Zulu


2014年10月4日(土)「ケープタウン」

ZULU・2013・仏/南ア・1時間47分(IMDbでは110分)

日本語字幕:丸ゴシック体下、岡田壮平/シネスコ・サイズ(デジタル、Arri Alexa)/ドルビー・デジタル

(仏12指定、日R15+指定)

公式サイト
http://capetown-movie.com
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

2013年、南アフリカ、ケープタウンで若い女性の撲殺死体が発見される。強行犯撲滅班の警部でズールー族出身のアリ・ソケーラ(フォレスト・ウィテカー)は、昼間からアルコールを飲んでいるが腕利きの部下のブライアン・エプキン(オーランド・ブルーム)と、ガンと闘っている妻を持つ若手刑事のダン・フレッチャー(コンラッド・ケンプ)の3人で捜査を開始する。女は前日にナイト・クラブのダンサー、ジーナ(ジョエル・カンベ)と話しており、ジーナに話を聞きにいくと、女が麻薬の売人のスタン(クリスチャン・ベネット)からヤクを買っていたことがわかる。さらに女のケータイの履歴から、麻薬の売人がたむろするミューゼンバーグ海岸にいたことが判明。3人で海岸に行くと、警察を何とも思わない一団が襲いかかってくる。


74点

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 南アフリカはやっぱり危険な国なんだ。つくづく恐ろしさを思い知った。ビルのある近代的な都市と、ブリキの屋根と壁で出来た家々が並ぶスラム街。どちらも本当の顔なんだろうが、圧倒的にスラムの方が面積が広い感じで、これが南アフリカのイメージ。SFアクション「第9地区」(District 9・2009・米/ニュージーランドほか)でも描かれていたように、スラム街で生き抜いて行くのは想像も付かないほど大変なことなんだろう。勝手に想像すると、何かしらの犯罪にかかわらないと生きて行けないのではないかと思えるほど。ポール・ウォーカーのアクション「逃走車」(Vehicle 19・2013・米)やイーストウッドの「インビクタス/負けざる者たち」(Invictus・2009・米)などでも描かれている。

 驚くことに、かつての人種隔離政策の名残がまだまだくすぶっているように描かれている。しかも物語は1978年から始まっており、1976年にはソウェト蜂起という暴動事件も起きているらしい。そこでズールー族のアリ刑事は大きな心の傷を負ってしまうわけだ。そしてかつて人種差別主義者で非人道的なことをやっていたものが、密かに復活して要職についていたりする恐ろしさ。ネルソン・マンデラが大統領に就任したのは1994年だ。そして映画で描かれているのは、警察を何とも思わない無法者たち。その中には女もいるし、幼い子供までもがいる。彼らが犯罪を隠そうともしないという恐ろしさ。平気で警察に銃を向けてくる。

 そういった神に見捨てられた町を描いていながら、不思議なことにウンザリするようなことはなく、楽しくはないが、希望があるような感じ。思ったより後味は悪くない。

 アリ・ソケーラ警部はフォレスト・ウィテカー。ほぼ同時期に公開された「ファーナス訣別の朝」(Out of the Furnace・2013・米/英)にも出ていたばかり。「大統領の執事の涙」(The Butler・2013・米)の黒人執事や、「ラストスタンド」(The Last Stand・2013・米)のFBI、「キリング・ショット」(Catch .44・2011・米)ではとんでもない悪役まで、なんでも演じられる人。本当にうまい。使っていた銃はグロック。ラストに使うソードオフしたポンプのショットガンはレミントンのM870かと思ったら、ウィンチェスターのM1300らしい。

 ブライアン・エプキン刑事はオーランド・ブルーム。チンピラっぽい感じが出ていて見事。たしか本作のプロモーションで来日していたのでは。あんまり良い役とはいえないけれど。「ロード・オブ・ザ・リング」(The Lord of the Rings: The Fellowship of the Ring・2001・ニュージーランド/米)で注目されたが、同時期に「ブラックホーク・ダウン」(Black Hawk Down・2001・米/英)にも出ている。つい最近「ホビット竜に奪われた王国」(The Hobbit: The Desolation of Smaug・2013・米/ニュージーランド)に同じレゴラス役で出ていたばかり。使っていた銃はタウルスPT92かと思ったら、ベレッタの初期のM92らしい。普段はマガジンを抜いているのがミソ。でも、初弾を送り込んでいないならともかく、マガジンを挿入していないなんて、本当の現場でこんなヤツいるのだろうか。

