ナレーション |
退廃的で堕落し、政治と戦争により弱体化していたにしろ、ローマ帝国
は地上で最強の国であり続けた。
それから新たなる人々、獰猛で独立心のあるフン族が東方から現われた。
古き予言は、いつの日か部族を統一し、世界を支配する権利を求めてローマに挑む男のことを語っていた・・・。
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タイトル
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ATTILA
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[Chap. 2 / 2]
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<狩り>
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少年アッチラ
父ムンズク
少年アッチラ
ムンズク
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ぼくの矢じゃ短い!
もっと上を狙え。
鹿の方が速いんだ。
そろそろもっと強い弓をもつ頃なんだろうな。
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男
ムンズク
男
少年アッチラ
ムンズク
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我々はダンノティスの土地にいます。
追跡は長かった。我々は危害を加えるつもりはない。彼に鹿の角を贈り物としよう。
それでも、見られたかもしれない。
ダンノティスが文句を言うなら、殺す。
黙りなさい。フン族がフン族を殺すのは愚かなことだ。仲間内で争っていて、どうして西方の地を征服できる?
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<野営地>
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少年アッチラ
祖母
少年アッチラ
祖母
少年アッチラ
祖母
少年アッチラ
祖母
少年アッチラ
祖母
少年アッチラ
祖母
ムンズク
少年アッチラ
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父さんは、狩りの最中また西方の地のことを話したよ。
あっちにいたことがあるんだよ、若い頃ね。
そこを見つけたの?
違うとも・・・他の者がずっと昔に発見したんだよ。
どうやって?
アブだよ。ある戦士が雄馬を馴らしていた。すると、アブが馬を酷く刺したので、走って行ってしまったんだよ。戦士は馬を追って大きな沼地に入った。
でも、沼地を抜ける道はないよ。
ああ、馬が道を見つけて、戦士は馬の後をついて行ったの。そして、向こう側で・・・
西方の地を見つけたんだね。父さんは、いつかぼくたちが西方の地を征服するって言っているよ。
偉大なる王が現われた時にね。
どうやってその人が現われたってわかるの?
偉大なる王は誰にも跪かないのよ。そして、全ての者が彼に跪くの。彼は、フン族を一つの国として統治し、戦神の剣をその手に握っているの・・・
そして・・・彼は寝ろと言われたら寝るんだ。
はい、父さん。
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<昼> [矢が飛んでくる]
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祖母
少年アッチラ
祖母
少年アッチラ
襲撃者
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だめ! アッチラ、おやめ!
手助けしたいんだ! させてよ!
この荷車の下にいなさい。そこにいるのよ。邪魔にならないようにね。
父さん! 父さん・・・とうさん・・・。
[アッチラ逃げ出す]
捕まえろ!
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襲撃者
少年アッチラ
襲撃者
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おまえはムンズクの子だな。
婆ちゃんはどこだ?
死んだよ。おまえの親父は死んだ。それが、我らの土地で狩りをした報いだ。これからは、俺がおまえの主人だ。跪け。[アッチラの足元に矢が放たれる]
跪け! そうすれば、奴隷として生かしてやろう。
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[Chap. 3 / 3]
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<ステップ>
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ルーア
少年アッチラ
ルーア
少年アッチラ
ルーア
少年アッチラ
ルーア
少年アッチラ
ルーア
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名前はなんという?
アッチラ、ムンズクの子です。
わしがわからないか?
[首を振る]
わしはルーアだ、おまえの父の兄だ。それに、おまえがわしと会ってから随分たつからな。
父さんは亡くなりました。
そうだ。数週間前にな。おまえはこの間ずっと1人でここにいたのか?
[うなずく]
もう安全だ。おいで。1人でステップで生きる方が良いのでないならな。
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<ルーアの村:夜>
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ルーア
少年アッチラ
ルーア
少年アッチラ
ルーア
少年アッチラ
ルーア
女(妻?)
ルーア
女
ルーア
女
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聖なる3種の動物はなんだ?
クズリです、決して後ずさらないから。シーバ、子供を守るから。そして馬です。戦神にとって聖なるものだから。
弓には何層ある?
2層は木、2層は骨です。
弓に弦を張る前に、どのくらい熱しなくてはならない?
