Les Miserables


2012年12月22日(土)「レ・ミゼラブル」

LES MISERABLES・2011・英・2時間38分(IMDbでは157分)

日本語字幕:手書き風書体下、石田泰子/参考:岩谷時子訳詞/ビスタ・サイズ(Arri、Super 35)/ドルビー・デジタル、DATASAT、SDDS

(英12A指定)


公式サイト
http://lesmiserables-movie.jp/
(音に注意〈動画が表示されないことも〉、全国の劇場リストもあり)

フランス革命から20年経った1815年、刑務所で重労働を課せられていた囚人ジャン・バルジャン(ヒュー・ジャックマン)は、パン1切れを盗んだ罪で5年の刑に服しながら脱走を図ったため刑期が延長され19年を経てようやく仮釈放される。しかし監視役のジャベール警部(ラッセル・クロウ)から、危険人物と書かれた仮釈放証明書は一生必要で持ち歩かなければならないと言われる。そのおかげで、働こうとしても身分証を求められ仕事が得られなかった。宿も食事も断られ、やっとたどりついた教会に受け入れてもらう。しかし心が荒んでいたバルジャンは洋食器を盗み、警官たちに捕まってしまう。もらったものだと言い訳したバルジャンは、確認のため教会へ連れて行かれる。すると司教は、彼の言うことは間違いない、これも上げようと思ったのだが、あわてて出たため忘れていったのだと、燭台まで袋に入れてくれる。釈放されたバルジャンは罪を悔い、神の前で生まれ変わることを誓い、証明書を破り捨てる。8年後の1823年、バルジャンはパリに近い市で工場を経営し、市長になっていた。そこへ、パリから派遣されたジャベール警部が着任の挨拶にやって来る。

75点

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 3D上映が無くて良かった。話題作だけに、また3Dかと思った。

 ほぼすべてのセリフを歌にしたミュージカル。通常のセリフから感情が盛り上がってくると歌に移行するのではなくて、ほぼすべて歌。苦手な人には最も苦手なタイプかもしれない。そして、内容は暗くて、悲惨で、ほとんど悪人ばかりで、猜疑心にあふれ、不寛容で、狭量で、利己的で、汚くて、悲しい……。しかもフランスの話で、登場人物はフランス人なのに、すべて英語。この辺が気になっても楽しめないかもしれない。

 多くの悪意の中の、わずかの善意。そして民衆とかい離してしまった日本の1960年代末から1970年代初めにかけての学生運動のような学生の武力闘争(フランスじゃあ150年前にやってたんだ)、血のつながっていない娘を命をかけて幸せにしようと奮闘する父、意地で犯罪者を追う官憲。

 最初ちょっとすべて歌というのが気になったものの、徐々に気にならなくなり、状況の厳しさに圧倒され、言葉を失い、ドーンと落ちつつも、ラストは感動で涙が……。まわりでも、あちこちでクシュクシュと……。

 銃はマスケット(前装小銃)とピストル。時代的にはパーカッションが登場していてもおかしくないと思えるが、どれもフリント・ロックのようだった。弾をキャスティングしているシーンもある。そして至近距離で発射する大砲。これが怖い。ただ、大砲は発射しても後座(車輪で)していないようだったが……。武器コーディネーターは傑作コミカル・アクション「キック・アス」(Kick-Ass・2010・英/米)、「キャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャー」(Capatin America: The First Avenger・2011・米)や傑作「ダークナイト・ライジング」(The Dark Knight Rises・2012・米/英)のアーマラー(武器係)を担当したベン・ロスウェル。アーマラーはダン・オズボーン。ほぼベン・ロスウェルと一緒に仕事をしている人だ。

 キャストの歌は吹替ではなく、実際に歌っているらしい。そして、すべてのキャストの歌のうまいこと。驚いた。もちろんうまい人をキャスティングしているのだろうが、女優陣は当然として、どちらかというとアクション派の2人の男優、ヒュー・ジャックマンとラッセル・クロウがこんなに歌がうまいとは。

 心底悪いテナルディエ夫婦を演じていたのは、ヘレナ・ボナム=カーターとサシャ・パロン・コーエン。実に嫌らしさが良く出ていた。ヘレナ・ボナム=カーターはだいたいエキセントリックな役が多いが、ちょっと大げさ過ぎた気がしないでもないか。そういう設定なのかも知れない。イギリス生れで、「英国王のスピーチ」(The King's Speech・2010・英/米/豪)でトム・フーパー監督と仕事をしている。サシャ・バロン・コーエンもイギリス生れで、もともとコメディアン出身の人。だからか脚本も書く。ティム・バートンの「スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師」(Sweeney Todd: The Demon Barber of Fleet Street・2007・米/英)でヘレナ・ボナム=カーターと共演している。