 聞き込みに来たソケーラ警部の横で全裸で着替えしていたダンサーのジーナはジョエル・カエンベというモデル出身の女優。本作が劇場作品初出演になるらしい。

 ほかに銃はビーチのギャングがP226、AK47、AKMS、ウージーなど。警察のSWATが使うポンプ・ショットガンはM870ではなく、imfdbによるとS&WのM916Aらしい。ギャングのリボルバーもS&Wではなく、アストラなんだとか。

 原作は、1967年フランス生れのキャリル・フェリーの犯罪小説。2008年に出版されたということなので、やはり昔の話ではない。今の南アの姿なのだ。本作は初めて英語に翻訳された作品なんだとか。

 脚本は監督のジェローム・サルと、ジュリアン・ラプノー。ジュリアン・ラプノーは強烈な警察映画というか犯罪映画「あるいは裏切りという名の犬」(36 Quai des Orfevres・2004・仏)を書いている。ほかにジェローム・サル監督の「ラルゴ・ウィンチ(未)」(Largo Winch・2008・仏/ベギルギー)シリーズも書いているが、第1作が日本劇場未公開で、第2作めは小劇場公開で見ていない。

 監督のジェローム・サルは、1971年のパリ生まれ。日本公開されたものでいうと、リメイクだったジョニー・デップとアンジェリーナ・ジョリーの「ツーリスト」(The Tourist・2010・米/仏/伊)のオリジナル脚本でクレジットされているらしい。その作品は監督と脚本を担当した「アントニー・ジマー(未)」(Anthony Zimmer・2005・仏)というんだとか。ほかは見ていないが、本作はヨーロッパというかフランスらしいエロとバイオレンスが凄かった。次作にも期待したいし、過去の作品も見たくなった。

 公開35日目の初回、新宿の劇場はまだ上映中で、ギリギリ間に合った。すでに1日1回上映のみ。前売りを買っていたのに、良く使っている映画情報サイトで上映開始の案内が掲載されなかったため、すっかり忘れていた。金曜に劇場まで行って座席を確保。当日は10分前くらいに会場。若い人から中高年まで割りと幅広く、最初9人ほどいて、女性は2人。最終的には69席の1/3ほどが埋まった。1ヶ月も経っているのに、これはスゴイ。

 気になった予告編は……「真夜中の五分前」は日本らしいラブ・ストーリーかと思ったら、三浦春馬のほかに中国人女優と台湾人女優も出ている国際的なミステリー系の作品らしいが、ティーザーなので内容は良くわからなかった。12/27公開。

 「25」は東映のVシネマ25周年記念作品らしい。オール・スター・キャストのような豪華出演陣だが、出てくるのは全員ヤクザという感じで、どうなんだろう。11/1公開。

 「ふしぎな岬の物語」は吉永小百合のビデオ・メッセージ付き。しかし肝心の予告編の画質がビデオ・メッセージより悪いってどういうこと? 予告を軽く考えているのか、本篇の画質も悪いのか。色は浅く低コントラストで、解像度も低い。まさか16mmフィルムということはないだろうが……。これがカナダで賞を取ったとは。10/11公開。

 タイトルがなかなか出なくてイライラした「イフ・アイ・ステイ」はクロエ・グレース・モレッツ主演のドラマ。恋愛もののようだったが、どうも事故死後、魂だけがよみがえってくるという話のよう。10/11公開。

 上下マスクの「ヘラクレス」はイメージ、ピッタリのドウェイン・ジョンソン主演のスペクタクル・アクション。3Dというのは余計だと思うが、レニー・ハーリン版の「ザ・ヘラクレス」(The Legend of Hercules・2014・米)と比べてみたかった。それにしても、英語ではハーキュリーズなので、音と文字の差が気になった。公式サイトはクッキーをオンにしないと表示されない。10/24公開。

 チャン・ドンゴン主演の韓国映画、上下マスクの「泣く男」はもの凄いアクション。それでいてやっぱり泣かせるようだ。なぜ日本ではこういう作品が作れないのだろう。10/18公開。

 スクリーンの上下がせばまってシネスコ・サイズになって本編へ。


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