外側の層に水滴が出てくるまで。
よく教わっているな。自分の天幕に行け。
あの子はここには属さないよ。
わしは弟の妻と長男を奪った。下の子をステップで死なせるべきか?
ええ。そうよ、ブレダのためにね。
あれは長子だ。わしが死んだら大きい方の相続分を取る。
2人の間にはもめ事が起きる。もうそれが目に見えているわ。
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少年アッチラ
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誰だ?
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少年アッチラ
ゲイリン
少年アッチラ
ゲイリン
少年アッチラ
ゲイリン
少年アッチラ
ゲイリン
少年アッチラ
ゲイリン
少年アッチラ
ゲイリン
少年アッチラ
ゲイリン
少年アッチラ
ゲイリン
少年アッチラ
ゲイリン
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誰だ?
あんたは誰だい?
アッチラだ。
あたしはゲイリンだよ。
何者だ。
少女だよ。あんた、目が見えないのかい?
おまえは老女みたいだ。
あんたと同じ年だよ。
どうして他の連中と一緒にいないんだ?
あたしが怖いのさ。
どうしておまえを怖れるんだ?
あたしが、星や空や太陽や月を読むからさ。
魔女か。
昨日幻視があったよ、彼が生まれるってね。
誰が?
偉大なる王だよ。
下がれ。ぼくは10年前に生まれた。
ちがうね。あんたは、昨日ステップで生まれたんだ。ああ、そうだよ。昨日だ、ステップでね。
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<昼>
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ルーア
男
ルーア
少年アッチラ
男
少年アッチラ
捕虜
少年アッチラ
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弓一張を作るには何ヶ月もかかると言う者がいる。だが・・・15年かか
るんだ。その木が初めて植えられた時から始まる。あんまり早くにその木を切ると、弓は強さに欠ける。遅すぎれば、砕けやすい。
ルーア王。奴らを見つけました。
おまえたちの野営地を襲ったのはこいつらか? こいつらは、おまえのものだ。好きにして構わんぞ。
もっといた。
殺しました。こいつらは残りです。
跪け。
少年に跪くだと?
降伏して生きろ。
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[Chap.4]
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<平原を駆けるアッチラ>
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ルーア
アッチラ
ルーア
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アッチラ! 斥候と話をしたか?
我らと河の間にはいかなる軍勢も目撃していません。
結構。
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[Chap.4]
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<ローマ帝国:牢獄>
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看守
エイティアス
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いい加減でこれに慣れろ。我々看守も同じ食事を食べているんだ。
そんな物は奴隷の食い物だ。それに慣れるのは奴隷だけだ。
わたしは、フラビウス・エイティアスだ。ローマは耐えている。わたしも耐えるぞ。
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<ローマ:宮殿>
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皇帝
司令官
皇帝
司令官
皇帝
司令官
皇帝
司令官
皇太后
司令官
皇太后
司令官
皇太后
司令官
皇太后
皇帝
皇太后
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パルティア人、スキタイ人、マケドニア人、ピクト人、ガリア人、ブリト
ン人、アングル人、フランク人、ユダヤ人、エジプト人、征服した民族のリストは果てしない。どうして、フン族は別なんだ?
ただ違うのです、陛下。
奴らがローマ軍と出会うまで待て。
やつらは以前何度か我々を負かしています。
東ローマ帝国からの軍隊だ。我らは別の素材からなっている。
パノニア国境から数百マイルの間には軍がおりません。
どっか他所から連れてこい。
できません。我らは大きくなりすぎています。
そんなに深刻なの? フン族はもう何十年も厄介者ではないの。
奴らは我らの領土に侵入しました。
あれは散発的な襲撃です。奴隷が略奪しているのです。
で、ろくに抵抗がないとわかったら? 我らはどれほど無防備なことか。次はどうなります? プラシディア、私たちは2人とも奴らに対処できる男を1人知っ
ています。
エイティアスは生きて牢から出ることはありません。
彼は奴らの慣習を知っていますよ、王を知っていますよ。
だめだと言いましたよ。フェリックス、わたくしは息子が未熟だということはわかっています。でも、学んでいますよ。今は皇帝なのです。そして、彼以前
の皇帝たちがしてきたように、事に臨んでは対処するでしょう。
やった! できた! 何を射ようかな? その台座の上の壺にしようか?