 あまり出番はないものの、かわいくて印象に残ったのは、コゼットの少女時代を演じたイザヘル・アレン。なんと劇場映画初出演というか、この前は学芸会で演技していたレベル。10歳だとか。雰囲気充分。今後が楽しみ。

 そして、宿屋の娘で、子供時代はかわいくないが、大人になってからイイ感じだったエポニーヌはサマンサ・パークス。実際に舞台版ミュージカルでエポニーヌを演じていて、劇場映画初出演。この人もこれから活躍しそう。

 同様に、学生と一緒に戦う少年ガブローシュはダニエル・ハットルストーン。劇場映画初出演で、2009年に「オリバー・ツイスト」の舞台に立っているらしい。こまっしゃくれた感じが抜群。今後楽しみ。

 学生のリーダー、アンジョルラスはアメリカ生れのアーロン・トヴェイト。主にTVで活躍していた人で、「ゴシップガール」などに出ていたらしい。コゼットの恋人となるマリウスはエディ・レッドメイン。日本映画のリメイク「イエロー・ハンカチーフ」(The Yellow Handkerchief・2008・米)で情けない男を演じていた人。

 原作はヴィクトル・ユーゴーが1862年に書いた小説「ああ無情」(邦題)で、それをミュージカル化した「レ・ミゼラブル」をベースにしている。脚本はミュージカル版を担当したアラン・ブーブリルとクロード=ミッシェル・シェーンベルクのフランス語版をウィリアム・ニコルソンが脚本化。ラッセル・クロウが主演した「グラディエーター」(Gladiator・2000・米/英)や「エリザベス:ゴールデン・エイジ」(Elizabeth: The Golden Age・2007・英/仏/米/独)を書いている人だ。訳詞はTVの「Glee」や英語版の舞台版ミュージカルも手掛けているハーバート・クレッツマー。

 監督は1972年、ロンドン生まれのトム・フーパー。TVから劇場長編映画3作目の「英国王のスピーチ」でいきなりアカデミー監督賞や作品賞を獲得した。前作はほとんどドラマばかりだったが、本作は戦闘シーンもあり、しかもミュージカル。才能あふれる器用な監督のようだ。次は何を撮るんだろう。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、金曜に確保しておいて30分前くらいに到着。15分前くらいに入口付近に人が集まり始め、まもなく開場となって場内へ。さすが話題作、若い人から中高年まで幅広かった。男女比は4.5対5.5くらいで、やや女性が多い感じ。あいかわらず遅れてくるヤツが多い。最終的には、たぶん607席に8割くらいの入り。

 関係者らしい男性が場内でずっとケータイを使っていて、これでは示しが付かないのでは。外でやれ。その影響か、男女を問わずあちこちでケータイを光らせているヤツがいた。隣の女は始まって10分くらいで電話がかかってきたのか、ケータイを開く。まぶしいって! 電源を切っておけ。とくに始まって間もなくはのめり込んでいないので、気が散る。入口で「ケータイの電源をお切りください」くらいは言った方が良いのでは。

 気になった予告編は、ウィル・スミスと息子のジェイデン・スミスが共演するSFサバイバル・アクション、上下マスクの「アフター・アース」。なかなか面白そう。息子、大きくなったなあ。2013年夏公開。

 上下マスク「フライト」はデンゼル・ワシントン主演で、監督はもうCGしか作らないのかと思ったロバート・ゼメキス。事故に襲われた旅客機を無事不時着させたパイロットが、血液からアルコールが検出され、終身刑に問われるというストーリーらしい。3/1公開。

 トム・クルーズは「アウトロー」以外にもアクション映画に出ているらしく、上下マスクのSFアクション「オブリビオン」が5月公開。共演はモーガン・フリーマン。面白そう。

 ブラッド・ピット主演のSFなのかゾンビ映画のようだった上下マスク「ワールド・ウォヘーZ」。ゾンビみたいな人間が塊で襲いかかってくるそれを家族で逃げると。凄そう。5月公開。

 なぜか場内で流行っていなかったが、ロビーの大型モニターでは「ダイ・ハード ラスト・デイ」の予告が。なぜかモスクワでロシア人みたいな息子と、また事件に巻き込まれて戦うことになるらしい。すごいアクション。2/14公開。


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