2020年2月15日(土)「プロジェクト・グーテンベルク 贋札王」

無雙・2018・中/香・2時間10分

日本語字幕:丸ゴシック体下、鈴木真理子/シネスコ・サイズ(表記なし、IMDbではデジタル、2.39、Arri ALEXA、ドルビーVISION、2K)/ドルビーATMOS(IMDbではドルビー・デジタル、D-Cinema 48kHz 5.1、dts:Xも)
(香IIB指定、日PG12指定)

監督・脚本:フェリックス・チョン
アクション監督:ニッキー・リー 撮影:ジェイソン・クワン
出演:チョウ・ユンファ、
   アーロン・クォック、
   チャン・ジンチュー、
   キャサリン・チャウ、ほか

公式サイト
http://www.gansatsuou.com
(全国の劇場リストもあり)

タイで偽札を使ったとして逮捕されたレイ・マン(アーロン・クォック)が、香港警察へ身柄を引き渡され、副所長の娘で偽札担当のホー警部補(キャサリン・チャウ)の取り調べを受けることになる。すると香港の有名女性画家ユン・マン(チャン・ジンチュー)が弁護士と共に現れ、レイの保釈を要求。そこで香港警察は、偽札製造グループのボスとされる「画家」について情報を提供すれば保釈するという条件を出す。しぶしぶレイは事件の概要を語り出す……。


78点

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 いやー、やられた。こういう話だったとは。最初に犯人が捕まって、尋問で事件を回想すると。ありがちかなと思って見ていると、ダメダメのへたれ男の情けない話が展開。ところどころ納得のいかない点もありながら、まあスゴイ話だなあと思っていると、ラストにどんでん返しが! そういうことだったのかと驚いていると、さらにラストのラスト、もう一回大どんでん返し! そうだったのか! 納得のいかななかった点がすべて解き明かされる。それですべて解決!! ハッピーじゃないけど……、見て良かった。

 印象としては「カメラを止めるな!」(2018・日)に近いかもしれない。ダメ話の真相がハッキリし、別の物語が展開する。「ユージュアル・サスペクツ」(The Usual Suspects・1995・米/独)的でもあるかも。ただ、へたれ男の話が長く、観客はちょっと嫌気がさしてくる。なんだこのダメ男は。つまりバランスがよろしくない。

 香港映画的なハード・アクション満載でありながら、結局のところラブ・ストーリーにまとめるという感じはわかりやすく感動的。ちょっと切ないなあ。そして、チョウ・ユンファという大スターありきで成立するお話かなあと。

 やはり細部にも凝っていて、偽札作りのリアリティ(どこまでリアルなのかは実際のところわからないが)が素晴らしい。ホントらしく見える。どうやって撮ったのだろう。本当に印刷しちゃってるよと。ちよっと「ヒトラーの贋札」(Die F獲scher・2007・墺/独)とつながる部分も。昔「新・黄金の七人=7×7」(Sette volte sette・1968・伊)なんて、造幣局に侵入して本物の札を印刷しちゃう映画もあったなあ。

 監督・脚本のフェリックス・チョンは、もともとは脚本家でデビューした人で、「東京攻略」(Tokyo Raiders・2000・香)や「頭文字[イニシャル]D THE MOVIE」(Initial D・2005・中/香)など日本とのつながりもある。有名なのは「インファナル・アフェア」(無間道・2002・中/香)三部作の脚本。最近は公開される香港映画が少なくなり、公開されても小劇場だったりして接触の機会が大幅に減ったので、見てないなあ。最後に見たのは10年前の「ジ・エレクション 仁義なき黒社会」(ONCE A GANGSTER・2010・香)かなあ。

 女性画家ユン・マンを演じたのはチャン・ジンチュー。役所広司が出ていた「オーバー・エベレスト 陰謀の氷壁」(氷峰暴・2019・中/日)で主演をやった人。印象がまるで違う。さすが女優。トム・クルーズの「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション」(Mission: Impossible - Rogue Nation・2015・米/香/中)にも出ている。

 主演のアーロン・クォックは見事な演技。前半と後半でまったく印象が違う。とくに前半のヘタレ具合が見事だった。1990年代から活躍しているベテランで、千葉真一も出た「風雲 ストームライダーズ」(風雲之天地雄覇・1998・香)や、藤原紀香が出た「SPY_N」(雷霆戦警・2000・香)に出ていて、これまた日本と縁がないわけではない。ただ、やっぱり最近は公開作品が減り、見かけなくなってしまった感じ。

 そして何よりチョウ・ユンファがすばらしい。良く映画に出ていた頃とほとんど変わらないはつらつとした感じのまま。若い。1955年生まれだから65歳。とてもそうは見えない。ずっと映画に出ていたようだが、ボクが最後に見たのは、渡辺謙も出ていた「シャンハイ」(Shanghai・2010・中/米)あたり。10年も前か……うむむ。

 銃は、チョウ・ユンファはもちろん?ベレッタ92、3インチくらいの正体不明のリボルバー、カナダの警官がグロック、ラオスの将軍の部下達はAK、M16、M4、車両にM60らしきマシンガン、など。ほかにもポンプ・ショットガン、MP5、4インチくらいのリボルバー、レシーバーの長いイングラムも出て来た。チョウ・ユンファのAK2挺をあのベレッタ92の2挺撃ちのように撃つ姿も見られる。

 ラオスのジャングルでの銃撃戦はほぼ戦争。ただ、カナダで特殊インクの輸送車を襲うシーンは、どう見てもアジアの田舎の風景。予算切れか、銃撃戦の撮影が出来なかったからか、自主映画みたいで残念!

 それにしても、今どきちょっとタバコを吸い過ぎの感じはした。音はさすがATMOS(上映は違ったが)、良く回っていたし、ノックなどが左後ろから聞こえたりと凝っていた。

 公開、9日めの初回、銀座の劇場は全席指定で、2日前にネットで確保。当日はネットで事前に申請して発行された2次元バーコードを印刷したものか、携帯での提示が必要。20分前に着いたらちょうど開場するところ。久しぶりに行ったが、ほぼ前のままで昭和な劇場。イスだけ新しくなっていたような。スクリーンはだいぶ暗めの印象。真っ白でもまぶしくない。トイレの大は1コがウォシュレット付きで、もう1コが和式(!)。観客層はほぼ中高年で、男女は半々。最終的には350席に30人くらいの入り。決して悪くない作品なのに、宣伝が足りないのでは? もっと多くの人に見て欲しい作品。人が入らないから香港映画が公開されなくなってきたのか……。

 スクリーンは今どきでカーテンが開いていて、ビスタ・サイズ。5分前くらいに前方が暗くなり、マナーからCM・予告。スクリーンのマスクのカーテンが左右に広がり、暗くなって、シネスコ・サイズになって、いよいよかと思ったら映画泥棒。ここもか。シラケルから直前の映画泥棒は辞めて欲しいなあ。たくさんのロゴが続き、アリババもあって、ようやく本編へ。


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