バカモノ! ボクの狙いをダメにして!
あなたが言ったことを考えておきましょう。ですが、フン族が深刻な脅威だということを確信しなくてはなりません。
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<アッチラの襲撃>
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女たち
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襲撃者だ、襲撃者だ!
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男
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進め、進むんだ。
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アッチラ
ンカーラ
アッチラ
男
アッチラ
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待て! 名前は?
ンカーラ。
勇敢に戦ったな。奴隷と一緒にしておけ。
この女の剣が一番血を流しました。
親族がいるなら、同じく助けてやれ。
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<ローマ:牢獄>
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皇太后
エイティアス
皇太后
エイティアス
皇太后
エイティアス
皇太后
エイティアス
皇太后
エイティアス
皇太后
エイティアス
皇太后
エイティアス
皇太后
エイティアス
皇太后
エイティアス
皇太后
エイティアス
皇太后
エイティアス
看守
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[看守に] 出ていてよろしい。
かつてあなたを生きたままこの牢から出さないと誓いました。ですが、あなたの友人たちが慈悲を請うのです。そして、彼らの嘆・・・
ははは! あなたがここにいる考えられる理由は1つしかない。わたしを必要としているのだ。
なぜあなたを必要とします?
推測するなら、フン族が動き出していて、あなたやローマの残りの連中が恐怖ですくみ上がっているんだろう。
南部の部族の中での新しい軍指導者についての報告がありましたーーアッチラです。ご存知かしら?
いえ。ですが、ルーア王は知っていますし、それが重要なことです。
息子は若く、彼の決定を導いてくれる人が必要です。
あなたは自分の野心の代わりに、国に尽すこともできます、できるならね。
何だってできますとも。
あなたの代価は?
まず、完全な恩赦です。
あなたは、息子が成人する前にわたくしを退位させようとしました。あれは大逆です。
あれは、誤解だと言いましょうよ。
他には?
わたしの財産をすっかり回復し、わたしがえり抜いた個人的な参謀と、両軍の長としての位に復位すること。もしフン族に対処するなら、最高指令権を握らなく
てはならない。
フェリックスが最高司令を握っています。
更迭するんですな。
彼はあなたの釈放を勧めたのよ。
彼に感謝するよう覚えておこう。
この牢で永遠に腐ってもいいのよ。
で、あなたは? フン族に対処できる他の者を見つけるんですね。
看守! 釈放しなさい。新しい最高司令官です。
わたしに食事を持ってきた看守だが、何という名だ?
ペトロニアスです、閣下。
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<エイティアスの邸宅跡>
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リディア
エイティアス
リディア
エイティアス
リディア
エイティアス
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お父様!
リディア!
ああ、本当に自由なのね! ああ、信じるのが怖かったの。牢に行ったんだけれど、どうしても会わせてくれなかったの。
なんてことだ。おまえは若い娘になっていて、しかも愛らしい。
屋敷はまたわたしたちのものなのね?
そうだ。それに、シシリーのも。明日、職人を入れよう。以前の様に美しくなる。
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[Chap. 5/5]
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<ルーアの村>
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ゲイリン
アッチラ
ブレダ
ルーア
アッチラ
ルーア
アッチラ
ルーア
アッチラ
ルーア
アッチラ
ルーア
アッチラ
ルーア
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進め、動くんだよ! 哀れな奴らめ、動け! は、はぁ、あんたたちはも
うあたしの運命の中にいるんだよ。
ルーア王! 我が勝利の貢ぎ物を持ってきました。
ふん。農夫に対する勝利か?
民が見ている。おまえたちは兄弟だ。兄弟らしく抱き合え。
さあ、アッチラが我らにもたらした宝を見ようではないか!
アッチラ、兄の嫉みにおまえの勝利を台無しにさせてはならぬ。
彼の言う通りだ。あれは農民や酪農者たちが守っている村だ。
農民と戦うとしたら、他に誰も我らと戦おうとしないからだ。
そうだ。ローマ人でさえ。
ローマだと? それは別問題だ。
我らはフン族だ。誰も怖れぬ。
その通りだ。だが、どうして寝ている獅子を起こす?
