Dawn of the Planet of the Apes


2014年9月21日(日)「猿の惑星 新世紀(ライジング)」

DAWN OF THE PLANET OF THE APES・2014・米・2時間11分(IMDbでは130分)

日本語字幕:丸ゴシック体黄色下、菊地浩司/ビスタ・サイズ(デジタル、Arri)/ドルビーATMOS(IMDbではドルビー、DATASATも)

(米PG-13指定)(日本語吹替版、3D上映もあり)

公式サイト
http://www.foxmovies-jp.com/saruwaku-r/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

猿たちの反乱から10年後、人類は猿ウィルスによって激減、90%が死に、街は荒廃していた。一方、進化した猿たちは山奥の森にコロニーを作り、集団で狩りをするなどして暮らしていた。両者は互いに干渉することなく暮らしていたが、ある日、人間たちの原子力発電所がダメになり、昔使っていた水力発電所を華道させるため、少人数の人間グループが猿のテリトリーに侵入し猿と出会ってしまう。人間の1人が銃を発砲したことから、全面戦争に発展しそうになるが、猿のリーダー、シーザー(アンディ・サーキス)は戦おうとする過激派を押さえ、人間たちに発電所を1日で直し、二度と侵入しないようにと警告し、戦いを回避する。しかし……。


74点

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 なかなかの見ごたえ。完全に世界観ができている。前作が発端となり、人類世界は荒廃し、猿ウィルスによって人類は激減。一方、進化した猿たちは独自の集落を作り暮らしている、という世界が、説得力を持って描かれている。とくにCGを使った猿は感情表現も豊かで、動きも自然。完全に場面に溶け込んでいて、そこにいるようにしか思えない。

 上映開始時間の関係で3Dで見たが、3Dの必要などあったのだろうか。一部立体感が感じられるところもあったが、といってそれがこの映画に必要だったとは思えない。むしろ目が疲れるし、画面は少し暗くなるし、集中できない感じがして、マイナス要素の方が大きい気がする。

 話の構造は、昔の西部劇の白人vsインディアンとか、文明人vs未開人というもの。猿が顔にフェイス・ペイントもしているし。彼らも我々と同じなんだという立ち位置なのだとは思うが、どうにも白人の上から目線的な感じ、優越感のようなものの匂いが漂ってきてしまう。集落もジャングルの奥に住む未開人のそれだし。でも、バカな白人も多く出てくるものの、結局深いところで悪いのは猿と。猿のリーダー、シーザーを進化させ、育てたのは人間で、名前も付けている。彼らも人間と同じ感情を持ち、思いやりや愛を持っているということに驚くというパターン。その辺が気になるかどうか。ボクは猿たちが南洋の小島かどこかの未開の現地人に見えてしかたなかった。

 荒れ果てた街がそのままになっているというのも、映画では定番だが、ありそうで実はないのではないだろうか。人間は普通、こういう状況を放っておかないだろう。

 それでも、話は楽しめるし、ハラハラドキドキ、感動も驚きもある映画になっている。主人公はちょっと地味過ぎるけど。CGにお金を使ったのだろう。IMDbでは8.1点の高評価。

 猿のリーダー、シーザーは前作から引き続きアンディ・サーキス。パフォーマンス・アクターで実際にはスクリーンには登場しないものの、表情や動きなどはすべてアンディ・サーキスが演技したものをキャプチャーしてCGのシーザーの動きに反映しているらしい。半分人間で半分猿のような感じはすべてこの人のおかげだ。本作の前には「ホビット思いがけない冒険」(The Hobbit: An Unexpected Journey・2012・米/ニュージーランド)でゴラムを演じている。

 人間グループの元建築家で、シーザーに発電所の修理を申し出るマルコムはジェイソン・クラーク。最近良く映画に出ている気がするが、地味な印象で、映画を引っ張っていく役としてはどうなんだろう。「ゼロ・ダーク・サーティ」(Zero Dark Thirty・2012・米)では冒頭の尋問をするCIA職員、「華麗なるギャツビー」(The Great Gatsby・2013・豪/米)でガソリンスタンドの亭主、「欲望のバージニア」(Lawless・2012・米)では兄弟の1人を、「ホワイトハウス・ダウン」(White House Down・2013・米)では元デルタの悪党のリーダーを演じていた。

 人間グループのリーダーらしい男ドレイファスはゲイリー・オールドマン。かろうじて1人だけ出ている有名な俳優さんという感じ。悪役が多い人で、「欲望のバージニア」ではギャングのボスを、つい最近リメイク版の「ロボコップ」(RoboCop・2014・米)でロボコップを作った博士を演じていた。

