2023年12月31日(日)「アンブッシュ」

THE AMBUSH・2021・アラブ首長国連邦/仏・1時間51分(IMDbでは1時間42分)

日本語字幕:手描き風書体下、高橋 彩・字幕監修:大久保義信/シネスコ・サイズ(撮影機材の表記無し。IMDbでは2.35)/音響表記無し(公式サイトでは5.1ch)
(アラブ首長国連邦PG指定、米R指定)

公式サイト
https://klockworx-v.com/ambush/
(全国の劇場リストもあり)

73点


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 怖い映画。内戦状態のイエメンに展開するUAE連合軍と、テロリストとされるフーシ派との戦いで、実際に2018年2月18日(日)に起きた戦闘を映画化したもの。ウクライナやパレスチナでの戦争だけでなく、世界中あちこちで戦争状態でなくても戦闘は行われていると。なんで人類は戦いを止められないのだろう。憎しみだろうと何だろうと、悲しみしか生み出さないのに。そんな風に思わされる。

 映画的にはスコット・イーストウッドが出ていた「アウトポスト」(The Outpost・2020・米)に近い気がする。ただUAEの映画で、知らない役者さんばかりで(ドキュメンタリー的ではあるが)、言語も馴染みがなく、風習文化もわからないためか、どうにも感情が伝わってきにくい気がした。基本的なところではしっかり理解できるのだが……。

 興味深かったのは、UAE連合軍の装備はほぼアメリカ軍と一緒ということ。F-16ファルコン戦闘機、AH-64アパッチ・ヘリコプター、M-ATVらしい4WD装甲車、6WDのケイマンMRAPらしいトラック型装甲車などが登場。無人機は監視のみで攻撃はできないタイプ。車両がRPGの直撃に数発までは耐えるというのが驚きだ。地雷にも耐える。その車内の様子も興味深かった。特にリモコン式のM2を搭載したガン・ターレットは有効なんだなと。モニターを見ながら射撃できる。「ブラックーク・ダウン」(Black Hawk Down・2001・米/英)のハンヴィーなどとは大きな違い。ただ、弾切れになると人間がハッチから出て弾薬箱を取り替え、セッティングしなければならない。そんな優秀な車両でも中に居続けることはできないという恐怖。

 監督はフランス出身のピエール・モレル。リーアム・ニーソンの「96時間」(Taken・2008・英/仏/米)の監督だ。最近だと「ライリー・ノース復讐の女神」(Peppermint・2018・中/米)を撮っている。もともと撮影監督で、撮り方がうまい。ときとぎ俯瞰を交えながら客観的状況も見せつつ、臨場感が半端ない。

 銃は、アパッチに30mmチェーンガン、車両にM2ブローニング、兵士はM4カービン(ドット・サイトはACOGなど何種か使われている)と、たぶんP320コンパクト(米軍のM18)。テロリストはAK、PKらしいマシンガン、スナイパーがSVDドラグノフ。ほかにテロリストがRPGト80mmと120mmの迫撃砲を使い、UAE連合軍の兵士たちは80mmと120mmを威力からか音からか、ちゃんと区別している。アパッチの銃撃は煙の感じなどがリアルで、実弾を撃っているようだった。儀仗兵らしい兵士はM16A3らしいライフル。

 公開3日目の初回、新宿の劇場は10分前くらいに開場。スクリーンはシネスコで開いており、観客層は中年層男性がメイン。まあ戦争映画だし。最終的には大晦日ということもあるのだろう、226席に10人ほど。女性は0。うーむ。もっと入ってもいい作品だと思うが。いま大規模な戦争が実際に起こっていて、あえて映画で見たくないということもあるのかも。

 上映時間の1分前くらいから案内が流れ、そして予告。途中で非常口案内があって、ランプが消え、半暗になってCM。さらに予告が続いて、マナーで映写機のスクリーンが左右に広がり、フル・サイズになって迫力の映画泥棒、映倫で暗くなり、クロックワークスのロゴから始まる本編へ。


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