我らは50リーグ奴らの領土に入っている。軍隊もいない、兵士もいない。1人としていない。もっと大きな軍をください、そしてもっと先へ行かせて下さい。
どの位先だ?
ローマそのものまで。
はっははっ! そこに着いたらどうするんだ? 壁を引っ掻くのか? 荷車のように分厚く、しかも木ではなく石でできているんだぞ!
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<川のほとり>
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ゲイリン
アッチラ
ゲイリン
アッチラ
ゲイリン
アッチラ
ゲイリン
アッチラ
ゲイリン
アッチラ
ゲイリン
アッチラ
ゲイリン
アッチラ
ゲイリン
アッチラ
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ウワァ〜! びっくりさせたぁ! ゲイリンは偉大なるアッチラをびっく
りさせた〜。
殺していたかもしれないんだぞ。
ゲイリンに何を持ってきてくれた?
何も。
アッチラはいつだって何か持ってきてくれる。持ってるんだろ?
かもね。いない間に別の幻視をしたのか?
かもね。何を持ってきてくれた?
そして、もう戦神のことはないのか?
あの幻視はあたしたちが大いなる沼地を越えてからずっとあたしたちの部族にあるんだよ。激しい戦いの後、戦神は眠りについた。彼の剣が手から大地に滑り落
ちた。それを見つけた者は誰であれ世界を支配する。あんたは信じなくてはいけないよ、アッチラ。
どうして?
あんたはあたしの幻視の中にいるからさ、剣もね。ルビーを頂いた金と象牙の柄だよ。
おれは部族を支配することもない。伯父が亡くなったら、ブレダが王だ。
ブレダはあたしの幻視にはいないよ。あんただ。
去れ! おれに構うな!
赤毛の女のことを考えるためにね。部族中が知っているよ。赤毛の女がアッチラの目に留まったって。赤毛の女が目に留まった・・・
うわぉう!
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<ルーアの天幕>
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ルーア
ブレダ
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今宵はアッチラの勝利を祝おう。まずは、ローマの戦利品だ。
ブレダ、長男として先にやれ、だが、賢明に選べよ。
アッチラ、おまえの襲撃は我らに多くの財宝をもたらした。褒めてやろう。おれは戦わなかったから、価値のあるものは要求しない。ただ、動物を一匹、この辺
りでは珍しいものだ。奇妙な生き物で、射ぬく眼をし、赤い毛皮を持っている。連れてこい。
今晩遅く、おれは我が氏族を創始しよう。赤毛のフン族だ。
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[アッチラは出て行く]
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ゲイリン
アッチラ
ゲイリン
アッチラ
ゲイリン
アッチラ
ゲイリン
アッチラ
ゲイリン |
アッチラ、何をしているんだい? ブレダを殺してはならぬ。やってはい
けない!
ルーアの天幕ではやらぬ。だが、あいつが出てきたなら、待ち構えているぞ。
だめだ。あんたの時はまだ来ていない。今朝、また幻視があったんだよ。運命はあんたを選んだ、でも、あんたが時至るのを我慢していたならだ。
おまえの幻視にはうんざりだ!
だめだ! させない!
[アッチラがゲイリンを突き飛ばす]
女・・・おい、ゲイリン。
ブレダと女のことで争ったなら、部族はあんたにそっぽを向くよ。たとえ勝ったとしても、あんたの負けだよ。ルーアの天幕に戻って、戦利品の分け前を要求す
るんだ。征服した村を要求するんだ。
おれは土地が必要な農夫か?
あの村を要求するんだ。あたしの幻視にあるんだよ。
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<弓の訓練>
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アッチラ
男
アッチラ
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次!
馬がそれた。
おまえと馬は一体だ。馬の失策はおまえの失策だ。
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<川のほとり>
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ゲイリン
ンカーラ
ゲイリン
ンカーラ
ゲイリン
ンカーラ
ゲイリン
ンカーラ
ゲイリン
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赤毛の獣。噂しているのは毒茸さ。ブレダは馬に乗るよりあんたに乗る方
が多い。
わたしにはえり好みできないわ。フン族の男と寝るよりはすぐにも死んだでしょうよ。
じゃあ、どうしてしないんだい?
