Ender's Game


2014年1月19日(日)「エンダーのゲーム」

ENDER'S GAME・2013・米・1時間54分

日本語字幕:影付き手書き風書体下、森本 努/シネスコ・サイズ(デジタル、Panavision、Red)/ドルビー・デジタル、DATASAT(IMDbではドルビーAtmos、Auro 11.1も)

(米PG-13指定)(日本語吹替版、IMAX版、一部4DX版もあり)

公式サイト
http://disney-studio.jp/movies/ender/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

50年前、地球は昆虫型異星人フォーミックの襲撃を受け、あやうく滅亡するところだったが、1人の英雄メイザー・ラッカム(ベン・キングスレー)があらわれ、敵を撃退し母星に封じ込めた。しかし人類は再び襲撃されることを恐れ、国際艦隊(IF)を組織し敵の監視に当たるとともに、次世代のラッカムを育成するプログムをすすめていた。ウィッギン家の第3子として生まれた“エンダー”ことアンドルー(エイサ・バターフィールド)は、IFの兵士育成担当ハイラム・グラッフ大佐(ハリソン・フォード)と心理学者のアンダースン少佐(ヴィオラ・デイヴィス)によって見出され、バトル・スクールへ進む。学力・実技とも優秀な成績により、すぐに飛び級で前線基地にあるファイナル・スクールへ進み、リーダーとしての教育を受けることになる。

72点

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 いかにもSFらしい壮大な絵作り。SFらしい宇宙船や宇宙ステーション。そしてエイリアンに惑星、異文明……、音響も重低音は体を振動させるほどで、素晴らしい迫力。よく回るし、クリアーでしかも立体的。デジタルだから絵も高解像度で色がきれいで、クリア。スーツやヘルメット、宇宙ステーションなどのデザインも良い。絵と音は素晴らしい。そして主人公の少年も美少年で、キリリと凛々しい部分もあって役にピッタリ。ちゃんと有名俳優も出ていて、バックで盛り上げてくれている。

 ただ、ストーリーが、原作がある割にはもいかにもハリウッド映画という感じ。すべてが受けるネタの寄せ集めという感じで、オリジナリティが感じられない。クォリティは高いが、すべて予定調和というか、決まり切った流れ。何だろう。ハリウッドで型にハマらない映画を作ろうと思ったら、自分で資金を集め、自分で脚本を書き、監督をやり、プロデューサーもやらなければならないということなんだろう。あるいは、海外で大ヒットしたものをハリウッドでリメイクするか。それ以外は、保険を掛ける意味で定石通りのパターンでやらされてしまうと。本作もそんな感じ。つまらなくはないんだけど、特に面白くもないと。じゃ、何のために作るのだろうか。金だけなのか。

 サード・チャイルドというのは、第3子のことらしいが、サード・インパクトみたいなどこかで聞いたような用語。侵略者は昆虫で「スターシップ・トゥルーパーズ」(Starship Troopers・1997・米)みたいだし(アリだけどバグと言っている)、うなじのところに栓のようなものがあるのは「マトリックス」(The Matrix・1999・米/豪)、敵の宇宙船はU字型のような形でミレニアム・ファルコン(それでハリソン・フォード?)みたいだし……。

 小柄な少年が、大柄で取り巻きを連れてるガキ大将にいじめられるとか、シャワー室でケンカを売られるし(つい最近の「キャリー」(Carrie・2013・米)でもシャワー室だった)、絵に書いたようなステレオタイプの嫌なリーダーが君臨していたり、訓練スクールでは黒人の鬼軍曹がいて、しかも最初は罵倒するのに卒業するときサーと呼ぶなんて、「愛と青春の旅だち」(An Officer and a Gentleman・1982・米)のルイス・ゴセット・Jr.演じるフォーリー軍曹そのままではないか。

 このパッチワークのような映画のオリジナリティは、ラスト、言葉が通じない相手とコミュニケーションを取ってわかり合えるようになるという部分くらいか。絵と音は良い。3Dっぽい絵づくりも随所にあって、本当は3Dにしたかったのではないかと勘ぐってしまうが、3Dでなくて良かった。高画質なので、このままでもそこそこ立体感的なものは感じられた。

