Wild Seven


2010年12月24日(土)「ワイルド7」

2011・『ワイルド7』製作委員会・1時間49分

シネスコ・サイズ(ARRI)/ドルビー・デジタル

(デジタル上映もあり)


公式サイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/wild7/index.html
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

検事総長の成沢守(中原丈雄)の許可により警視正の草波勝(中井貴一)が作り上げた元凶悪犯からなる超法規的組織は、凶悪犯を抹殺するのが役目。アンダーグラウンドで「ワイルド・セブン」と呼ばれるようになっていたが、マスコミなどに決して出ることはなかった。新聞記者の藤堂(要潤)と後輩の岩下(本仮屋ユイカ)がそれを追っていたが、すべての処分された犯人は事故死扱いとなっていた。そんなとき、「ワイルド・セブン」が任務遂行中、バイクに乗った謎の人物が、先回りして犯人を射殺するという事態に。飛葉大陸(瑛太)はあとをつけるものの見失い、本間ユキ(深田恭子)と名乗るウエイトレスと出会う。そんなとき、ある研究所からアメリカ軍と共同開発した強力なウイルスが盗み出される事件が発生。要求に従わなければ飛行船から東京上空にばらまくという。草波は公安調査庁のPSUという組織と協力して捜査にあたることになる。PSUでは日本全国のすべての監視カメラをモニターしており、緊急時には操作さえできるようになっていた。そしてそれにより、犯人たちの所在が判明する。

72点

1つ前へ一覧へ次へ
 うーむ、悪くないが、どうにも説得力がないと言うか、リアルさに掛ける感じで、伝わってこない。とにかく撃ちすぎ。1発にちっとも重さがない。銃の怖さも全くない。そして、ワイルド7のキャラクターが中途半端。ベースが悪人なのに、キャラが描き込まれていないので、ラストで悪人を倒そうと力を合わせたり、仲間のために犠牲になろうとしたりして、良い人ぶりが描かれてもピンとこない。だから痛快さも余り感じられない。痛快アクションを作ろうとしているのはよくよわかる。そして、それは大変良いことだと思うのだが……。

 そして、微妙にオリジナルの「ワイルド7」とズレている感じ。違うのは漫画と映画だから当然あることだが、違うというよりズレている感じ。かつてのTVドラマ「ワイルド7」とも雰囲気はだいぶ違う。テーマ・ソングはラルクじゃなくて(年寄りには何いってるかわかんないし)、「♪何かありそうな、ワイルド・セブン♪」が、コテコテで古くさいかもしれないが、ピッタリくるなあ。

 メンバーがオリジナルの7人でないのも、オジサンには引っかかる。初代は、飛葉、世界、オヤブン、ヘボピー、チャーシュー、八百、両国だよなあ。本作ではチャーシュー、八百、両国がいなくて、かわりにソックス、パイロウ、BBQがいる。バイクはちゃんとそれぞれで変えられているが。

 やっぱり7人ものとしては、「七人の侍」(1954・日)のようにメンバー集めから描いて欲しかった気も。そうすればそれぞれのキャラも描き込めたのに。そしてワイルド7が誕生したところで、巨悪と戦って欲しかった。そうでないと、戦いの中で彼らが倒れていっても、何も感じない。

 アクションに関しては、派手は派手。ただ残念ながら、まだ「アイリス」や「アテナ」といった韓国TVアクションにも負けている感じ。技術的な問題じゃなく、やっぱり演出的な問題だと思う。韓国は軍役があるからなあ。銃を知らない人の演出だと、ただ数を撃つことになっちゃうのか。どこかハリウッドの真似。「ターミネーター2」(The Terminator 2: Judgement Day・1991・米/仏)や「マトリックス リローデッド」(The Matrix Reloaded・2003・米/豪)が見え隠れする。悪くはないのだが。なんだか、銃を撃つ時に色気がない。いいアクション映画は銃を撃つ時艶っぽい感じがする。

