強烈な映画。とにかくヴァイオレンスがすごい。血が噴き出し、手足が曲がり、頭が飛び、酸鼻を極めるような地獄絵的状況。阿鼻叫喚。パンク的な悪魔崇拝グループ、カルト集団の「左手の小径」が恐ろしい。イレズミもどんどん怖く見えてくる。こういう悪をリアルに描ける人って、いったいどういう人なんだろう。経験者か、その方面の人か、鋭い観察力や感性などを持った人なのか……。とにかく凄い。気持ち悪くなった。アメリカにはこういう人たちがいると思うと、行きたくなくなるほど。そういう怖さは並外れている。IMDbでは5.7点という低評価。 物語の構成としては、オヤジと少女(?)のロード・ムービーといったところ。そこにとんでもない悪党と、土地売買に絡む小悪党どもが関わってくる。最初に実話に基づくと出るが、エンド・クレジットでは改めて実話を基にしたフィクションと出る。たしか人身売買組織に娘を誘拐された父親が、自分の体にタトゥーを入れてまでも組織に迫り、娘を奪還したという事件があったのではなかったか。同じ娘奪還でもリーアム・ニーソンのアクション「96時間」(Taken・2008・仏/英/米)とはだいぶ異なる。ただ、父親はここまでやるぞというところは同じか。ドウェイン・ジョンソンの「オーバードライヴ」(Snitch・2013・米/アラブ/英)も息子のために危険な潜入捜査に協力するが…… 考えてみると映画としては多いパーンなのかも。 悪党が凄いだけに、ラストはあっけなさ過ぎるかもしれない。本当はカルトではなく、悪魔崇拝など関係ない単なる小悪党だったということなのかもしれないが、そ辺の掘り下げが少なかった気も。それでも2時間半は超えているわけだけど。 とにかく素晴らしいのは、物語のキーとなる少女ケースを演じたマイカ・モンロー。過去には、ボクが見たものだとクロエ・グレース・モレッツの残念なSF「フィフス・ウェイブ」(The 5th Wave・2016・米/英)や、大ヒットSFの続編「インデペンデンス・デイ:リサージェンス」(Independence Day: Resurgence・2016・米/印)、リーアム・ニーソンの実録政治スキャンダル「ザ・シークレットマン」(Mark Felt: The Man Who Brought Down the White House・2017・米)などに出ていたらしいが、ほぼ記憶に残っていない。そんな感じだったのに、本作では凄い演技派の実力派俳優ではないか。単に役に恵まれなかったと言うことか。今後大いに注目したい。 監督・脚本はニック・カサヴェテス。あの監督で俳優のジョン・カサヴェテスと俳優のジーナ・ローランズの息子。ボク的には感動のラブ・ストーリーの傑作「きみに読む物語」(The Noyebook・2004・米)の印象が強いが、伝説の麻薬ディーラーの男を描いた「ブロウ」(Blow・2001・米)の脚本や、息子を救うため病院に立てこもる父を描いた「ジョンQ-最後の決断-」(John Q・2002・米)といった社会的な問題を扱った作品にも関わってる人。すごく才能のある人なんだと思うが、最近はパッとしない感じ。なんだかもったいない。頬に彫ったスパイダーのイレズミのエピソードや、ラストの携帯が鳴って振り向くと彼女がいるとかが「きみに読む物語」につながるかなあ。 銃は、カルト集団がM19系の4インチ・クラスのリボルバー。主人公らしい警察官はグロック。ジェイミー・フォックス演じる怪しげな片腕の黒人も4インチ・クラスのリボルバー。彼が持っているたくさんの銃の中には、SWのオートやポンプ・アクション・ショットガンもある。エジェクション・ポートが側面に見えなかったのでイサカM37あたりだったかもしれない。1911オートもあったような。ラストの銃撃戦では、380くらいのオート、ウージー系のサブマシンガン、M4系のカービン、M16系のライフル、ARスタイルのオート・ショットガンを車の荷台のマウントに付けたもの(フルオート?)まで登場。「神は銃弾」と話すときにでてくるのは5.56mm弾に見えた。 ちょっと気になったのは、コンティニュイティのエラー。主役と言っても良い少女のケースのシーンで、鼻を殴られた後なのに鼻の傷がなくなっていたり、もう1人の主役、警察官のハイタワーが傷口をホチキスで留めたあと、腹が映ると傷がない。時間が経ったという設定だっのかもしれないが、ボクは気になってしまった。 タイトル・クレジットは、母音のない文字だけ先に現れて、後からにじむように母音が出てくるという演出。タイトル・デザイナーはトム・カンという人。 公開3日目の初回、新宿の劇場は10分前くらいに開場。スクリーンはフルのシネスコで開いていて、8分くらい前から予告を上映。途中で忍者アニメのマナーを挟んで、再び予告。さらに途中で非常口案内から半暗になりCM、予告。ラストにもう一度マナーで、映写機のマスクが左右に広がってシネスコ・サイズになり、フルの映画泥棒、映倫で暗くなり、クロックワークスのロゴから始まる本編へ。 観客層はやっぱり中高年のオヤジがメイン。若い男性も少しだけいた。最終的に148席に30〜35人くらいの入り。女性は5人くらいいただろうか。悪い映画じゃないのに、この入りはちょっとさびしい。まあ年末の忙しい時ということもあるか。 |