Rengoukantai Shireicyoukan Yamaamoto Isoroku


2010年12月25日(日)「聯合艦隊司令長官 山本五十六」

2011・バンダイビジュアル/東映/木下グループ/ワタナベエンターテインメント/東映ビデオ/テレビ朝日/寿スピリッツ/SBIホールディングス/ブロードメディア・スタジオ/アサツーディ・ケイ/吉田正樹事務所/ディ・コンプレックス/フードテセィスカバリー/エネット/新潟新聞社/BSN新潟放送/NST新潟総合テレビ/TeNYテレビ新潟/UX新潟テレビ21/アオイコーポレーション/読売新聞社/山陽編集/デスティニー・2時間20分

ビスタ・サイズ/ドルビー・デジタル

(一部日本語字幕付きもあり)


公式サイト
http://www.isoroku.jp/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

1939年(昭和14年)、泥沼化する支那事変に英米が圧力を強める中、日本は日独伊の三国軍事同盟をめぐって意見が対立していた。賛成の陸軍は反対する海軍を挑発し、新聞記者たちも海軍をやり玉に上げていた。その海軍内部も賛成と反対に割れていたが、海軍省の海軍大臣米内光政(柄本明)、次官の山本五十六(役所広司)、軍務局長の井上成美(柳葉敏郎)らは明確な反対派だった。そして一旦は三国軍事同盟が棚上げとなり、山本は海軍大臣により8月30日、連合艦隊司令長官に任命される。そして9月1日、ヨーロッパでドイツがポーランドに侵攻し、第二次世界大戦が勃発、あっという間に各国を占領し、1940年6月にはパリをも陥落させてしまう。再び三国軍事同盟が浮上し、9月27日ついに同盟を締結。10月には東条英機が内閣総理大臣に就任。山本は開戦反対論者だったが、戦争開始早期に講和へ持ち込むため、密かにハワイの真珠湾にいるアメリカの太平洋艦隊を襲撃する作戦を進めさせる。12月8日、日米交渉の決裂を受け、最後通告を確認させた上で奇襲攻撃を仕掛ける。しかし、真珠湾には肝心の空母がおらず、山本は作戦は失敗と判断するが、軍令部は大勝利と発表、日本国内は多いに湧き上がる。

75点

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 1939年から1943年4月18日の戦死までの4年間を描く山本五十六の物語。物語なので多少、実際とは違うこともあるのだろうが、大変にわかりやすく、うまくまとめられている印象。駐在武官としてアメリカに住んだこともある人なので、より世界を良く知っていたのだろう。現代人の目から見れば、山本五十六の主張はもっともだし、説得力があり、納得できる。軍人でありながら、戦争に反対し、戦争になったらいち早く講和を望んだというのは素晴らしいと思う。未来を見通していた偉人だと思える。しかし、一体、普通の人があの当時にそういう視点を持てたかどうか。

 ちょうどNHKでは「坂の上の雲」が放送され(12/25放送が最終回)、日露戦争(1904〜1905年)で常備兵力だけでも15倍以上に匹敵する超大国のロシアに勝ってしまったエピソードが語られており、軍部のみならず一般人までもが自信を持ったことがこの太平洋戦争につながっていることがわかる。そして、幕末、戊申戦争の薩長もつながっており、北越戦争の長岡藩までつながってくる。山本五十六は長岡出身なのだ。この辺も興味深い。

 そして、5年間に8人も首相が替わり、国内は不景気で出口の見えない不満がうっせきしている……と、いまの状況と似たような状況。これもプロデューサーとしては狙い所だったのだろう。

 戦闘がメインではないが、海戦シーン、零式戦闘機、一式陸上攻撃機、P-38ライトニングなども実に良くできている。護衛の零戦が増槽を捨てて攻撃に向かうところなど、素晴らしい出来。すべて3D-CGかとおもったら、ミニチュアも使われているようで、合成が上手いため、どう撮ったのかわからない。かつては、ひと目で特撮とわかったものだが、いまはレベルが高くてリアル。素晴らしい迫力。ただ、銃は残念ながら陸軍の三八式歩兵銃らしいライフルしか出てこない。

 ひとつ惜しいのは、やはりオール・スター・キャスト状態で、ちょい役でも有名俳優が出ていると、どうもちょっとだけ顔出し出演という感じがしてしまうこと。特に公開時期が近いと、どちらの作品に力を入れたんだろうとか思ってしまう。