 飛葉=ウッズマン・カスタム=瑛太、セカイ=ガバメント・カスタム=椎名桔平、パイロウ=ベレッタM92F=丸山隆平、ソックス=ガバメント・シルバー・フレーム=阿部力、オヤブン=パイソン6インチ=宇梶剛士、ヘボピー=デザート・イーグル=平山祐介、B・B・Q=ワルサーPPK=松本実。それぞれのバイクは公式サイトのキャラクターをご参照いただきたい。僕にはメーカーも型式も判別できない。

 ほかに犯罪者はKG9、ミニ・ウージー、ウージー、Vz61スコーピオンなどを使用。ワイルド7のたむろする倉庫のようなところにはM60マシンガン、M134ミニガンなどがあった。本間ユキはグロック、警察のSITなどはP226、MP5、草波が使っていたのはUSP?。ラストの戦いでは飛葉はTMP SMG、セカイはM4カーピン、オヤブンは40mmミルフール・マルチ・ショット・グレネード・ランチャーらしいもの、ヘボピーはAT4対戦車ロケット・ウェポンのようなものを使う。贅沢なまでに多彩だ。カートリッジも派手に舞っている。手掛けたのはビッグショット。協力でタニオ・コバの名前があった。

 原作はもちろん望月三起也。1969〜1979年にかけて「週刊少年キング」(少年画報社)に連載された。「ワイルド7」はもちろんだが、「秘密探偵JA」とか「ケネディ騎士団」も良かったなあ。夢中になって読んだっけ。「新ワイルド7」はちょっとノレなかったけど。

 脚本は深沢正樹。TVの人で、「俺の空 刑事編」(2011・テレビ朝日系)や「サラリーマン金太郎」(2008・テレビ朝日系)、「相棒(Season 2)」(2003〜2004・テレビ朝日系)を手掛けている。ちょっと残念だった「交渉人THE NEGOTIATOR(第2期)」(2009・テレビ朝日系)も……。映画ではかなりバイオレンスたっぷりの「レイクサイドマーダーケース」(2004・日)を手掛けている。

 監督は羽住英一郎。大ヒットシリーズ「踊る大捜査線THE MOVIE」(1998・日)の助監督をやっていた人で、TVの「恋人はスナイパー」(2001・テレビ朝日系)は残念だったが、「海猿ウミザル」(2004・日)シリーズは大ヒット。ということは銃関係のアクションは向かないのかも。

 公開4日目の初回、銀座の劇場は初回のみ全席自由で、35分前くらいに着いて1Fのエレベーター前で待っていると、30分前くらいにボックス・オフィスが開いたようで、人が来てエレベーターに乗り込む。おっ、いつの間にエレベーターが劇場の階に止まるようになったんだろう。観客層は幼稚園くらいの男の子を連れたお父さんから、中高年までいたが、意外に20代くらいも多め。1/3は若い人たち。銀座らしくカップルが多い。男女比は6対4くらいで、やっぱり男性の方が多い。50代以上の人は原作漫画や実写TV版のファンだろうか。

 最終的には469席に3割ほどの入り。これはちょっと少ない気もするが、出来としてはこんなものか。

 シャンデリアのイベントなしの節電モードの「ツァラトゥストラはかく語りき」のあと、ほぼ暗くなって始まった予告で気になったのは……アニメの「ももへの手紙」は普通のドラマかと思っていたら、妖怪が出てくる話だったんだ。新予告になって初めてわかった。面白そうかも。

 上下マスクの「英雄の証明」はシェイクスピアの悲劇「コリオレイナス」を現代に置き換えた、レイフ・ファインズ製作・監督・出演の意欲作。まるでミリタリー系のパワー・ゲームのような雰囲気。期待できそう。

 上下マスクの「ハンター」は、ウィレム・デフォー主演のタスマニア・タイガーを探す男の物語らしい。ブルパップのボルト・アクション・ライフル(調べてみなければ)を使用。

 上下が狭まって、さらに左右に広がってシネスコ・サイズになってから、「シャーロック・ホームズ シャドウ・ゲーム」の新予告。すんごいスナイパー・ライフルが登場。大砲も出てきて、かなりのアクションらしい。面白そう。


1つ前へ一覧へ次へ