2015年12月26日(土)「完全なるチェックメイト」

PAWN SACRIFICE・2014・米・1時間55分

日本語字幕:丸ゴシック体下、松浦美奈/シネスコ・サイズ(レンズ、一部16mm)/ドルビーデジタル

(米PG-13指定)

公式サイト
http://gaga.ne.jp/checkmate/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

ボビー・フィッシャー(トビー・マグワイア)は、父親がおらず、妹と共にロシア人の母親に育てられた。1950年代は母親にスパイ容疑がかけられ、黒塗りの車が通りの向かいに止まっていた。よく一人遊びをしていたボビーは幼い頃からチェスに目覚め、それを知った母親が近くの「カーマイン・ナグロ・チェス・クラブ」へ連れて行く。負けず嫌いのボビーはめきめきと才能を表し、13歳で全米ジュニア・チャンピオンとなる。1951年、ホビーは世界チャンピオンになるため、母親を追い出し、1人暮らしを始めると、同時10人対戦などを実現して行く。そして成人してたらFBIにスパイ容疑をかけられたため、弁護士のポール・マーシャル(マイケル・スタールバーグ)と行動を共にしながら、世界チャンピオンのロシア人、ボリス・スパスキー(リーヴ・シュレイバー)に挑戦するため、スパスキーに勝ったことがある神父のビル・ロンバーディ(ピーター・サースガード)とも組み、世界ランキングの下位選手から対戦を始める。しかし徐々にボビーには奇行が目立つようになって行く。

72点

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 うーむ、これは年末・年始に見るのにふさわしい映画ではないような気がする。映画としては良くできているのだろうが、それゆえに気持ちが落ちる。決して希望のある楽しい話ではない。世界チャンピオンになりながら、奇行を続け、しまいには失踪してしまった人の話だ。なんだか、人生をすべて賭けて、苦労して世界チャンピオンになっても、悲惨な結末しか待っていない、人生を台無しにするという話のような。これは元気な時に見たい。

 何手も先を読むコンピューターのような頭脳を持つチェス・プレーヤー(将棋の法がもっと複雑なんだという話も聞くが)は、妙な行動をとったりする変人でも、しようがないと。世界チャンピオン・レベルになると、普通の精神ではすぐに崩壊してしまうらしい。

それが実にリアルに描かれているので、異常な感じがよく伝わってくる。盗聴されているのではないかと疑い、尾行を疑い、疑心暗鬼が募って行く感じ。怖いなあ。しかもシネスコ・サイズでありながら、閉塞感がよく出ている。映画を見ていると息が詰まる。うむむ。しかもこの映画を見ると、チェスはちっとも楽しいもののように思えない。チェスをやってみよという気にならないだろう。まあチェスの啓蒙映画じゃないけど。

 ボビー・フィッシャーはトビー・マグワイア。演技がうまいので、感情が良く伝わってくる。だからこの作品では余計嫌な感じになる。「スパイダーマン」(Spider-Man・2002・米)が有名だが、この前見たのはディカプリオの「華麗なるギャツビー」(The Great Gatsby・2012・豪/米)だったか。どこかナイーヴな雰囲気がジェイク・ギレンホールに似ている気がする。本作では製作も兼ねている。

 ボリス・スパスキーはリーヴ・シュレイバー。アメリカ生まれだが、なんとなくロシア人役がピッタリと合っていた。ボク的には「スクリーム」(Scream・1996・米)のイメージが強いが、本作の監督エドワード・ズウィックが監督した「ディファイアンス」(Defiance・2008・米)のベラルーシ人のパルチザンは強烈だった。

 神父のビル・ロンバーディはピーター・サースガード。イメージでは悪役が多いような気がするが、本作では普通の人。「フライトプラン」(Flightplan・2005・米)や「ナイト&デイ」(Knight and Day・2010・米)でも一見良さそうだが、実はという悪役だった。

 脚本はスティーヴン・ナイト。イギリスの脚本家で、ボクが見たものだと、強烈なヴァイオレンスの「イースタン・プロミス」(Eastern Promises・2007・米/英/加)を書いている。

 監督はエドワード・ズウィック。監督と共に製作も多い人だが、「戦火の勇気」(Courage Under Fire・1996・米)や「マーシャル・ロー」(The Siege・1998・米)、そして傑作「ラストサムライ」(The Last Samurai・2003・米/ニュージーランド/日)、「ブラッド・ダイヤモンド」(Blood Diamond・2006・独/米)などアクション系が多かった印象、なぜ本作を撮ったのか。うまい人だけに、ネカティヴな感情が良く伝わってきて、気分がすっかり落ちた。

 公開2日目の初回、銀座の劇場は全席指定で、ムビチケカードで確保。3館あるうち、一番スクリーンが見やすい劇場で良かった。あと2館だったら……。15分前くらいに着いたら、すでに開場済み。ほぼ中高年で、しかも高寄り。まあ内容からも当然だろう。女性は1/3ほど。最終的には  席がほぼすべて埋まった。これは意外。ボクは監督の名前から期待して見に来てしまったが、決して楽しい作品じゃない。なのに満席とは。

 スクリーンはビスタで開いており、気になった予告編は…… 「リリーのすべて」は新予告に。だんだん内容がわかってきた。3/18公開。

 「SHERLOCK/シャーロック 忌まわしき花嫁」はBBC製作のTVドラマの劇場版らしい。SAA風の銃が出ていたようだったが。2/19公開。あれ、イアン・マッケランがホームがを演じる「Mr.ホームズ」もあるのでは? あちらは真田広之も出ていて3月公開か。

 上下マスクの「ディーパンの闘い」はスリランカ?が舞台で、脱出するためニセ家族を演じる人たちの感動ストーリーらしい。他人に家族愛が芽生えるパターンだろうか。2/12公開。

 「キャロル」はケイト・ブランシェットとルーニー・マーラの2人の女優が激突するドラマらしい。2/11公開。

 上下マスクの「フランス組曲」はアウシュビッツ収容所を描くドラマで、今更の感じもするが、凄そうな印象。上映劇場によるなあ。1/8公開。

 「クリムゾン・ピーク」は怪しげなお屋敷でのホラー。よくあるパターンだが、なかなか怖そう。監督がギレルモ・デル・トロだし。1/8公開。

 スクリーンのマスクが左右に広がって、本編へ。


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