妹と母がいるから。わたしが自殺したら、ブレダは2人を殺すわよ。
2人はアッチラのせいで生きている。あたしは、彼があんたを見る目つきも、あんたが彼を見る目つきも見ているよ。
わたしはブレダのものなの。
フン族の男は、女が自分の子を産むまでは女を自分のものにはできないよ。もしあんたがブレダの子を産んだら、アッチラはあんたを欲しがらないだろうよ。
で、どうやってそれを避けたらいいの?
この種だよ。1日1粒飲むんだ。ちびのブレダをあんたの子宮から遠避けてくれる。
アッチラかブレダか。ブレダかアッチラか。ゲイリンだったら誰を選ぶかわかっているよ。
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[Chap. 6 / 6]
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<ローマ:宮殿>
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皇帝
エイティアス
皇帝
エイティアス
皇帝
エイティアス
皇帝
エイティアス
皇帝
エイティアス
皇帝
エイティアス
オノリア
皇帝
オノリア
エイティアス
オノリア
エイティアス
オノリア
皇帝
オノリア
皇太后
エイティアス
皇太后
エイティアス
皇太后
エイティアス
皇太后
エイティアス
皇太后
エイティアス
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フン族がまた襲ってくるかすらわからない。
きっと襲ってきますよ。わたしは若い頃彼らの中で暮らしました。
どうしてそういうことになったんだ?
人質交換の取り決めがあったのです。彼らは勇敢で、強く、愚か者とはほど遠い。
女たちは裸で歩き回っているというのは本当か? でへぇ〜。
彼らはここケルンの上部で国境を越えました。20の村を略奪しました。
フェリックスに言ったように、奴らを罰するために部隊を派遣するべきなんだ。
そして、彼が言ったように、我々には送る部隊がありません。もし軍団を西部から引き上げたら、ゴート族がフン族の代わりに我々を略奪するでしょう。
フン族は我らの領土を侵している。それ故に我が神聖なる身を侮辱しているのだ。侮辱は晴らさねばならない。
そもそもゴート族を我々に向けてきたのはフン族なのです。
そして、帝国を2つに分裂させるのに手を貸した。そういう訳で、余が西を治め、テオドシウスが東を治めている。至る所そんなもんだ。
それでも、神聖なるおつむは要点を掴んではいないのではないかと思います。我々が何としても避けなくてはならないのは、フン族やゴート族と同時に戦うこと
です。
裏切り者。わたしはあなたの姉よ。助けてくれなくちゃ。
キスされたかったくせに。
フラビウス・エイティアス。
神聖なるオノリア様。
お行儀良くなさいね、エイティアス。そうしないと、ママが牢に戻すって言ってるわよ。この次は永遠にね。
ママのちょっとした冗談ですよ。続けましょうか、聖なるお方。
ヴァリ、わたしたちフォルムに行くの。ピリテラの娘たちもいるわよ。
後で終わらせよう。いずれにしても、まずママに話さなくては。あとでな、エイティアス。余は・・・命ずる。
グッドバイ、ママ!
息子はどこへ?
フォルムです。知的労働から休息が必要です。
でも進歩しているのでしょう?
いいえ。
それでも、あなたがどのような行動をとろうとも、あの子を通じてするのです。
あなたの承認を得た後にね。すぐにも対応しなくてはならぬことがあります。軍隊の訓練と、補給の備蓄のための投資です。
あなたが自分で責任を持ってよろしい。
あなたの印章があると助かるのですが。
どうして?
3年牢にいて評判を落としています。あなたの代理で動いているという証拠が必要です。
フン族が国境にいます、プラシディア様。我々は共に古い恨みを忘れなくてはなりません。
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<ローマ:牢獄の廊下>
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エイティアス
ペトロニアス
エイティアス
ペトロニアス
エイティアス
ペトロニアス
エイティアス
ペトロニアス
エイティアス
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ペトロニアス・・・。心配しないでいい。おまえを殺したければ、そうし
ているだろう。
申し訳ありません、愚かな行ないをお許し下さい。頭がどうかしていたのです。
今はおまえの頭はどうだ?
