2023年1月14日(土)「SHE SAID/シー・セッド その名を暴け」

SHE SAID・2022・米・2時間09分

日本語字幕:手書き風書体下、松浦美奈/ビスタ・サイズ(IMDbでは1.85、Arri ALEXA mini)/表記なし(IMDbではドルビー・デジタル)
(米R指定)

公式サイト
https://shesaid-sononawoabake.jp
(全国の劇場リストもあり)

76点

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 実話の映画化。細かな事の積み上げで大きな事を成し遂げるというパターンのお話。敵は権力者で、大きなパワーを持っていて、実に卑劣なヤツなので、その記事を出すまでにはとても苦労し、ようやく記事として世に出す事ができるようになる。それは感動的でとても面白いが、新聞社に限らず、実録巨悪告発もののパターン。最近だと「ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男」(Dark Waters・2019・米)=ニューヨーク・タイムズ、とか「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」(The Psot・2017・米)=ワシントン・ポスト、があるし、ちょっと前だと「大統領の陰謀」(All the President's Men・1976・)=ワシントン・ポスト、あたりが有名。作りはほとんど一緒という感じだ。ただ暴くのは女性記者だという点が違うくらい。

 ボクが特に興味深かったのは、原田眞人監督の「クライマーズ・ハイ」(2008・日)などでも描かれていたが、記事内容が正しいかどうかダブル・チェックする点。報道ではなくても、記事にはこれくらいの時間を掛けて、チェック、ダブル・チェックしたいなあと。しかも、告発するような記事の場合、相手にも反論のチャンスを与え、それをちゃんと掲載するというスタンス、姿勢。何人かで原稿を手直しし、読み込みチェックする。こんなふうに記事を作れたらどんなに良い事か。

 それにしても、認識を新たにしたのは、強姦というようなところまでいかなくても、セクハラは女性の心に長く残る大きな傷を付けてしまうものだという事。そして守秘義務(秘密保持)契約にサインしてしまったがゆえに犯罪行為であっても口外する事ができないという法のシステム上の問題もある事。

 実際に取材した2人の女性記者たちももちろんスゴイが、パトリシア・クラークソンとアンドレア・ブラウアーらが演じた上司が素晴らしい。記者たちに自由にやらせてくれて、しかも脅迫など脅しに一切動じない。電話などあっさり切ってしまう。主演のキャリー・マリガンはバズ・ラーマン監督の「華麗なるギャツビー」(The Great Gatsby・2012・豪/米)で強く印象に残ったが、もう1人の主演、ゾーイ・カザンは見た事はあった気がするが、ほぼ知らない人。今後注目かも。

 ただ日本語タイトルのサブ・タイトル「その名を暴け?」はどうなんだろう。もう多くの人が知っている事件だし、誰がやったのかはわかっていて、ストーリーが始まるのだからおかしくないか。あえて言うなら「その悪事を暴け」だろう。なぜかと思ったら、新潮文庫の日本語版の原作書籍のタイトルが「その名を暴け」だった。本ならありだろうが、映画としてはふさわしくなかったかも。

 公開2日目の初回、銀座の劇場は13〜14分前くらいに開場。最初30人くらいいて、10人ほどが女性。女性が多いかと思ったら違った。若い人から中高年まで年齢層は幅広く、女性の方が若め。最終的には151席に、ほぼ満席の9.5割くらいの入り。ちょっとキャパは小さいものの、社会派映画は地味なので、よく入った方かも。

 CM・予告の途中で半暗になり、マナーや注意から暗くなって、枠付きの映画泥棒、ケロロ軍曹の海賊版で、本編へ。


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