 とにかくバカでどうしようもない人間側のトラブル・メーカー、カーバーはカーク・アセヴェド。主にTVの「FRINGE/フリンジ」(Fringe・2008〜2013・米/加)や「CSI:13科学捜査班」(CSI: Crime Scene Investigation・2012〜2013・米/加)、「LAW & ORDER: 性犯罪特捜班」(Law & Order: Special Victims Unit・1999〜・米)などで活躍する人。映画は久しぶりの出演。とんでもない役だが、印象には残った。つまりうまいということなのだろう。

 脚本はリック・ジャッファ、アマンダ・シルヴァー、マーク・ボンバックの3人。リック・ジャッファは本作のプロデューサーでもあり、過去にピーター・ハイアムズ監督のSFホラー「レリック」(The Relic・1997・米/独ほか)を書いている。前作も書いている。アマンダ・シルヴァーもプロデューサーで、ほぼリック・ジャッファと同じ仕事をしてきたようだ。マーク・ボンバックはいくつかプロデュースもしているが、いわゆる脚本家で、よくできたアクションの「ダイ・ハード4.0」(Live Free or Die Hard・2007・米/英)や、良くできたエロティック・ミステリー「彼が二度愛したS」(Deception・2008・米)などを手掛けている。最近だと「ウルヴァリン:SAMURAI」(The Wolverine・2013・米/英)を書いている。

 監督は脚本も書くマット・リーヴス。あの残念な思わせぶりPOV映画「クローバーフィールド/HAKAISHA」(Cloverfield・2008・米)を監督した人。一部の人には戦犯にも等しい人。その後スウェーデン映画「ぼくのエリ200歳の少女」(Lat den ratte komma in・2008・スウェーデン)のハリウッド・リメイク版「モールス」(Let Me In・2010・英/米)を書いて監督している。うまい人なのかどうか微妙なところ。それ以前はTVの企画をやっていたよう。それで有名俳優が出ていないのかも。前作を撮ったわけでもないし。

 銃は、最初、猿のテリトリーに侵入する人間たちがM4カービン、マルコムが護身用のS&WのM64、バカなカーバーが隠し持っているのがS&WのM629とさらにソウドオフのショットガン。人間が武器庫から持ち出すのはM4、SCAR、ミニミ・マシンガンなど。シーザーの息子ブルー・アイズはマグプルのMASADA(ACR)、ドレイファスがM92を持っている。

 アーマラーはアンドレス・セプルヴェーダというひと。「オブリビオン」(Oblivion・2013・米)や「エリジウム」(Elysium・2013・米)のメキシコ・パートなどの、SF系のちょっとシャレた銃器を担当していた人。

 公開3日目の2回目、新宿の劇場は全席指定の3D字幕上映。本当は2D上映が良かったが仕方がない。差額400円を支払ってムビチケ・カードで座席を確保。当日は10分前くらいに開場。予告の真ん中くらいで3Dの眼鏡をかけるように指示が出たが、1人か2人、眼鏡を交換に行く人がいた。電池切れだったのか、3Dに見えなかったらしい。もうちょっと早めのタイミングで明るい内にチェックをしないといけないのではないだろうか。暗いと足下が危ないかもしれないし、すぐ上映だと思うと焦ってしまう。相変わらずレンズは汚れていて、上映前に眼鏡クリーナーでよく拭いておいた方がいいと思う。これで400円かあ……。

 観客層は、下は小学生くらいから中高年まで幅広く、男女比もほぼ半々。最終的に287席ほぼすべて埋まった。さすが話題作。

 気になった予告編は……上下マスクの「エクソダス神と王」はリドリー・スコット監督の史劇らしい。つまり「グラディエーター」(Gladiator・2000・米/英)的な作品か。クリスチャン・ベール主演。1/30公開。

 上下マスクの「ゴーン・ガール」はベン・アフレック主演で、失踪した妻を殺害したのではないかと疑われる夫の話らしい。アメリカなどでは良く聞く事件だ。監督はデヴィッド・フィンチャー。ちょっと重そうだが、どんな話になるのか。12/12公開。

 3D眼鏡を掛けてからサンリオの「くるみ割り人形」の予告。そのあと本編の上映が始まり、製作や配給の会社のロゴが出たが、やっぱりそれらが一番飛び出て見えた。


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