お命じのいかなる任務にもつきます、閣下。
結構だ。ある者を殺すよう命じる。
誰でしょうか?
皇帝ヴァレンティニアンだ。手配は全て整っている。誰かが何が起きたか気がつく前に、おまえは逃げ去るんだ。10タレント金貨を今、済んだ後に10タレン
トだ。一財産だぞ。
生涯追われる身になります。
いや、そんなことはない。皇帝の母上ご自身がおまえを守って下さる。彼女は権力を味わった。自分の息子にだろうとそれを渡したくはないのだ。皇太后の印章
だ。この目的のためにわたしに与えて下さった。おまえが持っていろ。もし何かしらの不運によって捕まったなら、おまえの守りとなるだろう。
明日の正午、コロナ庭園だ。南門を使え。皇帝が1人になるようにする。
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<ローマ:宮殿の庭>
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皇帝
エイティアス
皇帝
エイティアス
皇帝
エイティアス
皇帝
エイティアス
皇帝
エイティアス
皇帝
エイティアス
皇帝
エイティアス
皇帝
エイティアス
皇帝
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誰だ? ここで何をしている?
止まれ。
よくも皇帝に向かって武器を上げたな。
通りかかったのです。こいつは場違いに思えました。こいつをつけて良かった! ここで何をなさっているのです?
ママから、ピクニックのお誘いがあったんだ。
こいつの身元がわかるか見て下さい。
こいつ、母上の印章を持っている。
どうしてそんなことが。
母は、余をここに招いた・・・殺すために。
まさか。ご自身の母上ですよ?
わかっているべきだったんだ! 余に皇帝たれと教え込んでいたのは、警戒をさせないためだったんだ!あの女を生きたままゆでてやる。
いけません、陛下。証拠がありません!
母の印章がある。
いやいや、盗まれたとか誰かに貸したとか言うでしょう。釈明するでしょう。いいですか、わたしは彼女のやり口を知っています。
そうだ。おまえもあの女の犠牲者だったものな。この年月牢にいて。
わたしのことはいいのです。大事なのはローマです、そしてあなたがローマだ。賢明に行動するのです。
どうしたらいい?
今の所は、何も。計略が失敗したのを知ったら、おとなしくするでしょう。ふさわしい時が来たら、彼女の始末をつけましょう。
おまえにこの身を委ねる。
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[Chap. 7]
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<フン族の村>
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ゲイリン
アッチラ
ゲイリン
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アッチラ、ゲイリンと森を散歩しないかい。
疲れているんだ。
友達のゲイリンとちょっと散歩だよ。後悔しないよ。
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<森の中>
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アッチラ
ンカーラ
アッチラ
ンカーラ
アッチラ
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女・・・どこだ?
[ンカーラを見つける]
怖がらなくていい。
怖がっていないわ。
戻るんだ。いないのに兄が気がついたら、おまえが罰される。
構わないわ。
戻るんだ。
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<ローマ:宮殿>
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エイティアス
皇帝
エイティアス
皇帝
エイティアス
皇帝
エイティアス
皇帝
皇太后
エイティアス
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ヴァレンティニアン、ローマとは何です。
偉大なる都市、偉大なる国だ。
ローマは炎です・・・権力の、威厳の、美の、知識の黄金の炎です。1千年間、ローマは世界の光でした。外へ出ましょう。回りをご覧なさい。
コロッセアム、元老院、フォルム、劇場、100マイル遠くから水を運んできて我々が野生の獣のように暮らす代わりに文明的に生きられる水道橋。
もちろんだ。ローマは豊かだと言っているのだろう、そして我らはそんな風に続けて行くんだ。
その通りです。明日出発します。ラヴェンナに行き、第3軍団の指揮を執ります。そして、そこはフン族との境界まで2週間の進軍です。今夜元老院の承認が必
要です。
今夜? みんな寝ている。
あなたは皇帝です。起こすのです。
そうだな。それを楽しもう。
どこにいたの? 一日中見かけなかったわね・・・ヴァレンティニアン?
ありがとうございました。実に役に立ちましたよ。もう用は済みました。
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[Chap. 7]
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<ルーアの村>
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ルーア
アッチラ
ルーア
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アッチラ、まだローマに行きたいのか?
