Jersey Boys


2014年10月5日(日)「ジャージー・ボーイズ」

JERSEY BOYS・2014・米・2時間14分

日本語字幕:手書き風書体下、石田泰子/シネスコ・サイズ(デジタル、Arri Arexa、with Panavision(レンズ))/ドルビー・デジタル、DATASAT(IMDbではSDDSも)

(米R指定)

公式サイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/jerseyboys/
(音に注意。止められない。全国の劇場リストもあり)

1951年、アメリカ、ニュー・ジャージー州の田舎町で、16歳のフランキー・ヴァリ(ジョン・ロイド・ヤング)は、昼間は床屋で働き、夜はナイト・クラブで歌い、さらにコーラスのリーダーであるトミー・デヴィート(ビンセント・ピアッツァ)にそそのかされ、どろぼうの見張り役をやっていた。そんなある日、フランキーはステージを見に来ていた美しい女性メアリー(レネー・マリーノ)に一目ぼれし、トミーに紹介してもらい、恋に落ちて結婚する。その後、詐欺にあい大金をだまし取られそうになるが、地元のギャングのボスで、フランキーのファンであるジップ・デカーロ(クリストファー・ウォーケン)に助けてもらう。さらに、3人のグループだったところへ、ジョー・ペシ(ジョセフ・ルッソ)の紹介で「ショーツ・ショーツ」をヒットさせたボブ・ゴーディオ(エリック・バーゲン)を加入させると、レコード会社への売り込みを始める。


76点

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 素晴らしい名曲、ヒット曲の数々。オヤジ世代にはなんと豪華で贅沢な映画であることか。かなり簡略化されてはいるが、名曲誕生の裏側を知ることができる。あの曲はこうして誕生したのか、こういう人たちが歌っていたのか、ということを知ることができる。そして高音質のみごとな歌と素晴らしい振り付けのダンス・パフォーマンス。鳥肌が立つほど素晴らしかった。上映時間は2時間を越えるが長くは感じなかった。ただ尻は痛くなったが……。

 元はトニー賞を受賞したブロードウェイ・ミュージカルだそうで、ミュージカルには結構悲惨な物語を描いたものが多い。本作も、華やかな話ではあるが、裏に犯罪組織がからんでいたり、メンバーの逮捕、家庭崩壊、不仲、確執、解散……といった事柄が次々と描かれて行く。このへんはちっとも楽しい話ではない。舞台と違い、映画らしくかなりリアルに描かれている。この部分からどういう印象を得るか。ここが大きいとあまり楽しめないかもしれない。

 それで、イーストウッド監督はシリアスだけで描こうとしていない。むしろコメディ・タッチをかなり取り込んで、笑いを織り交ぜて描いているのだ。そしてイーストウッドらしく銃も登場する。まだ若い頃、ヤンチャをやっていた時のシーンだ。しかも自身の若い頃のTV「ローハイド」(Rawhide・1959-1965・米)を劇中で使っている。

 アメリカでは良く使われるネタだが、若者たちは皆町を出たがっている。そして劇中出てくるセリフが「地元を出る方法は3つ。“軍隊に入る”でも殺される。“ママフィアに入る”でも殺される。あるいは“有名になる”オレたちはあとの2つだった」その状況を良く表している。

 画質音質は素晴らしい。共にデジタルで、文句なし。色合いだけを、時代を感じさせるようにちょっとセピア調に色を薄めにしている。また場面によって登場人物が交代でナレーションをするのは、えっという驚きがある。これも新しいようで古い感じ。主人公が誰だかわからなくなる。オールディーズのファッションが好きな人には衣装もたまらないだろう。

 ラストはロックの殿堂から振り向くと絶頂期に戻る。映画ならではの手法。そして出演者全員参加のミュージカルとなり道路で歌う。ここもたまらない演出。

 ジャージー・ボーイズのリード・ヴォーカルとなるフランキー・ヴァリはジョン・ロイド・ヤング。ブロードウェイ・ミュージカル「ジャージー・ボーイズ」でフランキー・ヴァリを演じている人なんだとか。なので本当に裏声(ファルセット)で歌っているらしい。最初はカンに触る感じだが、次第に気にならなくなり、鳥肌が立つほどの感動を覚える見事な歌に聞こえてくる。TVなどには出ているようだが映画は初めての模様。

 フランキー・ヴァリをショウ・ビズに誘い込む品行のよろしくない先輩トミー・デヴィートはビンセント・ピアッツァ。アイスホッケー選手から舞台俳優になり、TVにも出るようになったという変わり種。映画はブルース・ウィリスの「処刑教室」(Assassination of a High School Presiden・2008・米)に出ているらしい。チンピラ感がすばらしい。

