Escape Plan


2014年1月12日(日)「大脱出」

ESCAPE PLAN・2013・米・1時間56分(IMDbでは115分)

日本語字幕:影付き丸ゴシック体下、林 完治/シネスコ・サイズ(マスク、with Panavision、IMDbでは一部デジタル、Arri Alexa)/ドルビー・デジタル、DATASAT、dts、SDDS(IMDbではドルビー・デジタル、DATASATのみ)

(米R指定)

公式サイト
http://dassyutsu.gaga.ne.jp
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

レイ・ブレスリン(シルベスター・スタローン)は民間セキュリティ会社の創設者の1人で、刑務所のセキュリティに関する専門書も出している脱獄のプロ。ある日、共同経営者のレスリー・クラーク(ヴィンセント・ドノフリオ)が、CIAの弁護士ジェシカ・マイヤー(ケイトリオーナ・バルフ)を引き合わせる。CIAが存在を消したいと思っている凶悪なテロリストなどを収監している極秘刑務所「墓場」のセキュリティ・チェックをして欲しいというのだ。刑務所側は所長が知っており、いざというときは脱出コードを伝えればいいことになっていた。そして会社の同僚で恋人のアビゲイル(エイミー・ライアン)と、ハイテク担当のハッシュ(カーティス“50セント”ジャクソン)がバックアップに当たることに。腕に発信機を埋め込むとまもなく、ブレスリンは何者かに襲撃され、腕から発信機を取り出された上、薬を打たれて昏睡。気が付くとアンソニー・ポルトスとして「墓場」にいた。しかも所長、ホブス(ジム・カヴィーゼル)という見たこともない男。脱出コードを伝えても、まったく反応なし。彼はブレスリンの本を参考に、絶対脱出不可能な刑務所を作り上げていた。

72点

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 面白い。何も考えずに、頭を空っぽにして正月に見るにはちょうど良い感じ。定石通りというか、大スターを使った横綱相撲というか、先も読めるし、どんでん返しも予想が付くものの、不思議と楽しめた。これがスターの力か。そしてCGを使ったビジュアルの力か。低予算だとこの手は難しいだろう。

 まず小さな事件で主人公の説明をする。どんな男で、どんな仕事をしているのか、どんな能力を持っているのかが。端的にわかるわけだ。そしてより困難な仕事の依頼があって、主人公がその解決に挑む。最後は大暴れして、大爆発の大団円を迎え、大どんでがえし。まさに絵に書いたような、手垢まみれのプロット。安心して見られる。

 厳重な警備で脱出不可能な刑務所から脱出するという、いわば大掛かりなマジックのような手口、つまりネタ明かしのようなところが見どころの1つなのだが、そこが本作はちょっと弱い。どうも出来過ぎていて、SFファンタジーのようで、まったく実際にできるとは思えないのだ。強引に大スターがやりとおしてしまうから、まあ、良いかという感じになってしまう。ここに説得力があったらもっと面白かっただろう。

 しかし、中盤のどんでん返しというか、ひとつの驚きのネタを、公式サイトや予告で明かしてしまっているのはどうなんだろう。まったく驚くことができない。主人公の心が打ち砕かれるところなのに、そのインパクトが全くなし。何てことだ。隠しておいて欲しかったなあ。うすうす読めるのと、最初から見せられてしまうのとでは、全く違ってくる。これはダメだろう。

 レイ・ブレスリンはシルベスター・スタローン。自身のプロデュースではないが、似たようなイメージの作品内容。もう70歳近いのにでる映画はほとんどアクション映画で、最近も良く出ている。肉体も鍛え上げていて、とてもおじいちゃんには見えない。このあと、新作でロバート・デ・ニーロと共演するボクシング映画「リベンジ・マッチ」が控えている。さらに2本がポス・プロ中で、1本が「エクスペンダブルズ3」とか。すごいなあ。

 囚人のエミル・ロットマイヤーはアーノルド・シュワルツェネッガー。ドイツ語をしゃべらせて「このドイツ野郎」なんてセリフもあるが、刑務所内でのポジションが今ひとつわかりにくかった。この人もほぼスタローンと同い歳で70歳近い。本作が俳優復帰2作目。すべてアクション作品。新作は「エクスペンダブルズ3」を含めポス・プロに入ったのが3本、プリ・プロが「ターミネーター・ジェネシス」で、アナウンスが2本というからスゴイ。スタローンを超えている。

 所長のホブスはジム・カヴィーゼル。どちらかというと悪役の多い人で、傑作SFアクション「デジャヴ」(Deja Vu・2006・米/英)にも出ていたが、最近は、なかなかおもしろいTVドラマ「パーソン・オブ・インタレスト犯罪予知ユニット」(Person of Interest・2011〜・米)で正義の味方をやっている。いかつさはないが、本作でも嫌らしい悪役を好演。