本気で訊いているのなら、そうです。
本気だとも、それでは、おそらくおまえは結局ローマに行く必要はないだろう。連絡を受けた。ローマがここへやって来るようだ、明日な。
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<翌日>
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エイティアス
ルーア
エイティアス
ルーア
エイティアス
ルーア
ブレダ
ルーア
エイティアス
アッチラ
エイティアス
ルーア
エイティアス
ルーア
エイティアス
ルーア
エイティアス
ルーア
エイティアス
ルーア
エイティアス
ルーア
エイティアス
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おまえたちが我々の領土に侵入していることは知っている。公式に抗議す
る。だが、それがわたしの真の目的ではない。我々の密偵が、ゴート族が我々に向かって移動する計画をしていることを知らせてきた。
どの部族だ?
ライン川の西の西ゴート族だ。
どうして軍団をそっちにやらないんだ?
あんたのためだ、ルーア。それと我々の友情のためだ。密偵が西ゴートはおまえたちにも向かってくると言っている。
やつらは我らに貢ぎ物を払っている、えーと・・・
10年間。
10年間だ。
そして、やつらはそのせいでおまえたちを憎んでいる。ちょうど我々を憎んでいる様にな、やつらを西の森から引き出したというんでな。やつらはまず自分たち
の
後背を確かなものにするためにおまえたちを襲うだろう。それから、われわれがここに座って境界の村のことでああだこうだと言っている間に我々を襲うだろ
う。
[遺体が運ばれてくる]
おまえの部族の者か? 西ゴート族が拷問した。わたしの密偵が見ていた。馬がフン族にとって神聖なものであることを知って、[遺体の覆いを取る]
熱したナイフで体に10頭の馬を刻んだ。貢納の1年ごとに1頭だ。死ぬまで3日かかった。
もっと血が出ていなくてはおかしい。この傷は死後のものだ。おそらく、西ゴートではあるまい。
ローマの将軍には、死体を切り刻むよりもやることがある。
[ルーアに向かって]
穏やかになったな。わたしの知っているフン族は、このような侮辱には復讐する。わたしは同盟を申し出に来たのだ。1人で西ゴート族に向けて進軍
する。
フラヴィウス! 獲物は山分けだな?
もちろんだ。
手を組もう。支度をしろ、すぐにだ!
あのずけずけと言うのは誰だ?
甥のアッチラだ。
アッチラ? 聞いたことがある。
ああ。実に野心的だ。なにしろ、この間は、ローマを侵略すると言っていたからな。
そうなのか?
わしは、あれと兄を子供の頃から育てた。互いに初めから嫌っていた。あそこに、最近の対立の元がいる。
奴隷の娘か?
ブレダは、アッチラに意趣返しをするために、あの娘を要求した。あの娘のことで戦わないなら、他の理由を見つけるだろう。
アッチラをわたしの指揮の下におかないか? いずれにしても、しばしは平和だろう。
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<ローマの軍団>
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アッチラ
エイティアス
アッチラ
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見事な行進だが、戦えるのか?
我々と一緒よりは、我々に対して戦いたいのはわかっている。
ローマの傲慢さはたっぷりと眼にしているが、ローマの力にはろくにお眼にかかっていない。
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<野営地>
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兵士
エイティアス
兵士
アッチラ
エイティアス
アッチラ
エイティアス
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歩哨を送りました、将軍。敵はライン川の西1リーグにいます。
第3当直の後に野営隊を起こせ、静かにな。ラッパは吹くな。丘を占領し、フン族が左陣で退路を断つ。
承知しました、将軍。
ルーアの天幕での死んだ男だが、あんたが死体を切り刻んだんだ。西ゴートは関係ない。
で、おまえは実に拙いやり方だったな。わたしがいなくなって、言い訳ができなくなるまで待つべきだった。そうすればおまえは考え込んでいるように見えただ
ろうに。「もし生きている間に拷問されたのなら、どうしてもっと血が出ていないんだ?」とな。ルーアは自分で答がわかって、もっと信じただろうよ。
策略と誤魔化しか・・・。それはローマ人のやり方だ、フン族のやり方ではない。
世界を支配するのはどちらのやり方だ?
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