 主役の少年エンダーはエイサ・バターフィールド。1997年のイギリス生れ17歳。見ていないが「リトル・ランボーズ」(Son of Rambow・2007・仏/英/独)あたりから活躍しているらしい。ほかにハリウッドのベニチオ・デル・トロ主演「ウルフマン」(The Wolfman・2010・米)、「ナニー・マクフィーと空飛ぶ子ブタ」(Nanny McPhee and the Big Bang・2010・英/仏/米)や「ヒューゴの不思議な発明」(Hugo・2011・米)では、主役のヒューゴを演じ、ベン・キングスレーと共演している。ちょっと実際の年齢より幼く見えるところが魅力か。ヒューゴよりだいぶキリッとした感じになっている。

 1つ上の姉ヴァレンタイン・ウィッギンはアビゲイル・プレスリン。1996年のアメリカ生れで18歳。スクリーン・デビューはM・ナイト・シャマランの残念な「サイン」(Sign・2002・米)だ。その後アカデミー賞2部門受賞の「リトル・ミス・サンシャイン」(Little Miss Sunshine・2006・米)や傑作ゾンビ映画「ゾンビランド」(Zombieland・2009・米)などに出ている。本作では、重要な役のはずだがあまり印象に残らない。

 士官候補生の中で最初にエンダーに話しかけてくれる少女、ペトラ・アーカニアンはヘイリー・スタインフェルド。TVで活躍していて、リメイク西部劇「トゥルー・グリッド」(True Grit・2010・米)で保安官に犯人逮捕の依頼をする少女を演じていた子。ちょっとふっくらした気もするが、やはり存在感はある。

 なんだかよくわからないキャラクターの兵士育成担当ハイラム・グラッフ大佐はハリソン・フォード。1942年生れというから72歳。かなり動きの激しいものは辛くなってきた印象。「カウボーイ&エイリアン」(Cowboys & Aliens・2011・米)あたりがギリギリか。本作の前は「42〜世界を変えた男〜」(42・2013・米)にGM役で出ていた。

 心理学者のアンダースン少佐はヴィオラ・デイヴィス。アカデミー賞2部門ノミネート「アウト・オブ・サイト」(Out of Sight・1998・米)あたりから活躍しているが、アカデミー賞4部門受賞の「トラフィック」(Traffic・2000・米/独)、アカデミー賞1部門受賞「シリアナ」(Syriana・2005・米)など話題作のほか、TVにも良く出ている。最近ではトム・クルーズとキャメロン・ディアスのアクション「ナイト&デイ」(Knight and Day・2010・米)やちょっと残念な「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」(Extremely Loud & Incredibly Close・2011・米)などに出ている。

 伝説の英雄で、実はマウリ族のメイザー・ラッカムはベン・キングスレー。だいたい怪しげな役が多い人だが、本作もかなり怪しい。「ヒューゴの不思議な発明」ではエンダー役のエイサ・バターフィールドと共演している。またつい最近「アイアンマン3」(Iron Man 3・2013・米/中)に出ていた。

 原作は1985年に発表されネビュラ賞、翌年にヒューゴー賞を受賞したオースン・スコット・ガードの同名SF小説。オースン・スコット・ガードは本作でプロデューサーも務めている。原作は読んでいないが、ということは、これでいいという判断なのだろう。

 監督・脚本はギャヴィン・フッド。1963年の南アフリカ生れ。俳優としての方が関わった作品が多く、本作でもジャイアント役で出ている。「ツォツィ」(Tsotsi・2005・英/南ア)が高く評価されてハリウッドへ進出。そして「ウルヴァリン:X-MEN ZERO」(X-Men Origins: Wolverine・2009・米)を撮っている。「第9地区」(District 9・2009・米/ニュージーランドほか)のニール・ブロムカンプ監督といい、南アには才能のある人がたくさんいるようだ。

 銃はSFチックなレーザーガン。瞬間的に相手を凍結させて動きを止めてしまい、殺傷力はないらしい。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、13〜14分前に開場。観客層は中高年がメインで、若い人はわずか。若い人向けの内容という感じだが、むしろ高齢者が目だつ。男女比は6対4くらいで男性が多い。最終的には287席に4.5割くらいの入り。

 気になった予告編は……上下マスクの「アナと雪の女王」はアカデミー賞の長編アニメーション賞と主題歌賞にノミネートされたからか、歌がメインのワン・コーラス・バージョンを上映。これだけでもみごとで感動させられる。3/14公開。

 上下マスクの「マイティ・ソー ダーク・ワールド」は新予告というか長いバージョン。とにかく驚異的な絵作り。2/1公開。


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