2017年1月7日(土)「ブラック・ファイル 野心の代償」

MISCONDUCT・2016・米・1時間46分

日本語字幕:丸ゴシック体下、高内朝子/シネスコ・サイズ(表記無し、デジタル、Arri ALEXA)/音声表記無し

(米R指定)

公式サイト
http://blackfile.jp
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

大手弁護士事務所に務める弁護士ベン・ケイヒル(ジョシュ・デュアメル)は、次々と裁判で勝ち、更なる上を目指す野心に燃える男。しかし仕事が第一で、医師で妻のシャーロット(アリス・イヴ)とはすれ違いがち。そんなとき、かつて付き合っていて、自殺未遂騒ぎを起こした元カノのエミリー・ハインズ(マリン・アッカーマン)から、SNSの友達申請が届く。それを受け入れて、10年ぶりに会うと、ピアソン製薬のCEOのアーサー・デニング(アンンソニー・ホプキンス)と付き合っていて、彼のPCから新薬開発データの改ざんと、数億ドルの資金を隠しているファイルを見つけたと打ち明けられる。ケイヒルはそのデータでピアソン製薬を訴えようと、事務所のボス、チャールズ・エイブラムス(アル・パチーノ)に持ちかけるが……。

72点

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 前売りがなかったので心配したが、なかなかのミステリー。どんでん返しもあるが、展開は、やっちゃダメなことをやっての結果なので、あまり同情できないというか感情移入しにくい。ギリギリ一線は超えないものの、やっぱりやっちゃダメでしょう。しかも弁護士や医者の話なので、庶民的な部分がちょっと希薄。弁護士界では、公選弁護人で下のほうだとしても、住む世界が違う。しかも主人公は野心があり過ぎで、仕事人間。他人を陥れないだけマシだが、ポリシーは「正義のためなら自分の手も汚す」となると、どうなのか。IMDbではわずかに5.3点。

 とはいえ、この映画はヒッチコック・タッチがあったと思う。特に音楽はそんな雰囲気。そこがうまい。不安を煽る曲は、ちょっとやり過ぎかもしれないが、いい感じ。カメラは横移動が多く、人物の移動とともにカメラも横に動いて、新しい展開がある。撮り方は巧い。脚本に難ありか。

 どんでん返しはいいものの、どうにも分かりにくい。時間を入れ替えているので、余計に分かりにくいが、1つの事件にいろんな人が関わっていて、そのために分かりにくいのだが、結局、イ・ビョンホン演じる謎の男(IMDbでは会計士)は一体、何だったのだろう。真実のためといっていたが、誰のためにやっていたのか…… うーむ、よくわからん。なので、見終わっても、いまひとつスッキリしない、ここも問題かも。

 まあ、それにしても、アンソニー・ホプキンスもアル・パシーノも、大御所二人は、とにかく怖い。ちょっとしか出てこなくても、すごい存在感。そして、巨乳で金髪の美女二人。そういえばヒッチコックのヒロインも金髪だったっけ。

 主役のベン・ケイヒルはジョシュ・デュアメル。フラフラして誘惑に負ける感じがみごと。映画は「トランスフォーマー」(Transformers・2007・米)シリーズに現場で戦う軍人役で出ていたようだが、作品が作品だけに……。

 恐ろしい存在感があるのは、製薬会社のCEO、アーサー・デニングのアンンソニー・ホプキンス。つい最近「アウトバーン」(Collide・2016・英/独)に出ていたばかり。何か悪そうな社長の役が多い感じ。

 同様に、弁護士サイドなのに怖いのが、事務所のボス、チャールズ・エイブラムスのアル・パチーノ。この人も恐ろしい存在感。アンンソニー・ホプキンスと3歳しか違わないがそれほど映画には出ていないというか、調べてみると日本公開されていないようだ。「ミッドナイト・ガイズ」(Stand Up Guys・2012・米)はなかなか面白かった。

 謎の殺し屋はイ・ビョンホン。誰のために、なぜやっているのか、よくわからなかったキャラクター。この人はハリウッド作品にも良く出ていて、「ターミネーター:新起動/ジェニシス」(Terminator Genisys・2015・米)でT-1000をやっていたばかり、韓国映画では「インサイダーズ/内部者たち」(Nae-bu-ja-deul・2015・韓)で強烈な役をやっていた。