 ほかにも有名俳優はたくさん出ていて……ハイテク担当のハッシュは、ラッパーで映画の出演や製作も手掛けるカーティス“50セント”ジャクソン。存在感が薄かったがドクターにTV「アルカトラズ」(Alcatraz・2012・米/加)のサム・ニール。レイ・ブレスリンの同僚レスリー・クラークに「クロッシング」(Brooklyn's Finest・2009・米)のヴィンセント・ドノフリオ。暴力的な看守に「監獄島」(The Condemned・2007・米)のヴィニー・ジョーンズ……という感じ。

 美女は、同僚で恋人らしいアビゲイルにエイミー・ライアン。日本劇場未公開の「ゴーン・ベイビー・ゴーン」(Gone Baby Gone ・2007・米)でアカデミー賞助演女優賞にノミネートされた人。どうりであまりの馴染みがないわけだ。でも、どこかでみたと思ったら「グリーン・ゾーン」(Green Zone・2010・仏/米ほか)で記者を演じていたらしい。もう1人、CIAの弁護士ジェシカ・マイヤーはケイトリオーナ・バルフ。アイルランド出身で、最近では「グランド・イリュージョン」(Now You See Me・2013・仏/米)に出ている人。若く見えるが1979年生れというから34歳。

 原案・脚本はマイルズ・チャップマン。2006年からTVやビデオの脚本を書いており、劇場長編映画は本作が初めて。本作だけではなんともいえない。果たして次作はどうか。そして、もう1人のライターがアーネル・ジェスコ。ジェイソン・ケラーという名でも書いているらしい。これまでに実話を映画化した「マシンガン・プリーチャー」(Machine Gun Preacher・2011・米)や、リリー・コリンズが光っていた「白雪姫と鏡の女王」(Mirror Mirror・2012・米/加)を書いている。また「ダイ・ハード/ラスト・デイ」(A Good Day to Die Hard・2012・米)ではプロデューサーを務めているという。

 監督はミカエル・ハフストローム。1960年のスウェーデン生れ。日本劇場未公開の「すべてはその朝始まった」(Derailed・2005・米/英)でハリウッド・デビューを飾り、続く「1408号室」(1408・2007・米)は公開されたものの、今ひとつの評価。続く「シャンハイ」(Shanhai・2010・米/中)は渡辺謙も出ている中国映画という感じの重厚な仕上がりで、なかなか楽しめた。そしてホラーの「ザ・ライト −エクソシストの真実−」(The Rite・2011・米/ハンガリー/伊)もなかなかの仕上がり。そして本作へ至る。とくにアクションということではないようだ。

 登場した銃は、冒頭レイ・ブレスリンが警官たちに捕まるシーンでベレッタM92。「墓場」の看守たちはG36CとUMPを装備。ハンドガンはグロック。救出に来るヘリがミニミ・マシンガンを搭載しており、期待どおりシュワちゃんが取り外してこれを腰だめで撃ってくれる。そしてガバメントをスタローンにパスし、スタローンがこれを連射。アーマラーはロバート「ロック」ガロッティ。スタローンの「エクスペンダブルズ」(The Expendables・2010・米)や、ヤクザを演じた「バレット」(Bullet to the Head・2012・米)、ジョッシュ・ブローリンの「L.A.ギャングストーリー」(Gangster Squad・2013・米)などを手掛けている人。

 公開3日目の初回、新宿の劇場は全席指定で金曜に確保。当日は45分前くらいに着いたらすでにビルは開いており、20分前くらいに開場。中高年がメインで、若い人は少し。男女比は7対3くらいで男性の方が多かった。最終的には157席に8割くらいの入り。キャパが小さいので多かったのかどうか。

 気になった予告編は……上下マスクの「エージェント:ライアン」は明るいままの予告。扱いが軽い感じなのはなぜだろう。2/15公開。

 これまた扱いが軽い「大統領の執事の涙」はアカデミー賞レースに名を連ねるらしいのに、なぜ。実話の映画化だそうで、日本人受けしない内容なのだろうか。2/15公開。

 「ワンチャンス」は< TVのタレント発掘番組からデビューしたポール・ポッツの実話の映画化。面白そう。3/21公開。

 「ラッシュ/プライドと友情」は新予告に。なんだかだんだん暗い雰囲気になってきて、どうなんだろう。2/7公開。

 「アイム・ソー・エキサイテッド」はどうもスペインのドタバタコメディらしい。日本ではどうなんだろう。1/25公開。

 スクリーンの上辺が下がってきてシネスコになり、海賊版のあと暗くなって本編へ。まだ入ってくるヤツがいる。


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