The Hobbit: An Unexpected Journey


2012年12月15日(土)「ホビット 思いがけない冒険」

THE HOBBIT: AN UNEXPECTED JOURNEY・2011・米/ニュージーランド・2時間50分(IMDbでは169分)

日本語字幕:手書き風書体下、翻訳者表記なし/シネスコ・サイズ(デジタル、IMDbではRed/1.44、1.85、2.35)/ドルビー・デジタル、DATASAT、SDDS

(米PG-13指定)(字幕版、吹替版/2D版、3D版、IMAX版/HFR版もあり)


公式サイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/thehobbitpart1/
(音に注意、全国の劇場リストもあり)

昔、豊富な金銀財宝により栄えたドワーフ族の王国エレボールで、アーケン石が発見され、国の宝とされた。その時、黄金に目のないドラゴンのスマウグがエレボールに侵入して城を占拠してしまう。ドワーフは国を失い、さまようことに。そして今から60年前、魔法使いで花火の名人のガンダルフ(イアン・マッケラン)がホビット族のビルボ・バギンズ(マーティン・フリーマン)の前に現れ、「冒険の仲間を探している」と言う。ビルボは嫌だと断わりガンダルフは去るが、その夜、続々とドワーフの戦士たちがビルボの家に集まり、予言通りの条件が整ったから国を取り戻す旅に出ると決める。そこへガンダルフが現れ、14人目として忍びの術が得意なビルボも仲間に必要と推薦する。乗り気ではなかったビルボは、結局加わることになり、まず古地図から手がかりを得るため、エルフの国を訪れることにする。

76点

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 IMDbでは8.8点という信じられないように高得点。確かに面白い。素晴らしいビジュアル。そして鮮明画質。高音質。サラウンド感。実に良くできている。「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズ・ファンには、待ってましたのたまらない作品だろう。ただ、一般の人にはそこまでかどうか……。面白かったけど、あまりに長くて、休憩も無く、眠くなって、お尻が痛い、3D眼鏡が重い、トイレが近い、疲れた……という感じ。

 字幕翻訳は表記なし。前シリーズの字幕版は色々問題になったので、表記しないことにしたのかもしれない。確かにファンというかマニアが多くいて、いろいろとうるさいのかもしれない。超ファンはときに作者をも超えることがあるわけで……。

 物語は、まさにシリーズ第1作「ロード・オブ・ザ・リング」(The Lord of the Rings: The Fellowship of the Ring・2001・ニュージーランド/米)と同じ始まり方。たぶん同じ日に始まる。今日は誕生日で、魔法使いで花火の名人のガンダルフが来ると。だからフロド・バギンズのイライジャ・ウッドもいる。ただ本作はそこからビルボ・バギンズの回想になるところが違う。ファンにはたまらない始まり方だろう。しかも、「ロード・オブ・ザ・リング」につながる指輪も、それを持っていたゴラムも、エルフの王妃ガラドリエルなどおなじみのキャストも何人か登場する。

 新たに採用されたHFRは素晴らしい。コマ数が通常の2倍の秒間48コマ。それだけで絵に立体感がある感じ。速いパンでもガクガクせず、暗いシーンでも細部まで見える。もちろん絵の解像度は高く、画質も優れている。シズル感さえ感じられるほど。生々しい。合成は自然で、まるでそこにいて同時撮影したかのよう。作る側は高度な技が必要になり、ますます難しくなっていくことだろう。ただ画質的にはハイビジョン・テレビのような感じもあった。映画的なフィルムの質感とはちょっと違う。そこがどう評価されるか。3Dはそこそこ立体感があった。ただ一番スゴかったのは冒頭のWBのロゴマークだったけど。HFRなのでたぶんそれに対応した新しい3D眼鏡。フィット感は悪くなく、あまり顔との間にすき間もできないが、長時間だと鼻のあたりが痛くなった。眼鏡の跡が付いていたかも。