 美女の一人、社長の愛人のエミリー・ハインズはマリン・アッカーマン。スウェーデン出身の金髪美女で、TVから映画へ進出。ちょっと日本劇場未公開作品が多いが、ハリウッドの話題作だと、ザック・スナイダー監督の「ウォッチメン」(Watchmen・2009・米)や、サンドラ・ブロックとライアン・レイノルズのラブ・コメディ「あなたは私の婿になる」(The Proposal・2009・米)、ハード・バイオレンス「キリング・ショット」(Catch .44・2011・米)、トム・クルーズも出たミュージカル「ロック・オブ・エイジズ」(Rock of Ages・2012・米)などに出ている。

 もう1人の美女、医師のシャーロットはアリス・イヴ。「メン・イン・ブラック3」(Men in Black 3・2012・米)や「推理作家ポー 最期の5日間」(The Raven・2012・米/西/ハンガリーほか)のポーの恋人役、「スター・トレック イントゥ・ダークネス」(Star Trek Into Darkness・2013・米)などに出ている。

 脚本はサイモン・ボーイズとアダム・メイソンの2人。サイモン・ボーイズは2006年から書いているようだが、いずれも日本劇場未公開となっている。本作が初日本劇場公開作品。アダム・メイソンは脚本のほかPや監督もやっているが、やはり日本劇場未公開ばかりで、本作が初日本劇場公開作品。うむむ。

 監督は日系二世のシンタロウ・シモサワ。「クリミナル・マインド 特命捜査班レッドセル」(Criminal Minds: Suspect Behavior・2011・米)や、ケヴィン・ベーコンが天才捜査官を演じた「ザ・フォロイング」(The Following・2013・米)のTVの脚本から、本作で劇場長編映画の監督デビュー。キャストは豪華だったが、ちょっと作品(脚本)に恵まれなかったか。

 銃は、ニューオーリンズ市警がM92、主人公はS&WのM66の3.5インチかと思ったらimfdbによるとタウルスのM66の4インチらしい。アル・パチーノはグロック。

 公開初日の初回、新宿の劇場は遅めのスタートで、全席指定。金曜に貯まったポイントで座席を確保。当日は15分前くらいに開場。観客層はほとんど中高年で、特にオバサンが目立っていた。これはイ・ビョンホン・ファンだろうか。男女比は3対7くらいで女性が多かった。韓流ブームの時と似たような状況。今の状況を考えると不思議な感じがするが、とにかくオバサンは上映ギリギリまでペチャクチャとおしゃべりがうるさい。最終的には127席ほぼすべてが埋まった。前売り無しなのに、これはビックリ。まあキャパは小さいけど。

 スクリーンはシネスコで開いていて、気になった予告編は…… 四角の枠付き「ゴースト・イン・ザ・シェル」は新予告。スカーレット・ヨハンソンとビートたけしのインタビュー・ビデオ付き。ほとんどビジュアルは押井守監督の劇場アニメをそのまま実写化したという感じ。実写化するかというのも驚きだが、そのままの美術デザインというのも驚きだ。4/7日米同時公開。

 左右マスクの「劇場版 ウルトラマンオーブ 絆の力、おかりします!」はTVの劇場版。絵作りなどはそのままで、ちょっと劇場作品としてはいかがなものかと。子供には良いのかもしれないが。3/11公開。

 左右マスクの「ひるね姫」は神山建治監督・脚本のアニメ。この予告ではどんな内容なのかまったくわからなかった。3/18公開。

 四角の枠付き「はじまりの旅」は森で暮らす一家の話だそうだが、これもティーザーでどんな話なのかはほとんどわからなかった。4/1公開。

 左右マスクの「マギーズ・プラン-幸せのあとしまつ-」は、みんなシリアスな顔をしているが、コメディらしく、夫を前妻に返すお話らしい。そんなんで、おもしろいのかなあ。イーサン・ホークにジュリアン・ムーアの顔合わせ。1/21公開。

 関係者らしい一団が入り口付近にぞろり。場内に入ってきたやつらは中でケータイ使ってるし……。でも、初日プレゼントか、ポスト・カード・サイズの両面写真(メイン・ビジュアルとイ・ビョンホン)のカードをもらった。


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