監督:ビル・コンドン 原作:ニコラス・サール『老いたる詐欺師』(早川書房) 脚本:ジェフリー・ハッチャー 撮影:トビアス・シュリッスラー 出演:ヘレン・ミレン、 イアン・マッケラン、 ラッセル・トヴェイ、 ジム・カーター、ほか |
イギリス、ロンドン。最近、夫を亡くした高齢の資産家ベティ(ヘレン・ミレン)は、ネットの出会い系サイトで妻を亡くした高齢男性ロイ(イアン・マッケラン)と知り合い、レストランで食事をすることに。意気投合した2人は、電話番号を交換して別れる。実は、ロイはベテランの詐欺師で、今も投資家2人を騙そうと仕掛けを行っていたところだった。そんな時ベティから電話があり、2回目のデートへ。すると、ロイは足が悪いのにアパートの最上階に住んでいることを知ったベティは、自分の家は平屋で部屋が空いているから来ないかと誘う。
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良くできたミステリー。ただ、バッド・エンディングではなく、むしろ快刀乱麻を断つ如く、完全解決してくれるのに、後味があまりよろしくない。とは言え、ちょっとヒッチコック・タッチの味付けがされているような気がした。何かもっと悪いことが起きそうな雰囲気があふれていて、観客は不安になる。 面白いのは老人とハイテク(SNS)、詐欺師と資産家、恋愛と暴力、現在と過去といった対極にあるようなものをうまく組み合わせて物語を描いていること。だからストーリーに厚みがでて、とても見ごたえのあるものになっている。長い旅をしたような感じ。 何と言ってもうまいのはW主演といっても良いヘレン・ミレンとイアン・マッケランの2人。説得力があるし、見始めてすぐ物語に引き込まれてしまう。特にイアン・マッケランは詐欺師としての2面性というか、別人格のようなものを持っているので、まるで2人の違う人が存在しているようだ。よぼよぼで杖を使って脚を引きずるように歩く人と、スーツで決めて颯爽と早足で歩く人が、同じ人とは。イアン・マッケランの1939年生まれだから80歳。よぼよぼの方がリアルな感じかと思ったら、あんなに颯爽と歩けるとは。ミュージカルの「キャッツ」(Cats・2019・英/米)にも出ていたけど。 監督はビル・コンドン。本作は違うが脚本も書く人で、監督としてはちょっと残念な都市伝説的ホラー「キャンディマン2」(Candyman: Farewell to the Flesh・1995・米/英)を撮っている。そして謎の死を遂げた実在の監督を描いた衝撃的ミステリー「ゴッド・アンド・モンスター」(Gods and Monsters・1998・米/英)でイアン・マッケランと仕事をしている。そう言えば日本も出てくる「Mr.ホームズ 名探偵最後の事件」(Mr. Holmes・2015・英/米)でもイアン・マッケランが出てるなあ。 銃はブローニング・ハイパワーが登場。撃つ。撃たれた顔面はぐちゃぐちゃ。ぞっとする。 タイプライターで打っていく感じのタイトルと、タイプライター文字を使ったエンド・クレジットはフィルモグラフ。 公開2日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、2日前にネットで確保。当日は12〜13分前に開場。観客層はほぼ中高年。最初30人くらいいて、女性は7〜8人。最終的には127席の4〜4.5割くらいが埋まった。うむむ。これは厳しいか。 スクリーンはシネスコ・サイズで開いており、CM・予告からほぼ暗くなって、再びCM、映画泥棒、音の大きなドルビー・シネマ、予告と続いて暗くなり、マナーからフル・サイズの本編へ。 |