 タイトルから始まったが、本当のタイトルがでるまでの長めのアバン・タイトルはカメラが動きまくっていて、よくわからなかった。オリジナルは1.44らしく、それをシネスコ・サイズで見たからなお強調されてしまったのだろう。それまでの過去の歴史、主に戦いを描くシーンで、カメラは動きまくり。戦闘がないシーンでもパンやティルト、クレーン、ズームなどでカメラは動きを停めない。同じ監督が取ったとは思えないほど。ここだけが気になった。

 ゲスト的な出演で、後年のビルボ・バギンズとしてイアン・ホルムが、フロドとしてイライジャ・ウッドが出ている。そしてエルフの王妃ガラドリエルとしてケイト・ブランシェット(立ち居振る舞いから、ものすごく美しく撮られている)が、サルマンとしてクリストファー・リーが、エルロンド卿としてヒューゴ・ウービングがでているが、彼らは歳を取るのが遅い設定なのか、ほとんど印象が一緒だ。役者としては「ロード……」3部作から10年ほど経過しているのに、それを感じさせない。まあメイクということもあるだろうけれど。その辺が驚き。シリーズ通しの出演者であるイアン・マッケランなど1939年生れだから73歳になっているというのに……。

 ゴラムは3D-CGキャラクターなので、演じたアンディ・サーキスの年齢は関係ないだろうが、表現がよりリアルになっていて、本当にこういう人がいそうだ。わずかしかない髪の毛も実に自然。これがCGだとは。今回から第2班の監督をアンディ・サーキスが務めているそうで、アバンが彼でないことを祈りたい。

 新しいキャラではないが、ビルボ・バギンズの若い日を演じたのはシリーズ初登場のマーティン・フリーマン。心温まる愛の群像劇「ラブ・アクチュアリー」(Love Actually・2003・英/米/仏)や、笑えるSF「銀河ヒッチハイク・ガイド」(The Hitchhiker's to the Galaxy・2005・米/英)、ファンの声で劇場公開された「ホットファズ 俺たちスーパーポリスメン!」(Hot Fuzz・2007・英/仏/米)などに出ていた人。それらより今回はちょっとほっそりして、若返ったような印象。実際は1971年生れだから41歳。見えないなあ。ちょっとダイヤモンドユカイに似ているような……。

 王の息子でグループのリーダー、トーリンを演じたのはリチャード・アーミティッジ。ヒゲと長髪でわからなかったが、イギリスの傑作TVドラマ「S.A.S.英国特殊部隊II」(Ultimate Force・2003・英)で将校役を演じていたらしい。その後、同じくイギリスのリアルなスパイTVドラマ「MI-5英国機密諜報部」(Spooks・2010・英)のシーズン7から出ているとか。最近では「キャプテン・アメリカ」(Captain America: The First Avenger・2011・米)に出ていた。

 あとのドワーフ族はだいたいヒゲと髪が長くて、鼻が団子鼻で大きく、みな似たような印象。キーリだけ二枚目な感じがした。演じたのはエイダン・ターナーで、主にTVで活躍しており、日本ではなじみがないと思う。しかし今後は注目かも。

 原作は、もちろん「ロード……」シリーズのJRRトールキンの「ホビットの冒険」。やはり3部作になるらしいが、1本3時間近いのでなかなかしんどい。原作のファンはこれでも物足りないのだろうが。

 脚本は4人の名前がクレジットされている。筆頭はフラン・ウォルシュ、そしてフィリッパ・ボウエン、そして監督のピーター・ジャクソン、最後に映画監督のギレルモ・デル・トロ。フラン・ウォルシュはフランシス・ウォルシュと表記されることもある女性で、監督のピーター・ジャクソンの奥さん。ピーター・ジャクソンの初期の作品からずっと脚本を担当している。「ラブリーボーン」(The Lovely Bones・2009・米/英/ニュージーランド)はどうかと思うが、「乙女の祈り」(Heavenly Creatures・1994・ニュージーランド/独)や「さまよう魂たち」(The Frighteners・1996・ニュージーランド/米)、「キング・コング」(King Kong・2005・ニュージーランド/米/独)は素晴らしいとしか言い様がない。プロデューサーも兼務。