 曲も作る後加入のボブ・ゴーディオはエリック・バーゲン。TVの人で「ゴシップガール」(Gossip Girl・2007〜2012・米)などに出ているらしい。映画は本作の前に日本劇場未公開作品に出ているので、ほぼ日本初というところ。本作のイメージにピッタリの感じだった。

 低音担当、バスのニック・マッシはマイケル・ロメンダ。舞台版「ジャージー・ボーイズ」でニック・マッシを演じているらしい。舞台の人で、映画は本作がデビューとなる。

 主要キャスト4人は「映画ファンにとって新鮮な俳優であること」という条件でイーストウッドが決めたらしい。

 地元のギャングのボス、ジップ・デカーロはクリストファー・ウォーケン。1943年生れというから71歳か。何より「ディア・ハンター」(The Deer Hunter・1978・英/米)がショッキングで、「戦争の犬たち」(The Dogs of War・1980・英)も良かった。さらに「デッドゾーン」(The Dead Zone・1983・米)は泣かせるし、それからすぐに出演したSF「ブレインストーム」(Brainstorm・1983・米)でも強烈な印象を残す。数々の賞を受賞した名優だが、いまや歳をとって怪優という感じ。シワが増えて怖さも増した。つい最近コミカルなアクションの「ミッドナイト・ガイズ」(Stand Up Guys・2012・米)に出ていい味を出していた。本作へはイーストウッドが起用したらしい。

 脚本はミュージカル版の台本も手掛けたマーシャル・ブリックマンとリック・エリス。マーシャル・ブリックマンはブラジル生れ。ウッディ・アレンとの仕事が多いようで、「スリーパー」(Sleeper・1973・米)や「アニー・ホール」(Annie Hall・1977・米)、「マンハッタン」(Manhattan・1979・米)、そしてベッド・ミドラーの「フォー・ザ・ボーイズ」(For the Boys・1991・米)などを書いている。リック・エリスは広告代理店から舞台の台本を書くようになったらしい。役者としても2本TVに出ていて、劇場映画の脚本は初めてのよう。

 監督は音楽好きで知られるクリント・イーストウッド。1930年生れだから74歳。凄いパワーだ。名優であり、名監督。本作ではプロデューサーもやっている。初の監督作品「恐怖のメロディ」(Play Misty for Me・1971・米)も怖くて良いが、感動したのはやっぱり「ミリオンダラー・ベイビー」(Million Dollar Baby・2004・米)や「硫黄島からの手紙」(Letters from Iwo Jima・2006・米)、「グラン・トリノ」(Gran Torino・2008・米/独)のあたり。泣かされたし、どれも音楽も良かった。新作は「American Sniper」だから久々のアクションか。もうポスト・プロダクションに入ったらしい。たぶん役者でイーストウッド作品に出たがっている人はたくさんいることだろう。

 意外なことに製作総指揮(エグゼクティブ・プロデューサー)に「ラッシュアワー」(Rush Hour・1998・米)の監督でもあるブレット・ラトナーがいる。

 真っ暗な画面にピアノの曲が流れてタイトルが出るというオープニング。なんでも

 公開9日目の初回、新宿の劇場は全席指定。ムビチケで確保しておいて、当日は10分前くらいに開場。20代くらいから中高年まで、割りと幅広い観客層。男女比は半々。大ヒット映画に多いパターンだ。最終的には287席に9割りくらいの入り。エンド・クレジットでも歌が流れていたからか、立って出て行く人が少なかった。さすがイーストウッド作品。

 気になった予告編は……上下マスクの「アニー」は新予告に。主人公を黒人の少女に置き換えてリメイクするんだったら、オリジナルのストーリーで新しいミュージカルを作ればいいのに。なぜリメイクなんだろう。ミュージカルの完全映画化って、ジョン・ヒューストンの「アニー」(Annie・1982・米)のリメイクじゃないの? 1/24公開。

 上下マスクの「100歳の華麗なる冒険」はスウェーデン映画で、原作は全世界で800万部も売れた人気小説なんだとか。監督のビデオ・メッセージ付き予告。面白そう。11/8公開。

 スクリーンが左右に広がってシネスコ・サイズになってから、「リトルプリンス 星の王子さまと私」はアニメらしいのだが、ティーザーなのでCGアニメなのか、粘土アニメなのか、普通の2Dのアニメなのかすらわからなかった。2015冬公開って、1年先かい!? これをわざわざシネスコで予告する?

 「マッドマックス 怒りのデス・ロード」はものすごい高画質。本編のよう。色もすばらしくきれい。新予告というか長いバージョンか。2015公開。

 「ホビット 決戦のゆくえ」もすばらしい画質。そしてサラウンドと高音質。凄い迫力。期待が募る。12/13公開。

 「インターステラー」もすばらしい高画質で、新予告。凄い絵だなあ。予告だけで泣きそう。11/22公開。


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