 最後に、リボンの少女がどうなったのか見たかった気も。

 出演者中、もっとも説得力があり、うまいのは、当然ながら山本五十六を演じた主演の役所広司。この人は何を演じてもうまい。自然なリアルさがある。たくさんの賞を受賞しているベテラン俳優だ。渡辺謙のようにもっと国際的に活躍していい人だと思うが、あまり英語が得意でないとか、何か障害があるのだろうか。有名なところでは「SAYURI」(Memoris of a Geisha・2005・米)と「バベル」(Babel・2006・仏/米/メキシコ)あたり。「THE有頂天ホテル」(2005・日)のようにコメディも違和感なくこなす。ダイワハウスのCMのおもしろさもこの人ならでは。

 ほかの登場人物は出番も少なく、掘り下げも浅いので、群像の1人という感じで印象には余り残らない。タイトルが山本五十六だから、これはしようがない。せいぜい事態を冷静に見ている小料理屋の女将の瀬戸朝香と、そこの常連客でダンサーの田中麗奈が、役として際立っているくらいか。

 激動の4年間を2時間20分にうまくまとめたのは、長谷川康夫と飯田健三郎。2人は一緒に「ホワイトアウト」(2000・日)、「亡国のイージス」(2005・日)、「ミッドナイトイーグル」(2007・日)、「真夏のオリオン」(2009・日)などを書いている。アクションもの、軍事ものに強いらしい。長谷川は1953年の北海道生れで、飯田は1964年の鹿児島生れと、結構離れているようだが、タッグを組むことが多い。そして原作者の半藤一利と、五十六の長男の山本義正が、それぞれ監修と特別協力で付いている。

 どこからがミニチュアなどを使った特撮で、どこからがCGなのかわからないほどレベルの高い特殊効果。どういう役割分担なのかわからないが、クレジットによると特撮監督は佛田洋。1961年、熊本生れとか。TV版、劇場版を含め「仮面ライダー」などの戦隊ものを多く手掛けている人だ。対局にあるような作品だと思うが、本作は効果が表に出ることなくリアルに徹して作られているところが素晴らしい。「男たちの大和/YAMATO」(2005・日)も手掛けている。VFXディレクターは「どろろ」(2007・日)を手掛けた鹿住朗生。あの見事なビジュアルを作ったのだから、納得という感じ。本作でもうまくはまった。

 監督は成島出。1961年、山梨生れ。1994年からヤクザものなどの映画の脚本を手掛け、見ていないが役所広司主演の「油断大敵」(2003・日)で監督デビュー。ミリタリー・アクションの「ミッドナイトイーグル」も手掛けている。最近では「孤高のメス」(2010・日)や「八日目の蝉」(2011・日)というアクションとは関係のない作品を撮っているが、本作はさすがの演出力。堂々たる作りで、横綱相撲を見せられたような気分。今後はアクション系で期待したい。

 タイトルの文字は書道家、武田双雲。

 公開3日目の初回、銀座の劇場は全席指定で、金曜に確保しておいて35分前くらいに到着。外で待っているとまもなく開場。この時点で30〜40人くらい。久しぶりに2階席もある。観客層のほとんどは中高年というよりジジ、ババという感じ。まあ当然か。男女比は半々くらい。

 2Fからだとスクリーンはやや小さめだが、角度は見やすい。最終的に2Fはオヤジが4人。1F席はだいたい4割くらいの入り。まっ、こんなものか。2F席は知らない人も多いので、気楽でゆったりできる。

 気になった予告編は……上下マスクでサメに襲われた実在の女性サーファーを描く「ソウル・サーファー」は、なかなかタイトルがわからず苦労した。結局配役からあとで調べるハメに。こんなので予告の役に立つのか。有名俳優は、久々に名前を聞いたヘレン・ハントと、デニス・クエイド。6月。

 「イルマーレ」(時越愛・2001・韓)の監督の最新作、上下マスクの「青い塩」はソン・ガンホ主演の殺し屋の物語。面白そうだが、劇場次第かなあ。3/17から。

 「ピラミッド 5000年の嘘」は、ドラマではないのに、妙に気が引かれる。2/18から。どうしよう。やっぱり劇場次第か。

 NHKもついにTVドラマを映画化するらしい。渡部篤郎と真木よう子の「外事警察」は、公安の捜査で、ウラン流出事件で、韓国が関係しているらしい。とても暗い感じなのが引っかかるが……6/2から。うーむ。

 「HOME 愛しの座敷わらし」は普通のホームドラマかと思ったら、どうも座敷わらしが出てくるらしいが、どうなんだろう。座敷わらしと見せかけてのホームドラマとか……。4/28から。


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