリュースターのミンゴ操車場で、勤続28年のベテラン機関士フランク・バーンズ(デンゼル・ワシントン)と、会社にコネを持つ新人車掌のウイル・コルソン(クリス・パイン)は、初めて組んで1206号に乗り込み、39両の貨車を連結してウィルキンス方面に向かう。同じ頃、ペンシルバニア州ウィルキンスのフラー操車場で、ブレーキ・ホースが外れたままの貨物列車777号がゆっくりと走行中、ポイントが切り替えられていなかったため、機関士のデューイー(イーサン・サプリー)はアイドルにして飛び降り、ポイントを切り替えて運転席にもどろうとしたところ、コントローラーが動いて加速を始め、ブリュースター方面に向かい無人のまま走り去ってしまう。

73点

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 実話の映画化。とてもよく出来ていて、はらはらどきどき、そして最後には感動する。ついにやった!という達成感。列車の暴走はすごい迫力で、派手な爆発も用意されている。次から次へと危機が襲い、一体どうやって切り抜けるのか、目が離せなくなる。

 しかも登場人物たちにはそれぞれドラマというか、心に抱えている問題があって、それも含めながら列車は走っていく。実にうまく構成されている。多少オーバーなところはあるが、特に誰が悪役というわけではなく、ちょっとしたミスの積み重ね、判断のミスが、事件を徐々に大きくしていく。これは実際に良くあることだろう。その辺もおもしろい。

 ただ、どこかで完全にのめり込めないところがある。たぶんそれは、主人公の1人フランクが自信満々で、あまりにも正しすぎることや、最初のきっかけとなるミスする機関士や、ミス連発の対策を指示する鉄道会社の幹部ガルビンが、コメディほどではないもののおバカすぎてリアリティがないからだろう。配役もわかりやすくするつもりだったのだろうが、みなやや太めで、人は良さそうなのにガンコでドジという、絵に描いたようなおバカ風の人ばかり。完璧な主人公とあまりに対極。もし、もっと普通の人というか、まじめそうな人を選んでいたら印象は変わっていたのでは。ただ、もっと重くなっていた可能性はあるけど。適度に軽く仕上がっていて、爽やかな作品に仕上がっているのはそのおかげもあるだろう。むずかしいところ。

 同じ列車暴走ものでは、黒澤明原作の「暴走機関車」(Runaway Train・1985・米)とか、ジーン・ワイルダーの「大陸横断超特急」(Sliver Streak・1976・米)がある。やはりどこか似た感じが。パニックものでは「カサンドラ・クロス」(The Cassandra Crossing・1976・英/独/伊)なんてのもあったけど。

 ヒーローを演じたのはデンゼル・ワシントン。つい最近「ザ・ウォーカー」(The Book of Eli・2010・米)に出ていたが、今回はその前の残念なリメイク作品「サブウェイ123激突」(The Taking pf Pelham 123・2009・米/英)に似ていなくもない。ただ、最近はどれもいまひとつ。良かったのは「インサイド・マン」(Inside Man・2006・米)や「デジャヴ」(Deja Vu・2006・米/英)、「マイ・ボディカード」(Man on Fire・2004・米/英)あたりか。本作では娘の誕生日も忘れるワーカホリックという感じだが、有りがちすぎる設定ではないだろうか。

 相棒の新人ウイル・コルソンはクリス・パイン。あの痛快SF「スター・トレック」(Star Trek・2009・米/独)で若き日のカーク船長を演じた人だ。どちらもまっすぐな青年という感じだが、本作は会社の重役とコネがあるというのは新しいものの、離婚問題に悩んでいるなどはやっぱりありがち。ハリウッド・システムに乗っかってできた脚本ということか。

 鉄道会社の運転指令所のコニーはロザリオ・ドーソン。「シン・シティ」(Sin City・2005・米)や「グランイドハウス」(Grindhouse・2007・米)ではエロティックな役を演じていたが、「RENT/レント」(Rent・2005・米)では見事な歌声も披露している。最初に印象に残ったのは「メン・イン・ブラック2」(Men in Black II・2002・米)だったか。

 指示ミスを連発する鉄道会社の幹部ガルビンはケヴィン・ダン。気のいいお父さんとか、あまり頼りにならない将軍とか、そんな役が多い人。「トランスフォーマー」(Transformers・2007・米)とか、ちょっと前だと「GODZILLAゴジラ」(Godzilla・1998・米/日)の軍人とか。本作はパターンすぎという気がするが。

 ドジな機関士機関士のデューイーはイーサン・サプリー。オタッキーな役が多い人で、実録スポ根「タイタンズを忘れない」(Remember the Titans・2000・米)と病院乗っ取り事件を描いた「ジョンQ」(John Q・2002・米)でデンゼル・ワシントンと共演している。前はこんなに太っていなかったと思うが、最近はかなりすごい。

 通過する列車の外側にある燃料カット・ボタンを射撃して押すために警察官たちが使うのはM16A2ライフル。残念ながらうまくいかないが。

 脚本はマーク・ボンバック。なんと「アダム―神の使い 悪魔の子―」(Godsend・2004・米/加)、「ダイ・ハード4.0」(Live Free or Die Hard・2007・米/英)、「彼が二度愛したS」(Deception・2008・米)、「ウィッチマウンテン/地図から消された山」(Race to Witch Mountain・2009・米)と、面白い作品ばかりを手掛けている。それでなぜ、悪くはないんだけど、本作のようになってしまうのか。こういうスペクタクル作品はあまり向いていなかったのかも。実話ベースだし。それで他の作品を参考にしたとか……。すごい実力の人だと思うのだが。

 監督はスコット兄弟の弟、トニー・スコット。デンゼル・ワシントンとの仕事は多い。「デジャヴ」や「マイ・ボディカード」、「エネミー・オブ・アメリカ」(Enemy of the State・1998・米)、「スパイ・ゲーム」(Spy Game・2001・独/米ほか)などはすごく良かったが、「サブウェイ123激突」は残念。出世作は「トップガン」(Top Gun・1986・米)だろうか。「ビバリーヒルズ・コップ2」(Beverly Hills Cop II・1987・米)とか、たまにハズレもあると。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、前日に確保しておいて、30分ほど前に到着。15分前くらいに開場となって、場内へ。中高年がメインで、20代は1/4ほど。女性は1/3くらいだった。最終的には301席に5割りくらいの入り。もうちょっと入ってもいい気がするが。

 気になった予告編は……上下マスクの「唐山大地震」は32年前に起きた地震と、それによって引き裂かれた家族を追うらしい。中国では大ヒットしたんだとか。「戦場のレクイエム」(集結號・2007・中)のフォン・シャオガン監督なので面白いかもしれない。

 上下マスクの「RED/レッド」は新予告に。同じく上下マスクの「ソーシャル・ネットワーク」も新予告に。

 左右に広がって日本語吹替で「ガリバー旅行記」の予告。確かに3D上映というのは向いているだろう。「ナイトミュージアム」(Night at the Museum・2006・米/英)のスタッフらしい。確かに印象が似ている。主演はジャック・ブラック。「ナルニア国物語 第3章アスラン王と魔法の島」も日本語吹替の新予告。末っ子のルーシーが大きくなってビックリ。おもしろそう。画面が大きいのですごい迫力。

 上下マスクの「ウォール・ストリート」も新予告に。なんだか怖そうな感じ。娘のオヤジは飛んでもない男だと。


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