 フィリッパ・ボウエンも監督のピーター・ジャクソン同様、太ったり痩せたりする人のようで、撮影された時期ごとに印象が全く違う。共同プロデューサーもかねる女性で、「ロード……」シリーズ以降、一緒に仕事をしているようだ。

 ギレルモ・デル・トロは素晴らしいミステリー・ホラー「クロノス」(Cronos・1993・メキシコ)で長編劇場映画監督デビューした、1964年メキシコ生れの人。監督作品より脚本作品の方が多く、それよりさらにプロデュース作品が多い。監督した「デビルズ・バックボーン」(El espinazo del diablo・2001・西/メキシコ)や「ブレイド2」(Blade II・2002・米/独)、「パンズ・ラビリンス」(El laberinto del fauno・2006・西/メキシコ/米)は面白いが、最近製作と脚本を担当した「ダーク・フェアリー」(Don't Be Afraid of the Dark・2011・米/豪/メキシコ)は相当酷い。間もなく公開を控えている監督作「パシフィック・リム」(2013)はどうなんだろう。最近は小説家としても活躍しているらしい。

 監督はピーター・ジャクソン。ストレスからなんだろう、作品ごとに激太り、激痩せする人。同じ人に見えないときがある。細いときはカッコいい感じ。ドワーフ族のようにヒゲと長髪がトレードマーク。映画監督は激務なんだろうなあ。ボクはマニアではないので、もう「ロード……」系は、いいかな。もちろん新3部作はすべて見るけど。別な新作が見て見たい。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は全席指定で金曜に確保しておいて、30分前暗いに到着。20分前くらいにトイレに行って、10分前に開場したが、コーヒーを飲んだこともあり長丁場なので念のためもう一度トイレに行って場内へ。それでも終わったときには膀胱がはち切れそうだった。1時間半くらいでインターミッションをはさんで欲しいなあ。

 観客層は、高齢者もいたが、中年層がメイン。若い人は少なかった。男女比はほぼ半々。関係者が2人くらい。場内がほぼ暗くなった時点では607席に3.5割くらいの入り。さすがに海外とは本作に対する熱に違いがあるようだ。

 気になった予告編は……スクリーンが左右に広がってから、大迫力の「クラウドアトラス」の新予告。トム・ハンクスとハル・ベリー、ペ・ドゥナ、……そして歴史物語のように見せて、実はSFというすばらしいビジュアル。気になる。3/15公開。

 木内一裕原作、三池崇監督「藁の楯」は、原作を読んでいるので、どんな作品になるのか楽しみ。4/26公開。

 一瞬西部劇かと思った「許されざる者」は渡辺謙主演、「フラガール」(2006・日)の李相日監督による北海道開拓秘話のような物語っぽかったが、イーストウッドの西部劇「許されざる者」(Unforgiven・1992・米)の翻案になるらしい。9/13公開。

 さらにリメイクで驚いたのは、3D眼鏡をかけるように指示があって「華麗なるギャツビー」。確かにショーなどは立体感があった。レオナルド・ディテカプリオ、トビー・マグワイア共演で、予告ではキャリー・マリガンが奇蹟のように美しい。監督がバズ・ラーマンなので、「ムーラン・ルージュ」(Moulin Rouge!・2001・米/豪)のように豪華なものになるのかもしれない。何度か映画化されていて、もうほとんど忘れてしまったが、ボクが見たのはロバート・レッドフォードの「華麗なるギャツビー」(The Great Gatsby・1974・米)。はたしてどんな映画になるのか。6/14公開。


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